未来はここに「癒しの健康農業」ロシナンテス東北事業部

iRyota25

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のーんびりお茶っこしながら草むしり

花が咲き、やわらかな風が土の匂いを運んでくる。ときどき冷え込む日もあるけれど、ぽかぽか陽気の日が増えてくる。東北の春の何がうれしいって、農作業が再開できること。そんな春の一日、ロシナンテス東北事業部が続けている「健康農業」に参加させてもらった。

いきなり休憩タイムの写真ですが……。今日のメイン作業は畑の草取り。といっても、耕されている普通の畑ではなく、もう何年間放置されていたのか分からないという農地を畑としてよみがえらせるための草取り。

土は固く雑草の根は深く、それはそれはけっこうハードな草取りだったのだけど、参加した地元のおばあちゃんたちは元気はつらつ。お茶っこしながら四方山話に花が咲く。

「さっき道歩いてる人から、なんで手作業でやってんのって言われたっけ」

「ああ、あの人、よほど興味があったみたいで、何度も自転車で回って来てたよ」

「まあ、ふつうはトラクターでやる仕事だね。でも昔はみんな手で取ったもんだよぉ」

農作業の話ばかりでなくて、ちょうど季節はソメイヨシノが散って八重桜が咲いたころだったのだけれど、「今年は桜茶作ったの?」とか「あれは満開になる前に取って塩漬けしなきゃだめだよ」とか「桜餅が食べたくなる季節だねえ。今度作ってこよっか」とか、花より団子なのだかなんだか分からないような話でキャハハと笑い合ったり。

春の花が咲く地面の上で、笑ってお喋りする時間は格別なのです。

これは草取りどころではない。開墾だ。

休憩タイムが終わるとおばあちゃんたちの動きが変わる。ビニールの敷物を敷いて地面に腰を下ろし、固い固い土の中から雑草を根っこごと引っこ抜く。お喋りしながらも手の動きは止まらない。たちまち抜き取られた雑草の小さな山ができる。するおおばあちゃんたちは、ビニールの敷物を少し移動させて草取りを続ける。そこにも雑草の小山ができる。その繰り返し。

荒地に点在する枯草の小山は、おばあちゃんたちの「グッジョブ!」の名残。少人数だったけれど思いのほかはかどった。

その日参加した彼女たちは、亘理町の荒浜地区という海近くの場所に暮らしていた人たち。多くの人は津波で家を流されて現在は仮設住まいだ。津波被害を受けた自宅を修理して、いまも荒浜に暮らしている人もいる。ロシナンテスのフルサイズ・ワンボックスカーGC号は、そんな皆さんの元をピックアップして回る。

農業の経験がある人も数人いるが、ロシナンテスの健康農業に参加して始めたという人もいる。それでも手際のよさは玄人はだしだ(に見える)。

さすがのおばあちゃんたちだが、「これだけは任せるよ」と言うのが写真のスギナ。

「こっちの人はツクシを食べないんですよ。春の味覚なのに勿体ないねえ」

ロシナンテス東北事業部長で北九州市出身の大嶋一馬さんが残念そうに言う。

「この草はとにかく厄介なんだ」

農業経験豊富なおばあちゃんが答えて言う。

ツクシはスギナの胞子穂。ツクシが消えるとツクシとは似ても似つかぬ緑色のスギナがどっと生えてくる。スギナの根は深く、さらにプツプツ切れやすい。生命力が旺盛だから少しでも根が残っていると、そこから繁茂して畑を埋め尽くすほどになる。だから厄介なのだ。あんまり憎ったらしいもんだから食べるなんて思いもよらないのかも。

スギナを掘り起こすのは男衆の仕事だ。しかもこの休耕地、よほど長年放置されていたのか、スギナばかりか笹の地下茎もはびこっている。草刈り用の小さな鎌や熊手なんか通用しない。男性たちは剣スコップと鍬でスギナとスギナの根が絡み付いた笹の根っこを掘り返していく。

今日の作業は草取りだと聞いて甘く見ていた。これは草取りなんてレベルの仕事じゃない。開墾だ。ほぼ未開地の開墾。それに、おばあちゃんたちのための健康農業というだけではない。これは、スコップ仕事に汗を流す自分自身のための健康農業でもある。間違いない。

農と健康。納得の関係性

お日様の下で体を動かして――。農作業はイメージからして健康的だ。でも何となくのイメージだけではない。自分も体を動かすことで染みこんでくるものがあった。

まず、みんなで何かを一緒にするということが楽しい。朝いちばんでラジオ体操する時から、みんな不思議と笑顔になっている。

迎えに行った時には背中が曲がっていた人が、畑に行くとシャンとして仕事するんだという話は何度も聞いたが、今回もやっぱりそうだった。曲がった背中が伸びることまではないまでも、動きが全然違う。ビニールの敷物に座ったまま、お尻を移動させながら草取りを続ける姿には感動すら覚えた。

