最重度の知的障害を伴う自閉症の娘は、隣の市にある特別支援学校に通っています。朝は最寄りの駅からひと駅電車に乗ります。駅のすぐ前にスクールバスのバス停があるので助かります。
徒歩も電車もママが付き添います。そのあとちょっと遅れて「尾行」のような形でわたしがついていきます。かつての娘は今よりもパニックになることが多く、ママに強い力でしがみついたりママの服を噛んだりすると身動きができないので「もしも」の時に備えてわたしが少し離れてついていくようにしていました。
なぜ「一緒に」ではなく「少し離れて」なのかというと、小さい頃の娘にとってわたしは「困ったらおんぶしてくれる人」だったから。
時間の決まった移動などのやむを得ない状況以外でもわたしがその場しのぎや甘やかしによって簡単におんぶしてしまったことが多かった(反省)ため、わたしを見るとすぐおんぶしてくれると思ってしまうのです。
そのため電車では隣のドアに立ち、歩いている時は少し離れて後ろからついていきます。
今も「尾行」する理由
うれしいことに最近の娘はパニックもめっきり減り、おんぶをせがむこともほとんどなし。駅でわたしの姿を見ても近づいてきたりしません。
ただし体が非常に大きくなったため万が一何かのきっかけで暴れ出したりしたらママも娘もすごく危険、ひょっとしたらまわりの方にも危険が及びかねません。ということで今でもわたしが後からついていきます。
もしものパニック対策のほかに後ろからついていくわたしがもうひとつ気をつけなければいけないことがあります。それは「娘は靴が脱げてもそのまま歩き続けてしまう」ことです。
感覚鈍麻(どんま)とは
これまで娘について「気圧の変化に弱い」「苦手な音がある」「爪を切らせてくれない」などのことをご紹介してきました。これは自閉症スペクトラムの子のひとつの特徴である「感覚過敏」なわけですが、それと反対に娘は「ある感覚について人より鈍い」点があります。これを「感覚鈍麻(どんま)と言います。
「過敏」と同様に「鈍麻」の種類も人によってそれぞれです。味の違いがわからないとか、特定の音が聞き取りづらいとか。夏なのにやたら厚着していたり、冬なのに薄着だったりする子を見たこともあるのではないでしょうか。
実に様々な「感覚鈍麻」がありますが、これまた感覚過敏と同様に「なぜそうなのか」具体的な仕組みはわかっていません。
娘の場合
娘が「感覚鈍麻なのでは?」と思い当たることのひとつとして「あまり痛がらない」ことが挙げられます。多動性が激しく注意力がおろそかな娘は、学校でしょっちゅう転んでヒザ小僧に傷を作っていますし、外でも家でもしょっちゅう手足を何かにぶつけてアザを作っています。
なかなか切らせてくれず伸びた爪をどこかに引っかけて一部剥けてしまい血が滲んでいることも。でもそれらを気にするようすがほとんどないのです(ぶつけたりした瞬間は「アー!」って叫んだりしますけど^_^)。
そして「靴が脱げてもそのまま歩き続けてしまう」件。多くの場合は片方の靴だけ脱げています。高さのバランス的にも歩きづらいだろうに、脱げても「気づかない」のか「気にしない」のか。娘はそのまま歩き続けてしまいます。
付き添いが親ひとりの時、娘が急に車道へ飛び出そうとしたり親を車道側に押し出そうとしないようになどなど気を張って歩いていると、足元への注意がおろそかになってしまい、靴が脱げていることに気づきにくいのです。
その結果、親切な方が「靴が脱げてますよ~」と追いかけてきてくださったり、家に着いてから玄関で「あー靴が片方脱げてた!」と気づくのです。途中の道路に落ちている時もあれば放課後等デイサービスから「駐車場に靴が片方落ちてました」と連絡が来たこともあります(砂利の駐車場なのにそのまま歩いたことになります)。
ひどい時には朝の支度に焦ったわたしが娘に靴を履かせること自体忘れてしまったことがあります。娘は両足とも靴下だけだったのに、何の違和感を訴えることもなく家から徒歩2分の駐車場まで一緒に歩いたのです。しかもその日は大雨だったんですよ!
どっちもあるしどっちも困る
娘が「気圧や音に敏感」な反面「靴が脱げても平気」なように、あるひとりの子は「すべての感覚が過敏・あるいは鈍麻」なのではなく、両方の面があります。
もう少し細かく見ていくと、娘は「靴が脱げても平気」ではありますが「素足では絶対に靴を履かない」のです。つまり、こと「足の感覚」ひとつについても「鈍麻と過敏が混在している」わけです。不思議ですねえ…。
また、うちの娘が「あまり痛がらない」からといって、それは決していいことではありません。本当は何らかの治療をしないといけない時に痛がってくれないと大事に至るかも知れないからです。
同じように「冬でも薄着にしたがる子」がまったく平気そうに見えても実際には体が冷えていくので、とうぜん体にはよくありません。
あと「疲れたことが自分でわからない子」もいます。気をつけないと命の危険に関わることだってあるかも知れないため注意深く見守らないといけない独特の感覚。感覚過敏と感覚鈍麻の両方があることを知っていただけたらうれしいです。
下の写真の通り、娘は寒風吹きすさぶ今朝もスカートの下のスパッツをまくり上げていました(^_^;)。