1号機放水路立坑の汚染水濃度は高いレベルで推移。宮沢経産大臣が「ご視察」
11月1日(土曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
極めて高い濃度の汚染を示している1号機放水路立坑の続報
10月15日から上昇傾向を見せ、22日には非常に高い濃度を記録した1号機放水路立坑について、分析結果が発表された。
※1号機放水路上流側立坑において、セシウム137の濃度が上昇した件について、1号機放水路立坑水の分析を実施。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
<1号機放水路立坑水(上流側)10月30日採取分>
セシウム134:2.4×10^4 Bq/L
セシウム137:7.3×10^4 Bq/L
全ベータ:1.1×10^5 Bq/L
トリチウム:1.7×10^2 Bq/L
<1号機放水路立坑水(下流側)10月30日採取分>
セシウム134:1.6×10^3 Bq/L
セシウム137:4.7×10^3 Bq/L
全ベータ:7.3×10^3 Bq/L
トリチウム:7.0×10^2 Bq/L
通常の表記に書きかえると、
<1号機放水路立坑水(上流側)10月30日採取分>
セシウム134:24,000 Bq/L
セシウム137:73,000 Bq/L
全ベータ:110,000 Bq/L
トリチウム:170 Bq/L
<1号機放水路立坑水(下流側)10月30日採取分>
セシウム134:1,600 Bq/L
セシウム137:4,700 Bq/L
全ベータ:7,300 Bq/L
トリチウム:700 Bq/L
前回発表の数値は以下のとおり
<1号機放水路立坑水(上流側)10月27日採取分>
セシウム134 31,000Bq/L
セシウム137 95,000Bq/L
全ベータ 120,000Bq/L
トリチウム 320Bq/L
<1号機放水路立坑水(下流側)10月27日採取分>
セシウム134 1,700Bq/L
セシウム137 5,300Bq/L
全ベータ 7,600Bq/L
トリチウム 810Bq/L
増設多核種除去設備A系で、汚染水を使ったホット試験を運転再開
○増設多核種除去設備 処理運転状態:(A系)10月31日午後5時26分
「宮沢洋一経済産業大臣の福島第一原子力発電所ご視察」の模様が写真・動画集のページで公開される
視察内容についてのリリースは発表されておらず、写真のみの公開だが「HITACHI」のロゴが記された吸着塔のようなものが写っているので、おそらく高性能多核種除去設備を現場視察したものと見受けられる。
今回もまた「ご視察」表記。監督官庁の大臣でありながら東京電力の株式を保有しているとされる宮沢大臣の訪問について「ご視察」というのは、単なる丁寧表現ということではすまない誤解をまねきかねないのでは。たしかにこれまでも、「小渕優子経済産業大臣の福島第一原子力発電所ご視察」「キャロライン・ケネディ駐日米国大使の福島第一原子力発電所ご視察」と「ご視察」表記は行われてきたが、社長視察は単に「視察」である一方、2012年には「原子力規制庁委員予定者の皆さまの福島第一原子力発電所ご視察の状況」という記載もあった。日本語としても不自然な「ご視察」は「視察」に統一されてはいかがだろうか。
また、興味深いのは2013年9月の首相視察の際には「安倍総理大臣の福島第一原子力発電所視察」というタイトルだったほか、細野大臣、茂木経産大臣、安倍総理大臣については「ご」なしの記載が行われている点だ。重箱の隅的な話だが、事業者の対外的な姿勢があるいは垣間見られる可能性もあるので記しておく。
1号機~6号機
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止
◆2号機
1号機と同じ4項目
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年10月27日午前10時43分~)
※滞留水移送は稼働中
◆3号機
1号機と同じ4項目。ただし「。」や「・」がある。
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中。
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中・
※滞留水移送は停止
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
地下水バイパス ~通算31回目となる海洋への放出が間近。あわせて、藻のようなものが繁茂したNo.11を含む揚水井の分析結果も発表される
※地下水バイパス一時貯留タンクグループ1の当社および第三者機関による分析結果[採取日10月24日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認。
揚水井の分析結果も発表された。藻のようなものが繁茂して10月15日にポンプが停止されたNo.11の検査結果も含まれる。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
10月31日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井 ~「2号機建屋周辺地下水分析結果」として発表(10月30日採取分)
新規事項なし。「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていないながら、
「2号機建屋周辺地下水分析結果」として発表
<サブドレンNo.18>
(10月30日採取)
セシウム134:990 Bq/L
セシウム137:3,400 Bq/L
全ベータ:4,400
トリチウム:1,400
<サブドレンNo.19>
(10月30日採取)
セシウム134:85 Bq/L
セシウム137:330 Bq/L
全ベータ:440
トリチウム:410
前日のデータは、以下のとおりだった。
<サブドレンNo.18>
(10月29日採取)
セシウム134:320 Bq/L
セシウム137:1,100 Bq/L
全ベータ:4,400
トリチウム:1,400
<サブドレンNo.19>
(10月29日採取)
セシウム134:28 Bq/L
セシウム137:95 Bq/L
全ベータ:380
トリチウム:440
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年11月1日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: