天はいつまで味方をしてくれるか分からない。4号機でプール冷却が停止する重大な警報発令。原因は仮設タンクにつながるホースからのサイフォン効果による漏水とのことだが、いつまでも軽微な凡ミスに終わるとは思えない。そして、詳しい説明がないのが恐ろしい、3号機圧力容器内への注水量増加
11月8日(土曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発の現状を読んでいきます。
作業員3人が重軽傷を負ったJ2タンクエリアでの事故の続報は具体性に欠く内容。また原因究明のための警察による現場検証についての言及はない
ドクターヘリにて福島県立医科大学に搬送した重傷者については、救急医療室の医師により頸椎損傷の疑いありと診察を受けており、現在も福島県立医科大学において医師の診察、治療を継続。
消防防災ヘリにていわき市立総合磐城共立病院に向かった負傷者2名については、1名が救急医療室の医師により右足骨折の疑いありとの診察を受けており、現在もいわき市立総合磐城共立病院にて医師の診察、治療を継続。
また、もう1名の負傷者については、救急医療室の医師により両足下腿部擦過傷および両足打撲との診察を受けており、いわき市立総合磐城共立病院の医師による診察も終えて帰宅。
なお、鋼鉄製のガイドレールが落下した現場周辺を確認した結果、汚染水タンク、配管、堰等の設備に影響を与えるような異常はなかった。
診察後に自宅に帰ったという方の他は、怪我の重篤度や現在の症状などが分からない、具体性に乏しい内容といえる。また、重大な事故が発生したにも関わらず、警察による現場検証が行われたのかどうか、また原因究明や労災対応といった情報も記載されていない。
事故現場付近のタンクや配管、堰等の施設に影響を与えるような異常はないという文章には、大きな違和感を感じざるを得ない。
4号機で漏洩を検知。使用済燃料プールの冷却が自動停止する事態に
※11月7日午後10時59分頃、4号機の廃棄物処理建屋において漏えい検知器が動作し、使用済燃料プール代替冷却系の1次系ポンプが自動停止。
4号機については、11月5日に全ての使用済燃料の移動作業が終了しており、現在は新燃料180体のみが保管されていることから、プール水温の上昇はない。
(停止時の4号機使用済燃料プール水温度は約16℃)
その他のプラントパラメーターの異常、モニタリングポスト指示値の有意な変動は確認されなかった。
現場を確認したところ、当該漏えい検知器周辺に約1m×約2m×深さ約1cmの水たまりがあり、検知器近傍に敷設されていた仮設ホースから水が流れていることを確認。
周囲を調査したところ、屋外に設置されていた工事用水(淡水)を溜める仮設プラスチックタンク内の停止中の水中ポンプから、サイフォン効果により仮設ホースを通じて水が流れ込んでおり、当該ポンプを取り外したことにより水の流入は停止。
漏えいした水については、堰内に留まっており建屋外への流出はない。
使用済燃料プール代替冷却系の配管に漏えいは確認されなかった。
漏えいした水の表面線量は、1cm線量当量率(γ線)0.07mSv/h、70μm線量当量率(β線)0.02mSv/hであり、高線量のβ線は確認されず、バックグラウンドと同程度であり、漏えいした水の分析結果は、セシウム134:1,800Bq/L、セシウム137:5,600Bq/L、コバルト60 :41Bq/L。
分析結果から、工事用水(淡水)がフォールアウトによる床面汚染を取り込んだものと判断した。
当該漏えい検知器周辺の床面の拭き取りが完了し、11月8日午前2時45分に当該警報が解除された。
使用済燃料プール代替冷却系の一次系ポンプについては、午前6時に起動し、運転状態に異常はなく、午前6時25分現在の使用済燃料プール水温は15.9℃であり、自動停止時の16℃と比べ、変化はない。
事故原発の廃炉作業の過程で繰り返されてきた同一のパターン。
▼警報で冷却(などの重要な機能)が停止する
▼プラントパラメータなどに有意な変動は見られないとの報告
▼原因は、考えられないような単純なミスによるものと判明する(今回は使用後に片づけを行っていなかったポンプ・ホースによるサイフォン効果とのこと)
▼放射線量はバックグラウンドと大差ないので、汚染水ではなく工事用の真水に、かつての爆発時の放射性降下物が融け込んだものだろうと推定(しかし、どんな形であれ、汚染された水であることに違いはない)
▼原始的な対応で警報解除
▼冷却が停止していた間の温度上昇はほとんど見られなかった(今回は逆にわずかながら低下)
そして根本的な対策は示されない。後日示されるのは、マニュアルの追加と安全確認の強化を進めるというお決まりのパターン。
そもそもサイフォン効果という話なら、午後10時59分頃に警報が発生した理由がよく分からない。そんな時間に4号機廃棄物処理建屋の屋外に設置された仮設タンクのポンプをいったん稼働させた後に停止させ、サイフォン効果を発生させたというのか? あるいは、ずっと流れ続けていた水が、夜遅い時間になってようやく警報を作動させたということなのか。
疑問が、今回も残る。
廃炉まで40年以上。今後もずっと小さな事故だけが発生するとは限らない。
1号機 ~汚染水移送についての記述は消しミスか
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
加えて、昨日と同様の滞留水移送中断の記載
・1号機タービン建屋地下→1号機廃棄物処理建屋へ高濃度滞留水の移送を実施(平成26年11月6日午前9時50分~午後4時8分)
※滞留水移送については不明
2号機
新規事項なし
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年10月27日午前10時43分~)
※滞留水移送は稼働中
3号機 ~詳しい説明がないのが恐ろしい、圧力容器内への注水量増加
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中。
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年11月5日午後4時14分~)
※滞留水移送は稼働中
加えて、炉心への注水量の増加について発表
※11月8日午前11時29分、原子炉への注水量の変動が確認されたため、給水系からの注水量を約2.2m3/hから約2.5m3/hに調整(炉心スプレイ系からの注水量は約1.9m3/hで継続中)。
原因・理由等の説明はない。お風呂に水を溜めるようにじゃばじゃば水を入れる「給水系」からの注水量を1時間あたり約2.2トンから約2.5に増加。シャワーのように炉心の上から水を掛ける炉心スプレイ系の注水量は約1.9トン時で継続ということなので、冷却のために原子炉に入れる水の総量が増加したことになる。
原子炉に入れる水が増えるということは、高濃度滞留水が増加することを意味しているので、できれば増やしたくないはずだが、それでも増やしたということは、原子炉内でどんな事態が起こっているのだろうか。
4号機~6号機
新規事項なし
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※11月7日午後10時59分頃から11月8日午前6時まで、漏えい警報発生によって冷却が停止していたと上では発表している。
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
地下水バイパス ~通算32回目となる海洋への排出を終了。排出量は1,549トン
11月7日午前10時3分、海洋への排水を開始。同日午前10時8分に漏えい等の異常がないことを確認。(既出)
その後、16時13分に排水を停止。排水停止状態において異常のないことを確認。排水量は1,549m3。
地下水バイパス揚水井の分析結果 ~問題のNo.11に謎の「※」表記
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