陸前高田の新しい町への動きを目の当たりにできる場所

「一本松は恥を知れ」「一本松なんか見たことないもんね」と少々過激な言葉で、「もっと陸前高田の本当のいまを見てほしい」と伝えた人たちが推薦してくれた陸前高田のビューポイント。ひとつは高田の町の背後に聳える氷上山。さすがに標高874メートルの山に登るのは大変だという人には、「本丸公園もいいよ」と教えられた。

本丸公園はかつての陸前高田駅の駅前通りの突き当たりにある高田城址からつながる小高い丘。この場所に立つと、建設中の陸前高田の新しい中心市街地が目の前に広がる。

2016年12月

新たな中心市街地の中核施設となる建物の建設がどんどん進んでいる。撮影したのはふつうなら現場が休みの日曜日だったが、うっすらと雪化粧したかさ上げ地での工事は進められていた。

陸前高田の新しい市街地は14メートル近くかさ上げされた場所で進められている。下から見上げても見えないし、かさ上げ地に造られた仮設の道路は道幅が狭いので路肩に駐車して工事の進捗を見るのも難しい、というか工事の邪魔になるからそんなことはできない。徒歩で現場に近づこうとすると、猛烈な砂埃で服が土色になってしまうほど。

しかし、本丸公園の高台からは新しい町が形づくられていく過程を見下ろすように見ることができる。

津波の被害を受けた後、持ち主が自主的に保存を決めた米沢商会さんのビルも見える。海岸線の防潮堤やその手前の道の駅タピック45も望める。

建設工事が最優先といった雰囲気の陸前高田の町なかにあっても、この場所からは町のいまをつぶさに目にすることができる。時々登れば町の変化も見て取れる。

2016年9月

9月中旬の時点では、まだ建物の建設はほとんど始まっていない。巨大な排水溝の材料となるブロックが並んでいた。

2016年11月

11月には建物の足場が組まれていた。この頃はまだ、まちづくりワークショップで3月には中心市街地の施設がオープンするという話を聞いても半信半疑だった。道路すら仮設なのに、数カ月で市街地ができるなんて考えにくかった。

ところが1カ月も経たないうちに、建物の屋根の部分まで見えるようになってきた。被災した別の町で聞いた「建ち始めるとあとはすぐなんだな」という言葉が現実味を持って思い出される。

陸前高田でも本当に新しい町ができるんだ。それはとても新鮮な感覚だった。

本丸公園は陸前高田の変化が目の当たりにできる場所。この町を訪れる機会があったなら、奇跡の一本松だけでなくぜひこの場所から新しい町を見てほしい。

本丸公園

しかし、ここから見えるのは、ハードとしての町でしかない。人と人のつながりによって形づくられていく「本当の町」の姿を知るためには、新しくつくられていくこの町で生きていくことになる「人」に出会わなければならない。

ビューポイントとしての本丸公園を推薦してくれた陸前高田の人たちは、その点でもアドバイスしてくれた。

陸前高田には「しゃべる店主がいる店がたくさんある」と。いまはまだ、新しい町から離れた場所の仮設店舗で商売している人が多いが、これから新しい町に出店を予定しているお店を訪ねれば、これまでのこと、新しい町のことなど貴重な話をたくさん聞かせてもらえるだろう。

新たな中心市街地のイラストマップ