ヒューマンエラーはゼロにはならない。共用プールで4号機から移送した燃料体カバー内の水の採取中に、異物をプールに落下
11月6日(木曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発の現状を読んでいきます。
連日のように発生する車両からの油漏れ。今度は1号機北側道路でエンジンオイルが漏洩
※11月6日午前0時10分頃、発電所構内1号機北側道路において、南北に通っている道路上に車両からのエンジンオイルが滴下していることを協力企業作業員が発見。
エンジンオイルの漏えいは車両下部にオイルパンを設置して養生。また、同日午前0時40分に一般回線で双葉消防本部へ連絡。漏えい範囲については、コンクリート路面上に約100mの範囲であり、吸着材による拭き取りを実施。同日午前2時40分にエンジンオイルの漏えいが止まったことを確認。
極めて高濃度の汚染を示している1号機放水路立坑の測定結果。11月4日採取分
※1号機放水路上流側立坑において、セシウム137の濃度が上昇した件について、1号機放水路立坑水の分析を実施。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
<1号機放水路立坑水(上流側)11月4日採取分>
セシウム134:1.1×10^4 Bq/L
セシウム137:3.5×10^4 Bq/L
全ベータ :4.5×10^4 Bq/L
トリチウム :3.6×10^2 Bq/L
<1号機放水路立坑水(下流側)11月4日採取分>
セシウム134:2.0×10^3 Bq/L
セシウム137:6.2×10^3 Bq/L
全ベータ :8.8×10^3 Bq/L
トリチウム :7.6×10^2 Bq/L
通常の表記に書きかえると、
<1号機放水路立坑水(上流側)11月4日採取分>
セシウム134:11,000 Bq/L
セシウム137:35,000 Bq/L
全ベータ:45,000 Bq/L
トリチウム:360Bq/L
<1号機放水路立坑水(下流側)11月4日採取分>
セシウム134:2,000 Bq/L
セシウム137:6,200 Bq/L
全ベータ:8,800 Bq/L
トリチウム:760 Bq/L
前回発表の数値は以下のとおり
<1号機放水路立坑水(上流側)10月30日採取分>
セシウム134:24,000 Bq/L
セシウム137:73,000 Bq/L
全ベータ:110,000 Bq/L
トリチウム:170 Bq/L
<1号機放水路立坑水(下流側)10月30日採取分>
セシウム134:1,600 Bq/L
セシウム137:4,700 Bq/L
全ベータ:7,300 Bq/L
トリチウム:700 Bq/L
※上流側ではトリチウム以外は半減以下の数値になっている。
共用プールでスキマサージタンクに異物が落下
※11月6日午前11時30分頃、共用プール建屋使用済燃料貯蔵プールにおいて、4号機燃料のチャンネルボックス内の水を採取する作業を行っていたところ、
水採取用治具のコックカバー(約10cm×約2cm×厚さ約2mmのゴム製)が同プール内に落下し、
同プール内のスキマサージタンクに流入。こ
のため、同日午後0時20分に共用プール冷却浄化系の各パラメータを確認し、異常がないことを確認。
チャンネルカバーとは、沸騰水型原子炉の燃料集合体の周辺を覆う金属製のカバー。下記の電気事業連合会のページに図説がある。
コックカバーの形状は不明。サイズと、取れてプールに落ちたという表現からコックのハンドル部分のカバーかもしれない。
スキマサージタンクは、燃料プールから溢れ出した水を一時的に蓄えるタンク。原子炉建屋ではこのタンクに溢れた水を熱交換器で冷却、不純物を取り除いた上でプール冷却水として循環させている。このタンクには浮遊するゴミなどを除去する機能もあるという。かなり古い資料で日付が確定されないが、平成16年(2004年)2月頃と思われる東京電力のページ(断片)に、スキマサージタンク内で回収した異物についての記載があった。
※原子力規制委員会の資料によると、共用プールでも、構造や循環冷却については同じような仕組みで運用されていると考えられる。ただし、異物を取り除くことが可能かどうかは不明。
200トン自走車から作動油漏れ
※11月6日午後2時33分頃、発電所構内給油所東側において、200t自走車から作動油が漏えいしていると、協力企業作業員から緊急時対策本部に連絡。
漏えいした作動油は、給油所東側付近のアスファルト上に約2m×約2mの範囲で溜まっており、吸着材により回収を実施。当該車両のエンジンを停止したところ、漏えいが停止したことを確認。
また、同日午後2時45分に一般回線にて双葉消防本部へ連絡。
200トン自走車がどのようなものなのかは不明。2007年の東電のトラブル報告書類には、「空の廃棄物移送容器の自走車積込み作業時」という記載がある。重量物を搭載して移動することができる運搬機械ということだと考えられる。
200トンというのが自重であれ、積載量であれ、相当大きな機械だろう。
作動油とは、クローラー(キャタピラ)走行の駆動輪を動かす油圧モーターやパワーショベルの油圧機構などに使われるオイル。エンジン作動中は常に一定の圧力が掛けられているため、勢いをもって噴き出す場合もある。
4号機プールからの使用済み燃料取出終了について、プレスリリースと写真を公開
水採取用の治具のコックカバーのゴム部品が落下した際にも、同様の視界での作業中だったのかもしれない。
1号機 ~高濃度滞留水の移送を再開(移送先は1号機の廃棄物処理建屋)
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
加えて、
・1号機タービン建屋地下→1号機廃棄物処理建屋へ高濃度滞留水を移送中(平成26年11月6日午前9時50分~)
※滞留水移送を再開
2号機
新規事項なし
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年10月27日午前10時43分~)
※滞留水移送は稼働中
3号機 ~タービン建屋滞留水の高温焼却炉建屋への移送を再開
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中。
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年11月5日午後4時14分~)
※滞留水移送を再開
4号機~6号機
新規事項なし
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
地下水バイパス ~通算32回目となる海洋への放出に向けての分析結果を発表
※地下水バイパス一時貯留タンクグループ3の当社および第三者機関による分析結果[採取日10月29日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認。
◆10月4日採取分の詳細分析結果(全アルファ、ストロンチウム含む)も発表された
◆9月分の分析結果についての加重平均分析結果も公開された
※東電の説明:「※排水する前に採取した水を、当該月の全排水量に占める各回の排水量の割合で混合させ、分析を行うものです。」
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
11月5日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側
新規事項なし
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年11月6日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: