タービン建屋東側の水質監視は、異常が発生した場合に海洋への影響が懸念されるものだが、「緩やかではあるが低下傾向を示している」ことから監視を通常の体制に
10月23(木曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
17日に発覚したモニタリングポスト欠測の続報
※10月17日午前11時30分頃、西門可搬型モニタリングポストによる測定が停止していることを当社社員が確認。このため、午前11時30分および午後0時の測定が欠測。その後、午後0時30分より代替サーベイによる測定を実施し、欠測前の値と比較して有意な変化はない。(既出)
原因を調査したところ、データーケーブルのジョイント部が外れている箇所を特定。当該箇所の再接続と、外れ防止対策を施した上で、10月21日午後2時のデータから可搬型モニタリングポストによる測定を再開し、代替サーベイの測定値と比較し異常がなかったことから、同日午後6時のデータから可搬型モニタリングポストによる測定値に戻した。
3号機燃料プール水の測定結果(10月22日採取分)
※8月29日午後0時45分頃、3号機使用済燃料プール内瓦礫撤去作業において、燃料交換機の操作卓が当該プール東側中央付近に落下したことを受け、当該プール水のサンプリングを継続実施中。放射能分析結果が前回と比較して有意な変動がないことから、燃料破損等の兆候は確認されていない。(既出)
使用済燃料プール水の放射能分析の結果(採取日:10月22日)
・セシウム134:2.2×10^2Bq/cm3
・セシウム137:7.0×10^2Bq/cm3
・コバルト60:9.9×10^-1Bq/cm3
リットル当たりの線量に換算
・セシウム134:220,000 Bq/L
・セシウム137:700,000 Bq/L
・コバルト 60:990Bq/L
多核種除去設備(ALPS)B系で9月26日に発覚した不具合で装置の検査結果から、原因を推定
※9月26日午後3時22分に処理運転を停止した多核種除去設備B系について、炭酸塩スラリーの流出が確認されたクロスフローフィルタ(8B)の点検を行った結果、バブリング試験において2箇所からエアーの流出を確認。エアーが流出した当該部について分解調査をしたところ、六角ガスケットの一部に変形およびき裂を確認したことから、当該箇所より炭酸塩スラリーが流出したものと推定。(既出)
調査の結果、六角ガスケットの一部に変形およびき裂が発生し炭酸塩スラリーが流出した原因は、バックパルスポット*作動時の圧力脈動と推定。設計上、許容される圧力の範囲内であったものの、バックパルスポット作動時に発生した微小な変位が蓄積され、炭酸塩スラリーを流出させる程の変形およびき裂に至ったと推定。
なお、六角ガスケットを調査した結果、弾性が確認されたため、放射線劣化等に起因する脆化の兆候は確認されなかった。再発防止対策として、バックパルスポット作動時の圧力を運転に影響がない範囲で低減することとする。
また、ブースターポンプ1出口でのカルシウム濃度測定を日々実施し、監視しながら処理を継続。なお、炭酸塩スラリーの流出が確認されたクロスフローフィルタ(8B)については、予備品と交換を実施したことから、10月23日より処理運転を再開する予定。
*逆洗のための加圧装置
空気でピストンを動作させて濾過水を逆流させ、フィルタを洗浄するバックパルスポットが動く際に発生する微細な変動が蓄積されて、ガスケットの破壊に至った。しかし設計上は許容される圧力の範囲内だった。
設計が甘かったのか、それとも物のつくりに問題があったのか判断されていない。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年10月11日午前10時46分~)
※滞留水移送は稼働中
◆3号機
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年10月11日午前10時5分~)
※滞留水移送は稼働中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
地下水バイパス ~海洋排出を開始。通算29回目
※1~4号機原子炉建屋等への地下水流入抑制対策として設置した地下水バイパス設備について、地下水バイパス一時貯留タンクグループ3の当社および第三者機関による分析結果[採取日10月14日]は同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認。(既出)
10月23日午前10時10分、海洋への排水を開始。同日午前10時14分に漏えい等の異常がないことを確認。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
10月22日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側 ~地下水観測孔No.1-6、近傍のNo.1-14、No.1-16の監視を通常の体制に
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
なお、地下水観測孔No.1-6、近傍のNo.1-14、No.1-16については、10月16日の分析結果において、セシウム134および全ベータに上昇が確認されたため、それ以降監視強化を続けていたが、緩やかではあるが低下傾向を示していることから、10月23日より通常の監視状態とする。
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年10月23日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: