tanoshimasan こと「僕」の生い立ちとか、
関西出身なのに離島にハマり始めた理由とか書いてます。
島のドミトリー宿とかで、お酒とか飲みながらこの話するとウケたりするんです。
良かったら読んでください。
今回は、僕が大学1年生のときのエピソード。
部活の合宿で初めて訪れた離島・屋久島での話です。
まず、大阪から鹿児島まで夜行バスに乗る。
ユースホステル部の「合宿」は、男女比や学年が偏らないようにメンバーを分け、北は北海道、南は沖縄までに散っていく。僕ら屋久島合宿一行は合計7人、9泊10日の長旅だ。
僕が所属したユースホステル部には「新幹線、飛行機、タクシーは使用禁止」という、変なルールがあった。ラクをするな!という意味だと思うのだが、創部当初から守られているルールらしく、移動と言えば、バス、在来線、フェリーに限られていたのだ!
というわけで、大阪駅を20時30分ごろ。そのままおよそ11時間弱、バスに乗りっぱなしで鹿児島・天文館へ到着した。そこからさらに鹿児島港まで徒歩20分。やっとのことでたどり着いた鹿児島港だがすぐさま船に乗り、屋久島へ。乗船時間は4時間の船旅である。ふーっ。
屋久島へ到着する時間は12時30分。計算すると、片道16時間のはて。ようやく屋久島へとたどり着いた!
屋久島に到着しただけなのに、すでに何とも言えない達成感である。
高校時代。遠出と言えば野球部の遠征程度で、旅行らしい旅行なんて経験が無かった。唯一、高校の修学旅行で北海道へスキー旅行に行ったが、その時は飛行機で2時間もすれば札幌まで行けてしまった。「旅行とは意外と淡白なもの」、そんな印象があったことは否めない。
それだけに!それだけに、これだけ面倒なはずの移動が、なんだかとても面白く、新鮮に感じられたのだ!
とは言え、屋久島での目的は到着ではない。最高峰・宮之浦岳への登頂である。ここまで来てようやくスタートライン。だからこそ、この先起こるだろう出来事が、楽しみで仕方がなかった。
屋久島と言えば「日本一大きい縄文杉」!やっぱり有名なだけに、見ておきたい。
登山は2泊3日だと聞いた。
次の日、朝から先輩が言うままについていく。島内の土地勘はまったくない。先輩が「これ」というバスに乗り、登山口方面を目指した。
ところがこのバスがまた長い。山はずっと見え続けているのに、バスを走らせると遠いのなんの!林道をぐねぐねと曲がりながら、なんだかんだで1時間近く走り続けたのではないだろうか。すっかり酔ってしまい、吐きそうになったところで登山口に到着した。
しかし、その登山口がまた見違えるほどに澄んだ空気なのだ!
南の島の暖かいイメージを覆すかのようなヒヤッとした空気が、車酔いした身体に心地よい。少し歩けば既に想像以上の大きさを誇る「紀元杉」があった。テンションの高い僕ら一行はその場で記念撮影。
何がここまで楽しくさせるのか、よくわからないけど楽しかった。
淀川小屋と呼ばれる山小屋へたどり着き、初の山小屋泊を経験した。
老若男女関係なく、キャンプ道具で米を炊き、風呂にも入らず19時には就寝だ。このまま明朝3時に起き山登りに出発するのだから、僕にはもう訳が分からない。
朝早く出発し、荷物を担いで11時間。ひたすら山を登り続ける。途中の景色はそれはもう綺麗!夢中で写真を撮り続けるのだが、徐々に皆の口数は減り、休憩の回数も増えていった。
正しく読めているのに地図が不安になり、たくさん持っているのに水の減りが気になってくる。
それでも、月並みな言葉になってしまうが、仲間がいて良かった。重たい荷物は分け合い、心配事があれば相談し、広い山中で迷うこともない。この日1日を歩き続けて過ごし、この日も新高塚小屋という山小屋に泊まる。
風呂に入られないなんて、普段なら耐えられないはずなのに、周りにいる全員が同じ状況だと思うと、やはりなんだか楽しくて仕方がない。
登山3日目になり、ようやく縄文杉へ到達した。
午前8時30分ごろ、あの有名な縄文杉へ到着した。
地元・大阪を出発して4日目!風呂なし、おにぎりのみの登山が始まって3日目!ここまでしてようやくたどり着いた。それまでの僕に、目的地に片道4日も掛けたことがあっただろうか。体力にだって自信があったはずなのに、身体じゅうに乳酸が溜まっている。
それまでの道のりを思えば決して楽じゃなかった。ただ、頑張っただけの見返りを思えばおつりが出そうなくらい、十分だ。
もっと感動したのは、この有名な縄文杉以上に、印象深かった景色の数々。
正直に言うと、個人的には、縄文杉のインパクトはそれほどでもなかった。屋久島の、美しすぎる山の中を歩き続けた3日目である。それより手前に見た景色の感動が大きすぎたのだ。
特に印象的だったのは、紀元杉、花之江河、ウィルソン株あたり。これらについて、僕はその存在すら予習しておらず、辿りついて初めてその壮大さに圧倒された。特にウィルソン株の中から見上げた景色は、とても人間の力では創造しえない芸術だとさえ感じた。
誰もが「屋久島と言えば縄文杉!」と口をそろえるだけに、自分だけが好む景色を見つけた気がして、何ともたまらない。
もちろん、その後にも好きな景色は沢山あった。もはやどれが一番良かったなんて決められないし、聞かれても困るだろう。
ようやく下山し、3日ぶりの風呂に入る。
さっきまで、景色の数々に感動していたが、3日ぶりの風呂にまた感動である。
感動の連鎖が、止まらなかった。
何より驚きなのが、ここまで長い道のりをかけたのにも関わらず、9泊10日の中では序盤の出来事にすぎないという点だ。
登山を終えたものの、屋久島についてはまだまだ知らないことだらけである。
残りの後半、屋久島はどんな景色を見せてくれるのか。
そう思うと、期待に胸が膨らんだ。
(つづく)
屋久島・宮之浦岳
2泊3日かけて登頂!
このシリーズのトップページです。