300年の時を経た湧水を汲みに行く

住宅地や農地といった様々なところに水汲み場が

三島は水の都。まちを象徴する源兵衛川を中心に市内の至るところに水辺がありますし、湧水ポイントの水汲み場では美味しい水を飲むことができます。

普段この周辺で生活している中で、癒やしの場所として利用する機会も多いです。これほど恵まれた水環境は全国的に見ても中々ないと思いますし、大きな魅力だと感じています。休日はタンクを持参し、水を汲みに出かけることも。

静岡県東部全体で見ても、富士山の雪解け水が湧き出る場所が広範囲で点在。例えば三島のお隣・清水町の柿田川は有名ですし、富士市の東部(吉永・原田・今泉地区)は「泉の郷」と呼ばれ、水と親しめる公園等の整備が行き届いています。

沼津の湧水

三島と複数隣接している市町のうちの一つが西隣にある沼津です。

正直あまり湧き水のイメージはありません。隣接している市町のイメージが強すぎて、なかなかアピールしづらいということもあるのかも。「水系」だと海や港のイメージが先行しすぎているからなのでは?とも思っています。

ですが、実は沼津駅周辺の市街地からさらに西に向かうと湧水ポイントが豊富なのです。(100箇所以上あるそう)市街地に湧水場所が点在する三島のようにアクセスが良好ではない場所が多いのですが、一部まちの中心にある場所も。

例えばJR東海道本線の原駅から徒歩2分ほどの距離にある水汲み場です。

こちらは江戸時代中期から始まった歴史ある造り酒屋さんの湧水。旧東海道沿いにあったため、多くの人々がこの水を利用したのでしょう。今も「富士山の霊水」を汲みに訪れている人が絶えません。(実際汲みに行ったこの日も私のすぐ後に別の方が汲み始めていました。)

この水が湧くようになるまでの過程に少し変わったエピソードもあります。
明治後期になって、この霊水のために当時の人々は地層を掘っていったのですが、地下150メートルの地点で岩盤に突き当たってしまったそうです。そこから先に使用したのがなんとダイナマイト。爆発させることで1日3センチずつ掘り進めたのだとか。

富士山の湧水とは

富士山の湧き水の由来は雨や雪。

富士山には、年間約22億トンの雨や雪が降り、蒸発散を考慮すると日量約450万トンの水が地下水として蓄えられていると考えられています。 地下にしみ込んだ水は、長い時を経て、麓の何層にも重なった溶岩の隙間から地表に湧き出し、 清らかな湧水として、また、井戸水として私たちの生活を潤しています。

引用元:ふじさんネットワーク

この「長い時」とはどのぐらいの年月なのでしょうか。

富士山には、最初に「小御岳(おみたけ)」が出現し、その後に古富士、併せて双子山、それが地殻変動により一つの山「不二山」となり現在の形になったという歴史があります。原形の小御岳が一番下になりその上に何層にも重なっている中で、富士山の湧き水にはいくつか種類があるのだそう。

大きく分けると、
1.表流水(30~50年)
2.古富士上層水(80~100年)
3.小御岳上層水(180~200年)
4.小御岳下層水(300~330年)

この年数は富士山に降った雪雨が湧水となるまでの浸出の年数です。富士山で最も深い地層から湧き水になるまでは最長で330年。

ちなみに先ほどご紹介した造り酒屋さんの湧き水は「4.小御岳下層水」にあたるものだとされています。(市内にある大瀬崎に湧く水も同等の歴史を持ちます)300年以上も前に降った雨や雪が由来している水を現在飲めることを考えるとなかなか神秘的です。

水汲みの注意点

汲む水の安全性については自分で判断する必要があるのですが、現状は地域内で情報を得たり、利用者が多いことを判断材料とするとしか方法がありません。水を汲みに来ている人に話を聞いてみることも一案です。

また、管理している方のご厚意によって水が汲めるということも忘れないように。ルールを守って今後も湧き水に癒やされたいと思います。