シリーズ「自閉症って、どんな障害?」第5回~声をかける?かけない?~

先月、東北地方の新聞「河北新報」の読者投稿欄の記事をたまたま目にしました。とても素晴らしい投稿だったので一字一句そのまま転載したいぐらいなのですが、そうはいかないので抜粋しながら補足します。

・知的障害を伴う自閉症の娘さん(5歳)とイベントに出かけた。
・乗り物に強いこだわりがある娘さんが、バスの方へ走っていこうとした。
・お母さんがそれを制止すると、娘さんはパニックに。

自閉っ子の中には強いこだわりを持つ子も多く、突発的な行動を取ったり、それを止められるとパニックになったりすることはよくあります。なのでこのお母さんも

・全力でバスへ向かおうとする娘さんを抑えるのに必死で他の動作ができない。
・カバンからスマホを取り出すことができず、少し離れているご主人が呼べない。

という状態に。でもそこに救いの手が差しのべられます。

・出発までまだ時間のあるバスの運転手さんが(まだ動かないけど)「バスに乗るかい」と声をかけてくれた。
・さらに「お母さん大変だな」と気遣ってくれた声を聞いて、涙が止まらなかった。

投稿者の方はとても丁寧で奥ゆかしい、上手な文章でご自分の気持ちを綴っておられました。わが家の娘も知的障害を伴う自閉症。似たような経験があるのでこの記事を妻に転送したところ、すぐに

「わ~~!道端で読んで号泣!ウチと一緒だ~!」

と返信がありました。

パニックで動きが取れない

うちの娘は8歳。大人が本気になっても抑えられない力を出すことがあり、パニックを起こしてしまうと洋服や髪の毛、時には体にかみついたまま離れません。

妻と娘の2人でいる時などはバランスを崩して転んでしまったりすると起き上がれず、パニックが収まるまでそのまま待つしかありません。途方に暮れた妻と娘が2人して泣いていたこともあったそうです。

しかし実際には「なんで母親は叱らないんだろう」と思っている方もいるでしょうし、単刀直入に「ジャマだよ!」と言われたこともあります。

ですからできるだけ妻と娘の2人にしないようにしていますが、どうしても無理な時があります。また、娘がもっと大きくなってもこのようなパニックを起こすようであれば、わたしがいても同じ状況に陥ってしまうでしょう。

噛みちぎられては補修、を10カ所以上繰り返したダウンジャケット。「男の勲章だよ」なんて言ってましたが、さすがに捨てました。噛まれている最中に「やめろ!」と言いたいのを中途半端にこらえた結果「やめてよ!」と女言葉になってしまったことがあります(笑)。

声をかける?かけない?

新聞投稿のお母さんは後半にこう書いています。

「『泣いたり暴れたりしている子がいたら、声をかけてあげて』と簡単に言えないのが、発達障害の難しいところです。」

そうなんです。たとえばウチの娘はそんな時に声をかけられて母親が別の人の相手をしたりすると余計に怒ってしまうので、その点に関しては「放っておいてもらう」のが助かります。

でも、「カバンから(娘にあげるための)お茶やお菓子を出したい」という場合は声をかけてくれると助かります(お菓子で娘の気が紛れるようなこともよくあるので)。本当に人によって、時と場合によっていろいろで「こういう時はこうして欲しい」という共通の解はありません。

「じゃあどうすればいいの」と問われると言葉がありませんが、ここで再び投稿者の方の言葉を引用します。

「不思議な行動をしている人を嘲笑しない、『親のしつけが悪い』『本人の努力が足りない』『わがままだ、甘えだ』と決め付けない。それも優しさだと思います。」

妻は、道端で娘がパニックを起こして動けなくなった時のことについて「通りすがりの人は『なんだ?この親子』って思ってるだろうね」なんて話をよくします。でも最近では「自閉症をもっとよく知ってもらうために」と開き直って「このヘンな光景をみんなに見てもらって町の名物になってやれ(笑)」なんて言ったりもしています。

障害者の親がこんなことを書くと「だから自分のこどものことは大目に見て」と言っているようにとらえられてしまうかも知れませんが「世の中にはいろんな人がいる。変に思える行動や言動には理由がある」という気持ちはいつも忘れないように心がけています。