4月5日(日曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。
地下水の汚染は大丈夫か?!地下水位が低下。建屋地下の高濃度滞留水よりも水位が下がると、汚染水が地下水に逆流するおそれ。
※地下水流入抑制対策による地下水位の低下に伴い、建屋滞留水水位を低下させる必要があり、建屋内に滞留水移送ポンプ並びに水位計の設置を進めている。(新たに削孔した穴より水位を測定した結果は2015年3月26日に公表済み)
このうち、1号機タービン建屋所内ボイラー室水位は以下の通り。
・1号機タービン建屋所内ボイラー室水位:O.P.4900mm(3月17日測定)
周囲の地下水位は継続監視しているが、最近、降雨量が少ないことから低下傾向が見られ、水位は以下の通り。
・1号機タービン建屋所内ボイラー室近傍のサブドレン水位N1:O.P.4917mm
(2015年4月4日測定)
その後、本日、午後0時時点における1号機タービン建屋所内ボイラー室近傍のサブドレン(N1)水位はO.P.4943mmであり、水位が昨日から上昇。
なお、本日は、福島第一原子力発電所構内において降雨が見られている。
今後も水位監視(所内ボイラー室水位およびサブドレン水位)を継続するとともに、準備が整いしだい、所内ボイラー室からの滞留水の移送を行う。
1号機タービン建屋所内ボイラー室の高濃度滞留水の水位がO.P.4900mm
建屋外のサブドレンN1の水位がO.P.4917mm
なんと水位差はわずか17mmしかない!
水は高いところから低い方へ流れるので、現状では地下水→建屋地下の高濃度滞留水という一方通行だと考えられるが、水位が逆転すると建屋内高濃度滞留水→地下水→海という最悪の状況になりかねない。また地下水位が必ずしも一様でないことも明らかなので、もう少し危機感をもって対応してほしいところだ。サブドレン水の測定結果が長く発表されていないことと合わせて、非常に心配な状況だ。
3月25日付の東京電力のリリース「陸側遮水壁閉合後の水位管理について」には、
サブドレンポンプ停止水位は,建屋水位との水位差0.3m以上を確保する
と明記されている。地下水位を人工的に下げるためのサブドレンからの汲み上げでも、水位差を30センチをとる運用が行われているのに、たった17ミリとは! すでに汚染水の一部が地下水に流れ込んでいても不思議でない状況だ。
※「1~4号機建屋周辺地下水の詳細分析結果」は平成26年10月1日のデータが最新のもので、半年以上更新されていない。
(O.P.は小名浜港での基準となる水位:小名浜港工事基準面)
高性能容器(HIC)上の高濃度たまり水の続報。新たに2基のHIC上にたまり水。しかし詳細は記載されず
4月4日、29基のHICの現場調査を実施した結果、2基のHICの上蓋に水溜まりを確認。また、他の27基のHICの上蓋には水溜まりがないことを確認。
引き続き、本事象の原因究明を含めた調査を実施していく。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(2015年3月26日午前10時14分~)
※滞留水移送は実施中
◆3号機
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(2015年4月1日午前10時3分~)
※滞留水移送は実施中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・RO濃縮水処理設備運転中
地下水バイパス ~海洋へ排水開始(通算57回目)
※地下水バイパス一時貯留タンクグループ2の当社および第三者機関による分析結果[採取日3月25日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認。(既出)
4月5日午前10時18分、海洋への排水を開始。同日午前10時25分に漏えい等の異常がないことを確認。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果 ~「悪天候により採取中止」でも発表は「前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない」
◆最新のパトロール
4月4日のパトロールにおいて、タンクからの漏えいの兆候を早期に発見する目的で70μm線量当量率の測定を行っているが、堰床部に溜まっている雨水の影響により測定を一部実施出来ない箇所を除き、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
4月3日の採取予定は「悪天候により採取中止」
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
※ 4月3日の採取予定は「悪天候により採取中止」
原発近傍の気象庁の観測ポイント「浪江」の4月3日の天気は以下のとおり。
4月3日の降水量合計は0.0mm。
気温は最高 25.0℃、最低 7.5℃ 日照時間 6.9
最大風速 7.5 南南西 最大瞬間風速 14.2 南南西
風が強いと陸上の測点でもサンプル採取できなくなるというのだろうか?
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
最新データは2014年10月1日です。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1号機放水路 ~極めて高濃度の汚染を示す1号機放水路立坑の測定は悪天候のため中止
新規事項なし
※ 4月3日の採取予定は「悪天候により採取中止」
関連データ(東京電力以外のサイト)
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成27年4月5日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: