あたらしい石巻・復興支援リポート「立町大通りのyuugen」

iRyota25

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あたたかさと美味しさが身に染みるカフェ

日向ではコートを脱ぎたくなるくらいのお天気の日でも、日没後はどんどん冷え込んでいく。かつて石巻でもっとも栄えていた立町(たちまち)大通りのアーケード。出された看板に貼り付けられた手書きの一言にぐぐっと引き寄せられた。

「さむから、あったまっていきません?」

マフラーを着けてこなかったことを後悔しはじめていた夕暮れ時、ことばのやさしさが身に染みる。吸い込まれるようにドアを開いたら、そこはお洒落なカフェだった。

店内の壁にはぐるりと和風のお洒落なグッズが並ぶ。かと思ったら小さなショーケースには墨が入れられていたり、伝統工芸品で石巻市の特産でもある雄勝硯が飾られていたり。まずは、店内の様子をご紹介しましょう。

和風のグッズがたくさん並べられた空間なのに、なぜかしっとりと落ち着ける空間です。テーブル席は左手に並んでいます。

テーブル席の壁に掛けられているのは“ 掛け軸 ”です。しかもこの掛け軸はとても小ぶりでハガキをそのまま絵として飾ることができるんです。なんともお洒落。掛け軸は床の間に掛けるものという常識が崩されました。

絵などを掛け軸にする時に施す裏打ち作業というものがあるのですが、そのお値段にびっくり。ハガキサイズで300円と記されています。

とはいえ、やはりここはカフェ。メニューから“ とっておき ”の一品を注文しました。

注文したのは「yuugenパフェ(抹茶)」。バニラアイスに抹茶アイス、そして白玉にあんこに栗の甘露煮。黒蜜の香りがよく合います。甘いものばかりの組み合わせなのに、素材がケンカしないのが不思議です。

寒い時にパフェなんてと言われるかもしれませんが、この組み合わせは絶妙。バニラアイスとあんこ、生クリームと抹茶アイス、栗とあんこといろんな組み合わせを楽しんでいるうちに、スィートな気分で満たされて、なんだかあったかな心もちになってしまいました。

「白玉&バニラパフェ」やゴマアイスをあしらった「yuugenパフェ(ゴマ)」、あんこと生クリームがのった「抹茶プリン」などなど多彩なメニューが楽しめます。

どうやらこのお店は、メニューも飾られているグッズにも“ とり合わせ ”を楽しむというコンセプトが一貫しているようです。

それもそのはず、このお店は日本の美意識をいまに伝える表具屋さんのアンテナショップだったのです。

さりげなく並べられたきんちゃく袋もお洒落な色づかい。
さりげなく並べられたきんちゃく袋もお洒落な色づかい。

震災前には表通りから少し入ったところで営業されていたそうですが、津波によって店内は大変なことに。たいせつなお客様からの預かりものまで流されて途方に暮れていましたが、みなさんの励ましがあって店を再建することになったのだとか。

これから新しい石巻に生まれ変わっていく時に、昔ながらの商売だけを続けるわけにはいかないという意気込みが、このお店の開店につながったのだと拝察しました。

一度は津波で流され、がれきの中から救い出された雄勝硯の名品も飾られています。
一度は津波で流され、がれきの中から救い出された雄勝硯の名品も飾られています。

若い方にはなじみが薄いかもしれませんが、かつて日本には――。

お客さんを通すための和室には床の間があって、床の間には掛け軸やお花、香炉などが飾られていて、床の間は客人によって、また季節によって飾り付けが変えられて。日本の美意識の特色は、まさに“ とり合わせ ”にありました。日本家屋の床の間は、住まう人の美意識やもてなしの心を表現する空間でした。「小宇宙」なんて比喩が使われるくらい、奥が深くてきめ細やかなこころが息づく空間だったのです。

住宅環境が変化する中で、床の間の文化はだんだん薄れていきました。旧家が多い石巻でもそれは同じことだったでしょう。表具の技術は、文化財の保存や修復など、ごく限られた世界でのみ伝えられていくものになりかねない状況だったはず。

小さなショーケースには墨がずらり。文房具までお宝に見えてくる空間です。
小さなショーケースには墨がずらり。文房具までお宝に見えてくる空間です。

そんな時代背景の中での大震災。そこから立ち上がるに際して、床の間はおろか畳すらないような住空間でも、和の心を満喫できるグッズを作り出し、それを広めていこうとする姿。たまたまこの日はご主人は不在でしたが、ぜひとも詳しくお話を伺ってみたいと思った次第です。

甘くてしあわせなパフェのあと味を感じながら。

寒い冬の日、美味しいパフェやお茶、そして語らいの時間を楽しみながら明日の生活空間をあれこれ想像して楽しめる場所、yuugenへようこそ。

yuugen  石巻市立町1-5-11   0225-25-5517

写真と文●井上良太

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