気象庁の発表「津波警報の改善について」
NHKの発表「津波警報が変わります!」をもとに、2013年3月7日から変更される津波警報について、ポイントを解説します。
ポイント1
津波規模の予想方法が根本的に変わります。
これまで津波警報は、発生した地震の規模から算出されてきました。しかし、マグニチュード8を超えるような巨大地震では、地震の規模を即座に正確に把握することができません。東日本大震災でも、地震の規模を示すマグニチュードは速報値ではM7.9でした。その後マグニチュードは、8.4、8.9と修正され、最終的にM9.0と発表されたのは地震から2日後の13日午後のことでした。
(少し詳しい説明:地震の規模を示すマグニチュードには、世界的にいくつかの算出方法があります。日本の気象庁が採用している「気象庁マグニチュードMJ」は、比較的小規模な地震から大規模な地震までをスピーディかつ正確に算定する方法です。しかし、マグニチュード8を超える巨大地震や、マグニチュード9を超す超巨大地震に対しては算出するマグニチュードが頭打ちしてしまう特性があります。通常気象庁が発表する地震規模、すあわち気象庁マグニチュードが、7.Xの後半になった際には、速報値で伝えられる地震規模よりさらに大きな地震が発生していることを考える必要があります。関連ページ→ぽたるページ:「マグニチュード」)
このことが、津波警報を発令した当初、津波の予想高さを過小評価した(福島県沿岸部で「3メートルの津波高」など)一因とされています。
そこで気象庁では、正確な震度の確定とは別に、マグニチュード8を超える巨大地震になる可能性を評価・判定する手順をつくりました。正確な震度判定に時間がかかりそうな場合(つまり、巨大地震になる可能性がある時)には、その海域での最大級の津波を想定して「大津波警報」や「津波警報」を発表することになったのです。
ポイント2
津波の高さの表現が変わります。
っZ巨大地震が発生した時、津波警報の第一報では、津波の高さを「何メートル」ではなく、「巨大」、「高い」と表現して、非常事態であることを伝えることになりました。
警報で「巨大」とされた場合、東日本大震災クラスの非常事態です。ただちに、できるだけ高い場所に避難してください。二次避難可能な場所(津波が予想以上に高く、避難場所に迫ってきた時、さらに高いところへ逃げ延びることができる場所)を、普段から見極めておくことが重要です。
地震規模を精度よく判定できた場合には、巨大地震の場合でも、1m、3m、5m、10m、10m超の5段階で津波の高さが発表されます。気象庁は制度の高い判定は「地震発生から15分ほど」としています。
ポイント3
津波高さが「観測中」と発表されている間は、さらに高い津波がくる可能性があります。
津波は何波も繰り返して襲ってくる場合が一般的です。東日本大震災でも広い範囲で1波より2波の方が高かったという証言が数多く聞かれています。また1波と2波、あるいは3波との間隔は、場所によって大きな違いがありました。
観測された津波の高さを見て、最大波だと勘違いしないために、巨大地震による津波では、津波高さを「観測中」と発表する場合があると気象庁はしています。
「観測中」と表示されている間は、さらに大きな津波がくる危険がありますので、安全な場所を離れないようにしましょう。家に荷物を取りに行く、海の様子を見に行くなど危険地域に戻るような行動は、ぜったいにしないでください。
NHKの画面は?
NHKの画面でも「見て、聞いて、すぐ分かる」表現を目指して、津波警報の表現が変わります。「気象庁の新たな情報に対応し」「一刻も早く避難してもらう」ため「見やすい画面・危機感の伝わる画面」を構成しているとのことです。
気象庁が発表する津波高さの「巨大」、「高い」の表現に対応するほか、「すぐにげて!」とのひらがな表記や、日本語に対応できない人たちのための多言語放送の案内も行われます。
津波到達後の情報では、津波高さの上昇中を示す矢印も表示されます。
津波が観測された沖合の観測点の場所を地図上に点滅させ、「にげて!」と表示します。
地震発生時には、個人個人が自らの命を守るために行動することが基本です。どんなことがあっても災害から生き延びるため、地震や津波の情報に注意するとともに、どこで地震に遭遇したらどう逃げるか、どうやって命を守るのかを、あらかじめしっかり考えておくようにしてください。
とっさの対応は難しいのが実情です。数多くの人々が今回の大震災で亡くなられたことを、けっして忘れないでください。
亡くなられた人たちのために、そして明日のために、いまこのページを見ることができる生きている私たちは生き延びましょう。生き延びてください。
※このページは、気象庁の「津波警報の改善」とNHKの「津波警報が変わります!」を元に、ポイントを独自に整理したものです。詳しい内容はそれぞれのページでご確認のうえ、いつどこで大地震に見舞われても生きのびることができる準備を心がけてください。お願いします。
●TEXT+PHOTO:井上良太(株式会社ジェーピーツーワン)