混ぜれば濃度は下がるから。運用目標を超えるトリチウムが検出され続ける地下水バイパス揚水井No.12で汲み上げ再開
6月12日(木曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
地下水バイパス揚水井No.12の汲み上げ再開
東京電力自身が設定した「運用目標」を上回るトリチウム濃度の検出が続いていた地下水バイパス揚水井No.12からの地下水の汲み上げが再開された。ほかの揚水井からの水と混ぜれば運用基準を下回るというのがその根拠。
地下水バイパス揚水井No.12については、各揚水井の定例モニタリング(5月26日採取)において1,700Bq/Lのトリチウムが検出されたことから、5月27日より一旦くみ上げを停止し、状況を確認しておりました。
第三者機関によるモニタリングの結果も含め、その後3回(※1)モニタリングを実施しております。当該揚水井については運用目標値を超えておりますが、このモニタリング結果をもとに一時貯留タンク側の評価(※2)を行った結果、運用目標以上とならないことが確認できたため、今後準備ができ次第、当該揚水井からのくみ上げを再開する予定です。
※1 5月29日採取:1,700Bq/L(当社分析結果)、1,600Bq/L(第三者
機関分析結果)
6月2日採取:1,500Bq/L(当社定例モニタリング)
6月5日採取:1,700Bq/L(当社分析結果)、1,600Bq/L(第三者
機関分析結果)
※2 これまでの当社分析結果において、揚水井No.12のトリチウム濃度が
1週間で 1,100Bq/L(5月22日採取)から1,700Bq/L(5月29日採
取)と600Bq/L上昇(最大上昇率)したことがあり、この実績を考慮
し、今後、トリチウム濃度が600Bq/L上昇して、1,700Bq/L(最大
値)から2,300Bq/Lになったと仮定しても、一時貯留タンク側でのト
リチウム濃度が約230Bq/Lとなり、運用目標(1,500Bq/L)以上に
はならないと評価
トリチウムが運用目標値を超えているため、傾向の監視強化を継続し一時貯
留タンクへの影響がないことを確認してまいります。
地下水バイパス揚水井No.12のくみ上げ再開についての続報です。
地下水バイパス揚水井No.12のくみ上げについて、本日(6月12日)午後7時20分より再開いたしました。
再開後の現場に異常がないことを確認しております。
次の資料には12基の揚水井のそれぞれで、これまでの分析結果と各井戸の汲み上げ比率が示されている。各井戸で3回行われた分析結果は、トリチウム濃度が上昇傾向にあるものと下降傾向にあるものが混在しているが、汲み上げ比率が高い井戸では上場傾向にあるものが多い。少し心配なデータだ。
他の放射性核種と異なり取り除くことが極めて困難なトリチウムの扱いについては、基本的な方針そのものがオーソライズていない。にも関わらず混ぜて薄めて排出。多核種除去設備ALPSで処理した後の水にも大量のトリチウムが含まれている。トリチウム濃度の高い水は薄めて排出する方向への足場固めが進んでいるような気配だ。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(6月9日午後4時30分~)
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(6月9日午後4時50分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プールの状況 ~4号機から共有プールへの移送用キャスク(大型容器)の内包水と洗浄水を移送~
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
加えて4号機プールからの燃料移送に使うキャスクと呼ばれる大型容器の中の水や洗浄水を、一時貯留しているタンクからの水の移送について記載(前回は5月9日に実施)
・4号機使用済燃料プールから共用プールへの燃料移動作業において発生する構内用輸送容器(キャスク)内包水(4号機使用済燃料プール水)および構内用輸送容器(キャスク)内洗浄水については、沈降分離処理し、共用プール低電導度廃液受タンクで貯水しているが、そのタンクが満水レベルに達したことから、6月12日午前10時6分から午後0時20分にかけて、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)への移送を実施。なお、本移送は今後も適宜実施していく。
水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
地下水バイパス揚水井の状況
新規事項なし
※地下水バイパス揚水井No.1~12のサンプリングを継続実施中。
焼却工作建屋の水位、焼却工作建屋西側サブドレン水の分析結果
<最新のサブドレン水サンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果 ~H6エリア周辺観測孔で過去最高の全ベータ値~
◆最新のパトロール
6月11日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
6月10日に採取したH6エリア周辺G-2観測孔の地下水について、全ベータの測定値が過去最高の260Bq/L(6月9日採取分の分析値:検出限界値未満〔19Bq/L〕)であった。降雨の影響で測定値が上昇したものと考えており、今後も傾向を監視していく。その他の分析結果については、6月9日採取分の測定値と比較して大きな変動はない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井の状況
新規事項なし
地下貯水槽の状況
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年6月12日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: