【シリーズ・この人に聞く!第189回】フリースクール「育海」代表 堂野博之さん

――離島留学なんて素敵な響きです。堂野さんが育海を通して伝えていきたいことを一言お願いします。

実際に住民票を移してもらい、隣島にある学校まで船で通って、夜と休日は育海で過ごしてもらいます。これは全国から募集します。育海にきている子どもたちも皆やりたいことはバラバラですが、何も考えずにその時その時間を一緒に楽しむ。それだけですね。こちらが何か教えるというより、子どもが元々持っている生命力、エネルギーが発揮できる時間や環境があると、勝手に成長すると僕は思っています。そこに尽きます。僕は地域と環境を整えて子どもたちがのびのびと安心して過ごせる場所を作ってあげることです。皆の中で揉まれて育っていけばいい。

――枠にハメたがる大人を反面教師にした堂野さんだからこその視座がありますね。

余談ですが小学5年生時の先生はほとんど僕にアプローチしてこなかった。ある時、家庭訪問にきて縁側の将棋台を見つけて、将棋ができるなら一番やろうじゃないかと。で、2時間くらいかけて対面勝負して僕は負けた。何も言わずにそのまま帰って、あとから聞いた話では、将棋を指すやつに悪いのはいない。堂野は大丈夫だ!と周りの先生に言っていたらしい。現状を評価したり、こうしないとこうなるぞという脅しでなく、その子と自分で今ある時間を向き合う。なんでもいいと思うけど、純粋に時を過ごせたのが僕にとってものすごいうれしかった出来事でした。そういうことができる大人になりたいな、と。

――では最後に、教育を考える親へのアドバイスを。

やりたいことが見つからないという子どもが増えていますが、やりたい情報を探すだけでは見つからないもの。目的を見つけてからゴールを設定して歩むのではなく、旅するように偶然出会って花咲くこともある。目の前にあることを見つけて歩き始めるのも大切。だって、やりたいことにはやりたくないことが漏れなくついてくる。人間関係もすべてうまくいくわけではないですから。「過去に囚われず、未来を求めず」です。子どもは過去と未来に心を病む必要はありません、今をしっかりと生きることに成功も失敗もないんです。目的を選ばずに与えられたご縁で旅するように生きる人生も楽しいと思います。子どもに教えること、子どもが育つこと。これは同じではないかもしれませんね。

編集後記

――ありがとうございました!心を閉ざした子どもに必要なのは机上の学習ではなく、瞳の輝きを取り戻せる環境で得難い体験をすること。堂野さんは黒板を使わない先生として、大飛島で心の洗濯をサポートしてくれるはず。育海(HUG・K・UMI)というネーミングは公募で決定したのだとか。漢字だけでなく英字の意味も素敵!ここで育つ子どもたちのその後も楽しみに、これからの活動を応援しています。

2021年9月リモートによる取材・文/マザール あべみちこ

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