RO縮水処理設備に関する資料と写真が公開される。汚染水の線量低減を目的とした多角的かつブリコラージュな対応を評価したい
1月13日(火曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。
2号機1階の除染作業で、吊り下げ作業中の鉛の板に協力企業作業員の頭部が接触する事故。詳細な事故状況の公表が求められる
※平成27年1月13日午前9時45分頃、2号機原子炉建屋1階除染作業中、吊り上げ作業中の鉛板に、協力企業作業員の頭部が接触し首の痛みを訴えたことから、入退域管理棟救急医療室にて医師の診察を受診。その結果、緊急搬送の必要があると判断し、同日午前11時13分、救急車を要請。
なお、当該作業員については意識があり、自力歩行が可能であるが、頭部の接触であることから、念のため検査を実施する予定。
放射線量が高い原子炉建屋内での作業で、放射線を遮蔽するための鉛板を設置する作業中に作業員の頭部が接触したということか。
線量が極めて高い場所での作業なので、作業員は全面マスクに防護服の完全装備だったと考えられる。視界や動きの自由が制限される状況であるだけに、二重三重の安全策が求められるはず。吊り下げ作業中に頭部に接触という記載から、吊り荷の下に作業員がいたか、あるいは吊り荷が落下した際に接触した状況を想像することができる。安全確保のための監視員や現場作業の監督者は何をしていたのか。また、そもそも高線量な場所で人間が除染作業を行うという計画そのものに問題はなかったのか。事故状況の詳細が公表されることを希望する。
1月10日に運転開始したRO縮水処理設備の写真公開
これは大きな方針変換かもしれない。事故後しばらくの間、セシウムの除去はセシウム吸着装置で、ストロンチウムなどの他の核種は多核種除去設備で除去というように、放射性核種の分離は整然としたエンジニアリング的な手法で進められているように見えていた。しかし、今では多核種除去設備の不調など、計画が思うように進まない状況に対応して「多重的なリスク低減策」が進められている。
一見、ブリコラージュ(場当たり的に寄せ集めて作る仕事)な印象も与える方針転換だが、他核種除去設備がうまく行かない以上、ストロンチウム除去に利用できるものを手当たり次第活用しようという新しい方針を高く評価したいと思う。モバイル型ストロンチウム除去装置の設置や、セシウム除去装置のストロンチウム対応への改造もスピーディだった。事故の全体像が把握しきれず、メルトダウンした燃料のありかや地下水の動向も予測できず、今後何が起きるか想定しきれない状況なのだから、ブリコラージュに対応する方が現実的と言えるだろう。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年12月22日午前9時58分~)
※滞留水移送は実施中
◆3号機
1号機と同じ4項目
※滞留水移送は停止中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・平成26年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール
新規事項なし
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
水処理設備および貯蔵設備 ~集中廃棄物処理施設の建屋間で溜まり水を移送
・集中廃棄物処理施設において、サイトバンカ建屋からプロセス主建屋へ溜まり水を移送中。(平成27年1月13日午前10時20分~)
地下水バイパス ~揚水井No.10の汲み上げを停止。ポンプと井戸内の清掃のため
※地下水バイパス揚水井No.11において藻のような浮遊物(鉄酸化細菌等)が汲み上げられた事への水平展開として、地下水バイパス揚水井No.10について、揚水ポンプおよび揚水井内部の清掃作業を行うため、水の汲み上げを1月13日午前8時57分に停止。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
平成27年1月12日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側 ~1・2号機タービン建屋東側の地下水観測孔汲み上げ水サンプルで記録された高濃度を日報に記載
<最新のサンプリング実績>
※平成27年1月12日に採取した地下水観測孔No.1-12の汲み上げ水について、セシウム134,セシウム137、コバルト60および全ベータの値が、前回値と比較して高く、過去最高値が検出された。
<地下水観測孔No.1-12の測定結果:今回(1月12日)採取分>
・セシウム134:140 Bq/L
・セシウム137:470 Bq/L
・コバルト60 :1.9 Bq/L
・全ベータ :15,000 Bq/L
<参考:前回(1月8日)採取分>
・セシウム134:2.8 Bq/L(お知らせ済み)
・セシウム137:7.8 Bq/L(お知らせ済み)
・コバルト60 :検出限界未満
・全ベータ :260 Bq/L(お知らせ済み)
同日(1月12日)、採取した他の観測孔の測定結果については有意な変動が見られていない。1月13日に再度本観測孔で水を採取しサンプリングを行うなど、今後も監視を継続する。なお、地下水観測孔No.1-12の位置する1・2号機取水口間では、海洋への流出防止を目的として、ウェルポイントにおける地下水の汲み上げを継続している。
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1号機放水路
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
関連データ(東京電力以外のサイト)
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成27年1月13日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: