地域おこし協力隊 全国合同説明会に行ってきた
1月27日の日曜日、都内千代田区にて行われた「地域おこし協力隊 全国合同説明会」に行ってきました。「地域おこし協力隊」とは総務省が支援する制度で、都市住民など地域外の人材を地域社会の新たな担い手として受け入れ、地域力の維持・強化を図る活動です。 この説明会では、全国46の市町村で活動している地域おこし協力隊が、新しく人員を募集。中でも僕は、佐渡島を含む佐渡市、甑島を含む薩摩川内市の地域おこし協力隊が、どのような活動をされているのかに興味が湧き、お話を伺いに行きました。(→別記事にします)
本記事では、この合同説明会全体を通して知ったこと、感じたことを中心に紹介したいと思います。
会場内の様子(アーツ千代田 体育館3331ホール)
地域おこしのために「できること」をしよう!
さて、そんな現状に歯止めをかけるために立ち上がったのが、各地域の「地域おこし協力隊」ということになります。隊員は都市部で生活する人々のなかから公募され、1年契約(最大3年)で各地域に住民票を移して活動します。活動内容は地域によってさまざま。印象的だった協力隊を以下にご紹介します!
例1.仮設住宅住民の支援、観光地としての再活性を!
2011年の震災において、甚大な被害を受けた岩手県。県内の地域によっても活動内容は異なりますが、岩手県では「いわて復興応援隊」として人材募集がなされていました。特に沿岸部では、津波による被害で、多くの人々が仮設住宅での生活を余儀なくされています。生活的不利が生じるなか、訪問、傾聴、イベント開催、内職支援など、貴重な人手が求められていました。また、復興と同時に、観光地としてさらに活性化していくため、特産品の開発や、ツアーガイドの育成も目指していく方針だと聞きました。全国の協力隊の中でも特に募集人数が多い点も印象的です。→いわて復興応援隊(公式HP)
例2.交流事業を通じて観光推進、農業活性を!
総人口650人の長野県売木村では、過疎・高齢化の問題を止めるため、交流事業を通じて観光推進、農業活性を目指す施策を打ち出していました。そのうちのひとつが「県内外から参加者を募る稲作農業体験」。これは週末を中心に月1回程度、全7回の農業体験を通じて農業の楽しさや売木村の魅力を体験するもので、好評を博しているそう。全ての回に参加すると米俵60kg分プレゼントというサービスも人気だとか。そのほか都会の子供たちが農家に泊まる民泊や、留学して学ぶ山村留学といった取り組みを通じて地域活性を図っており、協力隊員はその企画・運営などに携わります。→売木村地域おこし協力隊(売木村公式HP)
例3.地域資源を発掘・調査し、特産品開発を!
鹿児島県薩摩川内市・甑島(こしきじま)では、後継者不足と地域産業の衰退が課題となっています。どこか昔懐かしい風景に南国情緒が加わった甑島は、根強いファンこそ抱えているものの、さらに魅力を創造していく必要があるとして、協力隊員を募集し始めました。業務上の命題はまさに「新たな甑島商品の開発」!そのための具体的ノウハウはないそうで、隊員の柔軟な創意工夫が求められると伺いました。1年契約、最長3年という業務期間は想像以上に短いかも知れません。精力的な活動が求められるのは言うまでもないでしょう。→ぽっちゃん計画(薩摩川内市雇用創造協議会公式HP)
以上、印象的な取り組みを紹介しました。3つとも活動内容は異なりますが、地域のために「できること」を打ち出し、取り組まれている姿が印象的です。もちろん、そのほかにもたくさんの地域おこし協力隊が、それぞれの活動に取り組まれていました。
→「地域おこし協力隊 合同説明会」出展自治体一覧(公式HP)
一方で「正直、どうすれば良いかまるでわからない」という自治体も・・・。
