東日本大震災・復興支援リポート 「被災地に広がる不思議な光景」

iRyota25

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ピラミッドのような山は何のため?(2012年11月21日)

新北上大橋の近く、針岡というあたりの田んぼで、こんな光景を目にした。

石巻市雄勝町から大川小学校の方へ向かう国道398号線。坂道を下っていくと小さなピラミッドのような土の山が無数に並ぶ。いくつあるのか数えることすら最初から諦めてしまうほど、おびただしい数の小山。いったい何のためにつくられたものなのだろう。

作業現場に近づくと、大型のパワーショベルと自走式スクリーンと呼ばれる建設機械がセットになって、小山の列を築き続けている。

自走式スクリーンという機械は、泥の中でも移動できるキャタピラ付きの“巨大ふるい”とも言うべきもの。田んぼの土を表面から20センチほどパワーショベルで削り取り、除去した土を自走式スクリーンに投入。オレンジ色の箱のような部分が振動して、中に設置されたふるいで土と異物を分別。ふるい分けた土だけを、田んぼの中に小山のように積み上げていく──。そんな作業をしているように見受けられた。

事業主体である宮城県東部振興事務所に電話で問い合わせると、担当の方がていねいに説明してくれた。

現在作業中の場所は、北上川を遡ってきた津波で大きな被害を受け、農地には塩分を含んだ砂が大量に流れ込んでいます。いま進行中の作業の目的は、田んぼの表面を覆っている砂を除去することです。遠くからは土に見えるかもしれませんが、実際は海や川から流れ込んできた砂がほとんどで、このままでは農耕ができません。

──すると、小山のように積み上げた砂はどこかに運び出すということですね。

はい、搬出するにしても、瓦礫や異物が混じっていてはうまくないので、スクリーンで異物を除去しながら搬出の準備を行っています。

──工期はどれくらいの予定ですか。

来年度からの営農が可能になるよう、来春の工事完了を目指しています。工事そのものは現在ほぼ予定通り進んでいるのですが、取り除いた砂の代わりに入れる土をどうするかという問題があります。農耕に利用できる土壌は限られているので、ヘドロを改良したものなども含め、さまざまな材料について土地改良区の皆さんと相談・検討を進めている状況です。

──入れる土の問題がクリアになれば、来春から耕作できるんですね。ぜひ、頑張ってください。

いえ、課題はそれだけではないのです。この地域は全体に地盤が沈下したため、これまで農耕用の水源としていた沼の塩分濃度が高いままで、現状では農業用水に適さない状態なのです。つまり、水利をどうするかということが大きな問題です。また現状では水稲の栽培は難しいと考えられています。これまで作ってきた稲の代わりに何をつくるのかについても、農家のみなさんと相談して進めていく必要があります。

現状で予想される塩分濃度では、稲はもちろんイモや豆類の栽培も難しいという。
大型重機が広大な田んぼに入り、華々しく作業が進展しているように見えた農地の再生工事。話を伺ってみて分かったのは、ただただ厳しい現実だった。 

2012年11月21日取材●TEXT+PHOTO:井上良太(株式会社ジェーピーツーワン)

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