離島甲子園
2012年、ロンドン五輪に沸く8月。8月と言えば、高校野球も甲子園を舞台に毎年熱戦が繰り広げられるが、日本全国の島々でも同様に熱戦が繰り広げられているのはご存知だろうか。それが「離島甲子園」である。こちらは各島々の中学生らが開催地の島に集い、離島日本一を決める野球大会だ。 国土交通省の協力の下、元ロッテオリオンズ・村田兆治氏が中心となって開催しているこの大会。不便な点も多い離島では、チームが組めるだけ良し、試合の機会は滅多とない。そんな島の球児たちに「何か力になれないか」という村田氏の想いが発端となっている。
通常、高校を持たない島も多いため、中学生は卒業と同時に島を出ていくことも珍しくない。また、生徒数も本土の学校と比べれば少ないのが普通。ひとつの学校で団体スポーツに必要な人員を揃えるだけでも、圧倒的に難易度が高いのだ。そのため、参加チームの中には、学校や島の垣根を越えた合同チームも少なくない。ようやくチームを組めたとしても、移動が容易ではない島々にとっては、対戦相手を探すのにもひと苦労だ。 そんな現状を目の当たりにした村田氏の「野球の楽しさを伝えたい」という直球の想いから成り立った離島甲子園。島々の過疎化が進む現状にあって、年々参加チーム数は増加傾向だ。かつて一世を風靡した大投手が、離島の中学生たちにも渾身の一球を投じる。「まさかり投法」で名を馳せ、150km超のストレートとフォークで三振を量産。現役引退後は60歳を超えても135kmの球速をマークするなど、骨太な人生を歩むの村田氏。この大会が島々の活性化につながることを期待したい。
島の名前を掲げて試合をするこの機会は、中学生らにとっても貴重な機会となるだろう。
離島甲子園・・・「国土交通大臣杯 全国離島交流中学生野球大会」が正式名称。2012年で5回目を迎える。第1回の伊豆大島(東京)開催を皮切りに、隠岐の島(島根)、種子島(鹿児島)、上島町3島(愛媛)、そして5回目は八丈島(東京)と、全国各地で開催されている。年々参加校数も増え、5回目には最多の21チームを数えた。
第5回大会概要日時:2012年8月27日(月)~30日(木)
場所:八丈島(東京)参加チーム数:21チーム
不便な点も多い離島
地理的環境から不便な点も多いのが離島。その影響が如実に現れるひとつの例が学校だ。人口規模の大きい島ならともかく、小規模な島や高齢化が進んだ島ともなれば、義務教育機関である小学校・中学校が備わっていない島も全く珍しいことではない。実際に人口規模が100人前後の小さな島に訪れると、島のどこかに学校跡など見られることから、かつては学校が存在していたのかと思うことも多い。特に人口流出による過疎化が顕著になってきた昨今、定住者の獲得はそれぞれの島にとって大きな課題のひとつである。若い世代が島に定住しない限り、そう遠くない将来、島から子供はいなくなるのだ。 では、学校現場が機能している島はどうか。それでも本土の一般的な学校がひとクラス平均して30名前後の児童・生徒を抱えるのに対し、総じてそれ以下であることは断言できる。例えば2012年4月、山口県・平郡島では、休校中だった平郡東小学校にようやく児童が1人入学し、9年ぶりに再開したことで話題となった。同級生がいないばかりか在校生も1人。これには賛否もあり課題も多いと思われるのだが、事実、こういうギリギリのラインで存続している学校も数多存在する。