「急がなくていい」、「ゆっくりでいい」と私は言ってるんだよ。
まだ何も進んでいない。始まってもいないくらいだよ。みんな早く家を建てるなりして早く仮設を出たいと思っているけど、
たとえお金があったって材料と人が足りない。だって女川で大工組合の人、たった10人しかいないんだから。
まだまだ時間がかかる。
でも、いつになるのか分からないから焦りも出る。うっぷんとかもたまってくる。だって、金も底をついてきてるからな。二重ローンがある人だってたくさんいる。
もうすぐ2年だちゃ。
でも復興住宅にしても、土地造成ですらまだ先の話だ。住めるのはいつになることか。よく訪ねてきてくれる国会議員にこないだ聞いたよ。「5年て言ったべな?」って。
だから私はみんなに言っているんだ。「急ぐな」、そして「ゆっくり」。
石田志寿恵さん(宮城県牡鹿郡女川町)清水仮設住宅
石田さんとお話をしていると不思議と気持ちがなごむ。いつも話すのは仮設住宅の現状や進まぬ復興といったことなのに。
石田さんは34歳でご主人を交通事故で亡くされた後、5人のお子さんを育て上げてきた。ようやく子どもたちが独立して、ひとり暮らしをするようになって数カ月目に震災に見舞われたのだそうだ。それ以来、避難所でも仮設住宅でも持ち前の明るい性格と正義感で行動してきた。「私は1人だから、動けるうちは動きましょう」。そう語る石田さんの前向きな姿が、知り合う人にたくさんの元気力をくれているのは間違いない。
●TEXT+PHOTO:井上良太
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