一方で、某県某市の職員は頭を抱えていました。その地域の地域おこしの目的は、ずばり「定住促進」。地理的に不利なことから人口減少が進み、近年は自治体として危機感を抱いているとのことでした。では、目的のためにどのような手段を取るか。多くの地域は具体的な手段をある程度明示しているのですが、その地域にはそれがありませんでした。お話を伺うと、「どうにかしなきゃという思いで協力隊の募集を開始したが、具体策は無いに等しい」とのこと。「移住するだけの魅力を発掘できておらず、企業誘致をしようにも地理的メリットが弱い。また、移住者は必要なのに、空き家の確保もできていない。」と正直に仰っていました。かなり難しい条件という印象は否めませんが、「それでも起業マインドを持った方に応募して頂ければ。」と期待を込められていたのが印象的です。
まとめ
・活動期間は1年契約(最大3年、例外あり)・各地域に住民票を移して活動する。
・協力隊ごとに設けられている目的(ミッション)の達成を目指す。・賃金は地域にもよるが、概ね110,000~170,000円(手当て別)という印象。
・活動時間は原則1日8時間。・活動日数は多少差異はあるものの概ね1か月あたり20日間。
・その他、各協力隊の規定に準ずる。
地域おこしに求められる3つの要素
各地域ごとに目指すものが異なり、また活動内容も異なりました。総じて過疎・高齢化からの打開のため、創意工夫が求められると思います。各地域の説明をまわり、地域おこしには3つの要素が求められると感じました。あくまで私見ですが、各ブースを伺った上でのまとめなので、ある程度は的を得ているのではないでしょうか。
1.観光的魅力の創造と発信
観光地として再度、人々に地域を認知してもらうこと。これがまず第一に求められると思います。人々の関心を得られずして、地域おこしができるとは思えません。上の例で紹介したように、特産品の開発など、観光における新たな魅力を創造し、発信していく必要があると思います。
2.第一次産業から第六次産業※へ
農業、林業、漁業といった第一次産業に依存する地域が多いものの、仕事は生産のみに止まっています。例えば「港で水揚げされる魚類は加工品にし、販売までを自分たちでやらなければ厳しい。」というのが、ある自治体の声でした。地域の産物は自分たちで販路に乗せ、価値を換金するまでのノウハウが必要という印象です。
3.雇用に頼らない人材の育成
移住促進において、最大の懸念事項は「仕事=収入」だと思います。上述したことに通じますが、自分で稼ぐ能力が必要になります。数の限られた職に就ければ良いのですが、それでは人口増加には繋がりません。「雇用に頼らず仕事ができる」起業家のような人材の育成も必要ではないでしょうか。
※ 第六次産業
六次産業(ろくじさんぎょう)とは、農業や水産業などの第一次産業が食品加工・流通販売にも業務展開している経営形態を表す、農業経済学者の今村奈良臣が提唱した造語。また、このような経営の多角化を6次産業化と呼ぶ。
(引用:wikipedia「第六次産業」より)
可能性が詰まっている。
1日がかりのイベントでしたが、各地域のさまざまな現状を垣間見ました。まず、参加していた協力隊のほとんどの地域が、私の知らない地域でした。恐らく、このイベントに訪れたほとんどの人にとってもそうだと思います。しかし、この一期一会をきっかけに、新たに協力隊員が増えることで、地域は少しでも良くなっていくはずです。
僕自身、個人的に興味があるということもありますが、色々な地域の活動に対し「やってみたい!」と思いました。それくらい、やりがいのあるものばかりだと思いますし、活動を通じて、企画、調査、開発、営業、販売など様々なノウハウを身に着けることができるはずです。協力隊での活動を終えた後は、きっとかけがえのない何かを得ている気がします。 「自分たちの地域を良くしていこう」と、地域ごとの課題に向かって挑む姿を見ると、その先には可能性が詰まっているようにも見えました。地域おこしに取り組む地域が、少しでも良くなっていくことを願っています。
◇イベント情報◇「地域おこし協力隊 全国合同説明会」
◆日時・・・平成25年1月27日(日)10:00~17:00
◆会場・・・アーツ千代田 体育館3331ホール(東京都千代田区外神田6丁目11-14)
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