伝統的な夏休みの「取組」

毎年お墓参りの後に海岸を散歩すると、あの行事を思い出すのです。

地元で毎年行われている小学生を中心とした夏休みの一大行事が、今年は中止になったことを知りました。

それは、なんと100年近く続いている伝統的な行事。残念ながら、新型コロナの影響により、やむ無く中止を決断されたそうです。

もちろん私が小学生だった6年間は毎年参加していました。その時のことは今でも覚えています。

ラジオ体操でも、水泳教室でも、花火大会でもありません。
その行事とは、、、相撲大会です。

大会は、地元にある神社の奉納に際し8月の下旬に行われます。現在は、子供の減少が影響し、大会の形式に変更点もあるようですが、私が参加した時代は、学年別のトーナメント戦、町内会対抗の団体戦があったと記憶しています。(さらに昔は青年や中学生の部もあったようです)

大会の数週間前になると、海岸堤防の近くに土俵が作られ、当日はそれを囲むように町内会別の応援エリア(仮設テント)が配置されます。地区の子供やその家族だけでなく、役員から近所のおじいちゃんおばあちゃんまで、様々な人が観に来られるため、当日は大盛況。

学年によっても人数は前後しますが、1学年につき20名ほど参加する学年別のトーナメント戦。中でも、最上級生のトーナメント戦は大会の最後に行われるメインイベント的存在(大関戦と呼ばれる)です。

下級生からは憧れの眼差しで見られますし、大人は同じ町内会に住む子どもをこれでもかというほど、声を出して応援します。決勝戦は観戦者全員が勝負の行方を見守る大舞台です。

厳しい稽古

力士を志さない限り、観衆の前で相撲をとるのは、この6年間でしか経験できないこと。やるからには、もちろん優勝、一つでも多く勝ち上がることを目標として、練習(稽古)に熱が入ります。

ちょうど今ぐらいの時期でしょうか。8月に入ると、浜に仮設の土俵(複数の土嚢袋に砂を入れて円を作る)を設け、そこで夕方の稽古を行います。期間は2~3週間程度でした。

稽古では子ども会の父兄が教えてくれます。私の町内には、柔道一家のお父さんがいたこともあり、比較的厳しく教えられたと思います。

暗黙の了解か、大会は突っ張りや張り手は禁止とされているので、廻しの取り方が重要になります。廻しを取るための駆け引きや腕の使い方、腰を落として、間合いを取り、相手を投げるまでの一連の流れなど。日が沈み暗くなるまで、特訓が行われます。

基本的には子ども会単位で稽古が行われるのですが、稀に複数の子ども会合同による稽古もありました。こうした厳しい稽古を経験し、大会に臨むのです。

稽古の甲斐もあり、実は6年間のうち、トーナメントで優勝した経験が一度だけあります。今でも当時のことは忘れません。というのも、記憶が正しければ、あれは準決勝のことでした。私より体が大きく、空手を習っていた同級生が相手。力関係を考えると、相手の勝利が妥当です。

案の定、すぐに土俵際に追い込まれ、見事投げられたのですが、運良く相手の足が先に外に着いたことが協議によって認められました。(その相手には6年生の時にリベンジを果たされました)

決勝はその勢い(?)のまま、寄りきりで勝利。たったこの一回の経験でしたが、祖母が近所の人に自慢していたことを覚えてます。

地域のつながりを感じる行事

大会の進行は、相撲のしきたり・文化に出来る限りあわせています。

取組はふんどし姿で行われ、服は着ません。男子しか参加資格はありませんし、当時は参加しないという選択肢はなかった(半強制的)ような気もします。

今の時代に適さない要素も含まれるとは思いますが、振り返ってみると、なかなか地域のコミュニケーションを築く上で大切な行事なのかなと捉えるようになりました。地域内のつながりは当時と比べて薄くなっていますし、行事も減りつつある現代において、このような伝統行事はさらに貴重な存在になるかと思います。

今後の状況次第でどうなるかわからないものの、個人的にはずっと存続してほしい行事です。