作業を終えて「お疲れさん、今日ははかどったねえ」と話しながら見合わせる顔がすがすがしくてうれしくなる。いわば小さな達成感を毎回得ることができる。(自分の場合は大した働きにならなかったが)

そして作業後は2代目ロッシ―ハウス(ロシナンテス東北事業部が拠点としている古民家)に戻って、みんなで昼ごはんを食べる。仮設住宅では、ひとりで食事をとることもあるというおばあちゃんたち。ご飯をみんなで食べるということは、それだけで元気に直結する。

最初にイメージなんかじゃないなんて言ったが、お日様の下で体を動かして、土をさわるという、農作業そのものが持つ力は大きい。言葉では説明できないくらいデカい。

ロシナンテスのスタッフ、田地野茜さんが自己紹介でこんな風に話しているのを聞いたことがある。「田んぼに地面に野原という苗字だから、先祖はきっと農業をしていたに違いないと思います」ってね。

なるほど。何世代か遡ればほとんどの人が農の民だったはず。きっと太古から農耕民族として受け継がれてきたDNAが喜ぶのだろう。空の下で土をさわっているだけで、体の中にパワーが湧いてくる。うん、そういうことなのだろう。

「病院で診察して薬を出すいわゆる診療だけが医療ではない。その人の健康のためになることが医療だと考えれば、スーダンで水道を整備したり、教育を支援したり、サッカーなどのスポーツを通じた活動をすることも医療の一環。東北での健康農業もまったく同じです」

ロシナンテスの理事長で、スーダンで医療を中心とした支援活動を行っている川原尚行さんから、そして東北事業部の大嶋さんからそんな言葉をこれまで何度も聞いてきた。

作業道具を片付けて、おばあちゃんたちが乗るワンボックスの空いた席に乗り込みながら、しかとその言葉を思い出していた。

まったくだ! おばあちゃんたちと一緒に開墾で汗を流した自分のハートのあたりに、健康農業のスピリットが根を生やし鼓動し始めているのを感じたゼ!

健康農業「亘理いちご畑」のプロモーションビデオ

ロシナンテス東北事業部スタッフの綾田早笑さん(あ、また田んぼだ。しかもお名前には「笑う」の文字まで! これぞ健康農業!)が、健康農業がどんなものなのか、動画をシェアしていた。健康農業の毎日がよく分かるのでぜひ!

「健康農業 亘理いちご畑」ってこんなところ!

YouTube

ロシナンテス東北事業部さん 2014/05/23 に公開

宮城県亘理町で被災された仮設住宅等にお住まいのおじいちゃん、おばあちゃん達の健康­増進と心のケアのため、みんなで農業をしています。
青空の下、みんなで集まって、みんなで農作業をして、みんなでごはんを食べる!いつも­笑顔が咲いている「亘理いちご畑」です♪

「健康農業亘理いちご畑」が日本の高齢化社会を笑顔あふれる社会に変えるかも!?

まだまだあります。健康農業のいいところ

農業経験のある方がたにとって、健康農業は自分の知識や経験を人に伝える場になる。教えて喜ばれたり、教えてもらって喜んだり。そのやり取りがまたまた元気の源に!

自分たちで作った野菜をみんなで食卓を囲んで食べれるのが嬉しい。野菜作りの話、料理の話に花が咲く。若きロッシー(ロシナンテススタッフ)たちに料理の知恵を伝授して行けるのも楽しいし、時々収穫物を持って帰れるのもいい。

ロシナンテスでは仮設住宅などへの送迎を行っている。この先、仮設住宅から集合住宅などへの移住が進んだ後も、それぞれのお宅まで送迎してくれるという。ステキなことだと思う。だって、仮設で知り合い仲良くなった人たちと、引っ越しした後にも健康農業に来れば会えるのだから。

これ、実は東北の今後に関して、とっても重要なポイント。平らな言葉でいえば「継続的支援」ってこと。ロシナンテスのロッシーたちは、それを本当にやり続けるために毎日汗をかき、かつ頭をひねっている。すごいことだ。

ロッシーたちが目指す健康農業には、きっと未来へつながる答えがある。間違いない。

写真と文●井上良太

追記:
ロシナンテスって、小説「ドンキホーテ」に出てくる痩せ馬のロシナンテから名付けられたものだとか。「私たち一人一人は痩せ馬ロシナンテのように無力かもしれない、しかし、ロシナンテが集まり、ロシナンテスになれば、きっと何かできるはずだ!」それがロシナンテスの名の由来。東北在住のロシナンテたちは、これまでご紹介してきた方がたのみならず、みなさんステキなロッシーっぷりの持ち主ばかり。彼ら彼女たちのご紹介も引き続き随時やらせていただきたいと思います。乞うご期待!

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