玄海原発周辺でも安定ヨウ素剤を配布

ヨウ素剤をもらって「かえって、原発事故が本当に起きるかもしれないと感じるようになった」

佐賀新聞によると、九州電力玄海原発周辺の唐津市呼子町の殿ノ浦西地区で、甲状腺被曝のリスクを軽減するとされる安定ヨウ素剤が住民に配布されたという。

 原子力災害時に甲状腺被ばくのリスクを減らす安定ヨウ素剤が28日、玄海原発周辺地域では初めて、唐津市呼子町の殿ノ浦西地区住民に配られた。来場者は想定より少なく、配布率は対象の3分の1どまり。説明会での質問もわずかで住民の関心はいまひとつだった。錠剤を受け取った住民からは「避難に相当時間がかかる。効果は持続するか」などの不安も。理解が深まったと言い難く、参加呼び掛けや、効用や服用方法の周知など課題が浮き彫りになった。

引用元:ヨウ素剤初配布、住民まばら 効果持続に不安も|佐賀新聞LiVE

福島の原発事故では、事故直後に大量の放射性ヨウ素が排出されたと考えられている。ヨウ素は人体に取り込まれると甲状腺に集まる性質がある。放射性ヨウ素も非放射性のヨウ素と同様に甲状腺に蓄積し、ガンなどの病変を引き起こす危険がある。放射性のヨウ素を取り込む前に、非放射性のヨウ素を大量に摂取することで、放射性ヨウ素の甲状腺への蓄積を防ごうというのが安定ヨウ素剤だ。

とはいえ、安定ヨウ素剤は放射性ヨウ素が体内に蓄積するのを防ぐ効果はあっても、その他の放射性核種、セシウム134や137、ストロンチウム90、コバルト60などに対しては何ら効力がない。

同様に住民へのヨウ素剤配布が行われた四国電力伊方原発の周辺では、「原発建設時から事故は起こらないと言っていたのに」といった声が聞かれたという。佐賀新聞の記事では、「ヨウ素剤を持っていても安全ではない」という住民の声が紹介された。

 参加者は問診と説明会を経て、ヨウ素剤を受け取った。家族4人分を手にした主婦(44)は「説明を聞いていると、ヨウ素剤を持っていても十分な安心が得られないと思った。かえって、原発事故が本当に起きるかもしれないと感じるようになった」と話した。夫婦で来た男性(72)は「避難時間推計では30キロ圏を出るまで渋滞で29時間ぐらいかかると聞く。ヨウ素剤を持っていても安全とは言えない」と不安を口にした。

引用元:ヨウ素剤初配布、住民まばら 効果持続に不安も|佐賀新聞LiVE

ヨウ素剤の配布は、原発事故が発生するかもしれないとの前提に立っている。玄海原発が立地する玄海町の周辺は、唐津も呼子も昔から魚がおいしいことで知られてきた。リアス式の海岸はどこまでも美しく、観光客も多い。すぐ近くには豊臣秀吉が築いた名護屋城址もある。ヨウ素剤配布のニュースに接して思うのは、そんな町で原発事故など起きてほしくないという、ただただその一事である。

九州電力玄海原子力発電所