チリ北部沿岸の巨大地震により発生した津波への対応が冒頭に記された、4月3日(木曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
午前3時3分、発電所構内一斉放送にて高台待避を指示
午前3時、気象庁が津波注意報を発表したのを受けて、高台避難をしたことを報告。発電所の沿岸部での作業を行わないことはあらかじめ確認していたことも記載。
※4月2日午前8時46分頃、南米西部(南緯19.8度、西経70.8度)でマグニチュード8.2(推定)の地震が発生。
これに伴い、4月3日午前3時に気象庁より、福島県沿岸部に『津波注意報』が発令。
発電所海側沿岸部の作業については実施していないことを事前に確認しているが、念のため同日午前3時3分に発電所構内一斉放送にて、高台待避を指示。
なお、現時点でプラントパラメータ、およびモニタリングポスト指示値に有意な変動は確認されていない。
1号機
レギュラー項目になっている以下の4つに加え、タービン建屋地下の高濃度汚染水の移送の停止を新規事項として記載。
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・1号機タービン建屋地下→1号機廃棄物処理建屋へ高濃度滞留水を移送実施(平成26年4月2日午前9時50分~同日午後5時)
※ 2号機、3号機ではこの日も、タービン建屋地下からの高濃度汚染水移送が継続されていることから、津波対策ということではない、予定された停止とも考えられます。
2号機~6号機
新規事項なし
◆2号機
1号機と同様に、4項目プラスタービン建屋地下の滞留水の移送について記載
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月27日午前9時49分~)
◆3号機
1号機と同様に、4項目プラスタービン建屋地下の滞留水の移送について記載
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月12日午後3時48分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
※ 4号機燃料プールからの燃料取出しで発生する輸送容器内の水の処理は、昨日の実子でいったん終了した模様です。(前回の実施は3月12日)
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
<最新のパトロール結果>
4月2日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(トレンドによる監視または警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
地下水観測孔から採取した水の全ベータの値が前回に比べて10倍以上高かい過去最高値を記録(この情報は報道配布資料による)したことを新規事項として報告。
<最新のサンプリング実績>
4月2日に採取した地下水観測孔No.3-5の全ベータ放射能濃度が300 Bq/Lで、前回値(3月26日採取:22 Bq/L)と比較して10倍以上に上昇していることを確認。
当該エリア付近の海水(3,4号機取水口間)の全ベータ放射能濃度については180 Bq/L(3月31日採取)であることから海水の影響によるものかを踏まえ、再サンプリングを実施予定。
その他の測定結果は、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
▼陸上の地下水観測孔の全ベータ放射線濃度が300 Bq/L
→この観測孔の分析結果としては過去最高
▼近くの海水の全ベータ放射線濃度が180 Bq/L
観測孔の分析結果よりも低い「海水の影響によるものかを踏まえ」という説明を理解するのは困難です。さまざまな可能性を排除することなく、事態の分析を進めていただくことを期待します。
1~4号機サブドレン観測井の状況
新規記載なし
※1~4号機建屋に隣接している井戸(サブドレンピット)の浄化試験をした結果、ピット内の溜まり水から放射性物質が検出されており、その流入経路としてフォールアウトの可能性があることから、新たに1~4号機建屋周辺に観測井を設置し、フォールアウトの影響について確認することとしている。
★ サブドレンは、原発事故以前から、地下水による建屋の浮き上がりを防ぐために設置されていた地下水汲み上げ施設。
本来、天然状態の地下水が汲み出されるはずのサブドレン水に放射性物質が混入していたとすると、そのルートが問題になる。
ひとつの可能性として、フォールアウトしたものが混入することで線量が高くなったとの考え方がある。フォールアウトとは上から降ってきたもの(死の灰もフォールアウトと呼ばれる)の意味。きれいな水に周りにあった汚染物質が混入したという考え方だ。
もうひとつの考え方として、地下水の水位が下がって滞留水が地下水に漏れ出したというものがある。サブドレンからの水を汲み上げすぎて、地下水位が滞留水の水位より下がることで、これまで「地下水→建屋」だった水の流れが逆になり、建屋内の高濃度な滞留水が地下水に流れ込んだという可能性だ。この場合、地下水が大規模に汚染されている心配もある。ただし、東京電力は滞留水の流れ出しを防ぐため、滞留水の水位より地下水位が高くなるようにしていると説明いる。
東京電力はフォールアウト説の確認を進めているものと思われる。
水位が下がって建屋内の水が地下水に混入したとすると、地下水バイパスの措置が困難になる可能性がある。
地下貯水槽の状況
サンプリング結果について記載
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年4月3日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: