スロートリップ(あえて)船旅のススメ

 先日、必要に迫られたのを理由に5年以上ぶりに飛行機に乗るハメになり乗りました。 やーしかし!近頃の航空券の手配ってぇのはすっかり簡単になりましたねぇ。搭乗窓口で「これが噂のチケットレスかぁぁ!」と感動したもんです。もちろん、時間とも戦う企業戦士たるもの(もちろんそうでない人も)時間は限られてるんだから。「旅行だってスマートに楽しみたい!」当然っちゃあ当然ですね。いやいや、それは確かにそうなんですが、まだまだ景気が厳しいなんて言われる昨今、えらく観光客が増加している。・・・なーんて景気の良い話が聞こえる離島があるのをご存知でしょうか!先日、世界自然遺産にも登録されました東京都小笠原村、小笠原諸島がそれです。

 小笠原諸島といえば、「船で片道25時間!行ったら3日は帰れない!無論空港ございません!」・・・という、絶海の孤島。少し小笠原に詳しい人なら、まずこう紹介することでしょう。「だから小笠原に行け!」と言いたいのではありません。しかし、こんな面倒くさそうな島でも需要が高まっている、こんな事実もあるのです。

 島といえば沖縄なんかがイメージしやすいでしょうか。沖縄といえば、平成19年度には過去最高の4,289億円の観光収入を記録しました。なんとなく想像はつくかもしれませんが、日本国内の都道府県では圧倒的な数字です。さっきの小笠原と比較すると、沖縄は本当に手軽に行ける島々ばかりですが、これほどまでに、離島は旅先として親しまれているのです。「んなこと言ったって、日本には数えきれないほどの離島があるし、沖縄は飛行機で行けるやん!」上記のお話だけでは、こうツッコミを入れられてもおかしくありません。そうですね、本当に失礼しました。 前置きこそ長くなりましたが、だからこそ私は「そこであえて船旅ですよ!」と提案しようと思うのです。

1.写真集不要! 肌で感じる【景色の移りかわり】

はい、まずはこちら。出港してちょっとでも港を離れたら、景色の移ろいを実感し始めるでしょう。港町に集っていたタンカーやフェリーが別の姿へ変わっていきます。これは季節や時間帯、気候などにも左右されますが、可能な限り、デッキへ出てみることをお勧めします。私の学生時代の実体験ですが、伊豆諸島付近ではイルカやクジラの群れに出会ったこともありました。北海道の焼尻島、天売島航路では大量の海鳥の乱舞により、島の岩肌が糞で真っ白なんていう、幻想的なんだか残念なんだかよくわからない景色を楽しんだこともあります。あと、九州鹿児島から沖縄方面への航路では、実は穴場とも言われる流星群に出会ったことなんかも。当時横に居たのが野郎でなければ100点のシチュエーションだったような・・・。

2.黙っていてもOK!? 人見知りでもできる【船上交流】

船のデッキに出てみる、ある意味これは基本になります。とは言え、上で紹介した景色なんて気まぐれなもの。気長に楽しむのは船旅の心得ですが、より確かな楽しみ方を望むなら、船での交流に期待してみましょう。酒(飲料)とつまみが有ればなお良しです。次に一人デッキで過ごしている人が、大体デッキに一人は居る(あくまで筆者の主観的な意見です)ので、そっと近づきます。これが基本姿勢です。あとはひたすら寂しそうな表情を浮かべる、これが重要。これでおよそ5割くらいの確率で話しかけてもらえます。(あくまで筆者の主観的な意見です)しばらくして、無理だと感じ始めたら、場所を変えましょう。対象が違えど釣りみたいなもんです。あえてデッキに一人で出てくる人は、えてして少しい寂しいそうです。私はこうしてビールをご馳走になり、こうして宗教の勧誘を受け、こうして彼女ができました。

3.寝てるだけ! 力士でも味わえる【到達感】

「船は酔うんだよ・・・」という方、ご安心ください。もうそうなったらいっそ寝てしまいましょう。船にもよりますが、走行距離の短い高速船を除けば、たいがいの船は2等客室と呼ばれる毛布1枚程度の広さが与えられたスペース(難民部屋)があります。多くの人は船に酔う前に酒に酔います。どうせ酔いと戦うなら、気持ちが良いに越したことはありません。人によってはしばらく吐き気を伴うかもしれないですが、そうなったら寝てるだけ。あとは船が島へと連れて行ってくれます。そうして時間を掛けて、酔いが峠を越える頃、船は到着しているでしょう。道中は苦とも楽ともとれますが、文字通り峠を越えて得られる到達感はもはや登山の如し。船を出て島へ足を一歩踏み出す気分は、山の頂上へたどり着くそれと同じと言っても過言ではないでしょう。(あくまで筆者の主観的な意見です)食べて寝て太ることが仕事と言われる力士でも、これなら楽しめます。

 さて、ここまで船旅の魅力について紹介いたしました。国内では乗船時間が2時間以上、中には10時間以上にも及ぶ離島航路がまだまだ多く存在します。だからこそ、声高に言いたい。

 移動を移動と捉えるか、いっそアトラクションか何かの一部だと信じ込むかは自由だと。