藤の花を食べてみた

数年前のゴールデンウィーク、おばちゃんを訪ねて福島県へ遊びに行った時のことです。山に自生している藤の花が、高い木をつたってとても高いところにまで咲いているのを見て「うわーキレイ」と騒いでいたら、おばちゃんがこう言いました。

「あれはダメだ、咲きすぎだ。もうちょっと小せえのがうめえんだ」

(???いまおばちゃん「うめえ」って言ったよね???)と顔を見合わせた私と妻、そして妻の姉妹。そこで妻が

「へ?藤の花って食べれるの?」

と聞くと、おばちゃんは

「静岡は食べねえの?おいしいんだよ天ぷらで食べて。ちゃんと花の香りがするよ」

というではありませんか。なんでもおばちゃんの住む地域では藤の花を天ぷらにして食べるのはごく普通のことだそうで、その後も山道で藤の花を見つけるたびに「あれはおいしそう」「これは大きすぎる」などとつぶやいています。

そこでインターネットで調べてみると、全国には藤の花を天ぷらにしたり、おひたしにしたり、サラダに散らしたりして食べている人が結構いることがわかりました。

フジストーリーは、突然に。

残念ながら福島滞在中に食べる機会はなかったので、この話だけを持ち帰り、近所のいくつかの料理屋さんで紹介すると、一様に「へえ~!聞いたことがないです!やってみたい♪」との反応。うちの地元では料理人さんでも聞いたことさえない話だったのです。

それ以来、チャンスさえあれば食べてみたいと何年も思っていた藤の花。するとことしのゴールデンウィークに突然「その時」は訪れました。

墓参りの途中、山道の脇の荒れ放題の林から路肩にまでハミ出た木に絡まって自生している藤の花をわんさかと発見したのです。

すぐにクルマを停め「すみません!ちょっとだけいただきます!」と山の神様にお詫びをしていくつかの房を枝から外し、大事に家へ持って帰りました。

日本の色。自然の色。美しいですね。
まわりにもたくさんありました。この時点で「おいしそう」とは思えませんが…。

いかに色を残すか

数年来の念願が叶った妻が張り切って料理を開始。とにかく気を使ったのは「いかにして花の色を残すか」ということです。衣を薄くし、火を通しすぎないよう細心の注意を払って揚げます。

いかにも繊細そうな藤の花。「ちょっと油断した!」と妻が悔やむように、ほんの少し火が通り過ぎたようで、いくぶん色がくすみました。

食べてみると…

揚げたて熱々の藤の花(という表現自体が新鮮*^^*)に塩を振り、房ごと持ち上げ、花の部分だけをそぐようにして食べてみると…

これはおいしいです♪サクサクとした歯ざわり、そして最後の方でほのかに甘い香りが広がります。

まだ咲き切らない花の部分だけを集めて「かきあげ」にすることもあるようで、それもおいしいだろうなと想像できます。山菜の天ぷらはちょっと彩りが少ないので、その中に藤の花があると見た目にも美しいでしょうね。

藤の花を食べること。これを春の楽しみすることに深く納得しました。山の藤をみて「おいしそう」とつぶやくおばちゃんの気持ちがわかります。

今回は山道にハミ出していたものを摘み取ってきましたが、本来、山のものをいただくには地主さんの承諾を取るのが筋。

来年はおひたしもサラダも試したいので、伊豆の山に住む友達数人に片っ端から「藤の花、生えてない?取らせてくれる知り合い、いない?」と聞いて回り、正々堂々と20房ぐらいもらってこよう、そう思うほどステキな食べ物でした。