あっ、こんなところにいたんだ!
少し肌寒い風と、初夏の日差しが同居した6月初旬の石巻。
街なかを散歩していて、ついに萬画神社の御神体に出会うことができた。
津波で流されてしまった、という噂も流れた。
無事の姿を発見したというブログ記事もちらほらあった。
でも、肝心の「場所」が記載されていなかった。
街なかのアイトピア通りを日和山の方へ向かった途中。
クルマで何度も通った道だったのだが、うかつにも気づかずにいた。
それくらい、小ぢんまりした神社なんだ。
御神体の後ろには、石ノ森章太郎先生の萬画宣言が説明されている。
1.萬画は万画(よろずが)です。あらゆる事象を表現できるからです。
2.萬画は万人の施行に合う(愛されるし、親しみやすい)メディアです。
3.萬画は一から万(無限大の意も含む)の駒による表現です。
4.従って萬画は無限大の可能性を持つメディアである、とも言えるでしょう。
5.萬画を英語風に言えば、Million Art。Millionは百万ですが、日本語の万と同じく「たくさん」の意味があるからです。頭文字を継げばM・Aです。
6.M・Aは即ち“ MA ”NGAの意。
石ノ森先生の「萬画宣言」より
萬画はMillion Artで、要するに日本語の万と同じく「たくさん」の意味があって、頭文字を継げばM・A。さらに、それ即ち“ MA ”NGA。
こじつけもここまでくれば信念だ。強い思いが迫ってくる。
漫画による町おこしは、当時からシャッター商店街だった石巻の中心市街地復活の切り札だった。何が何でも成功させたいという強い思いが「萬画」という言葉に込められている。
石ノ森章太郎の命は、残念ながら石ノ森萬画館のオープンや、町おこし活動が本格化するまで、この地上にあることは叶わなかったが、
御神体となった石像を見ていると、なにか伝わってくるものがある。
御神体の前に置かれた石の、赤い棒のようなものは、かつて赤い鳥居だったものの基礎部分。
津波の大きなエネルギーを物語っている。
街なかでもこの辺りは、歯が抜けたようにさら地になった土地も多い。商店街だった通りには比較的建物も残されているが、少し東に入った旧北上川沿いでは、どんどん建物が撤去されていく。
そんな場所に鎮座されているからこそ、
萬画神社の御神体にはありがたいご利益が凝縮されているのだと思う。
顔は地球を表し、右手に持つペンはあらゆる邪気を払う力がある
萬画神社パネルより
御神体の御名は、
萬画章命(よろずえがくあきらかのみこと)
町おこしの中心施設である萬画館を見ることもできなかった石ノ森章太郎が、いまや神様となって、よろずの画を描く力で、町を勇気づけようとしている。
小さな体に凝縮されたご利益を力に、世界を意識した大きな未来を、たくさんの人たちの手で描いていってほしい。
あらゆる邪気を払うというペンと、地球でもある御顔をなでながら、いっそう広くなった石巻の空を見上げると、空の向こう、日和山の上あたりの空から萬画章命が地上を見詰めているような気がした。
萬画神社
●TEXT+PHOTO:井上良太(株式会社ジェーピーツーワン)
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