【シリーズ・この人に聞く!第127回】LGBT初級講座「まずは、ゲイの友だちをつくりなさい」著者 松中権さん

「LGBTと、いろんな人と、いっしょに」を合言葉に、セクシュアリティを越えてすべての人が自分らしく歳を重ねていける社会づくりを応援する認定NPO法人「グッド・エイジング・エールズ」を2010年に立ち上げた。真面目だけれど楽しそうに活動を拡げる姿に共感する人が年々増え続け、毎夏恒例となった「カラフルカフェ」@葉山は、今や人気スポット。広告会社に勤務するスマートなゴンさんに、活動の意義と、これまでとこれからについてお聞きしました。

松中 権(まつなか ごん)

1976年、石川県金沢市生まれ。認定NPO法人「グッド・エイジング・エールズ」代表。一橋大学法学部卒業後、株式会社電通に入社。海外研修制度で米国NYのNPO関連事業に携わった経験をもとに、2010年、NPO法人を仲間たちと設立。『LGBTと、いろんな人と、いっしょに』を合い言葉に、セクシュアリティを越えてすべての人が自分らしく歳を重ねていける社会づくりを応援する。13年、米国国務省主催の「International Visitor Leadership Program」の研修生に選出され、全米各所でLGBT関連の活動団体や政府系機関のリサーチを実施。14年10月、NPO法人が東京都より認定NPO法人の認定を取得。現在も電通に勤務しながら、一般財団法人「mudef」の理事も務めている。第7回若者力大賞ユースリーダー賞(公益財団法人日本ユースリーダー協会)受賞。

人と違うことに偏見を持たなかった。

――新書「まずは、ゲイの友だちをつくりなさい」というタイトルが衝撃的で、読み始めたらおもしろくって思わず一気読みしてしまいました(笑)。ゲイのお友達は私の周りにもたくさんおりますが…この本を出されて反響はいかがですか?

タイトルがSNSで炎上しました(笑)。LGBTコミュニティの方々から、LGBT初級講座としているのに「まずは、ゲイ」とはナニゴトだ?と。『ゴンちゃんのことは好きだけど、このタイトルは許せない!』とメールを送ってくださった方も。いろいろ考えたタイトル案の中で、最終的に編集者の方と相談して決めたわけなんですけどね。他にも「となりのゲイリーマン」とかもありましたが、こちらは、巡り巡って、別の雑誌の連載コラムのタイトルとして復活しました。

保育園年少組の頃。無邪気に県民プールで遊ぶゴンさん。

――タイトルってどんな人に読んでほしいのか?思いをねじ込める部分ですよね。

編集者の方と何度も打ち合わせをして、LGBTに偏見をもっているのは40~50代のサラリーマンが多いので、そうした方に東京~新大阪間の新幹線の中でビールとスルメを肴に、ライト感覚で読めるようなLGBT啓発本を…という思いで言葉を選びました。女性は社会でいろいろな経験を踏まえているせいか、こうしたテーマについても理解がはやい。男性の場合はうまれてから疑いもなく男性で生きてきたので強い偏見をもちやすいのです。

――おっしゃる通りですね。ゴンさんは昔から「人と違うこと」に偏見をもっていなかったのも大きな原動力になったのでは?

周囲に恵まれていたのはラッキーでした。著書にも登場しますが母の弟よっちゃんは少し障がいを持っていました。言っていることの7割はわからずに「なんか変。怖い」と思ったこともあります。でも、周囲の大人たちは普通によっちゃんと接していて「なるほど。みんな理解していないけれどこうするのか。いや、理解しようと思えば、何となく伝わってくるぞ」とか、よっちゃんにぶたれてぶち返すとうれしそうにしていることとか、コミュニケーションを子どもながらに学んだ。それと僕の通っていた金沢大学附属小学校近くに養護学校がありました。同級生はそこに通う子に対して「なんか気持ち悪い」と言うのを僕は内心モヤモヤしながら聞いていた。よっちゃんが家族にいてくれたからこそ、幼少の頃から「いろんな人がいていいんだ」と学んだ原体験は大きかったです。

――身近な存在から教えてもらうことは多いですよね。金沢大学附属小学校に通っていらしたのもユニークですがご両親は教育に対して特別な思い入れがあったのですか?

父は金沢大学で音楽の教師をしていたので、むしろ自分のテリトリーに子どもが入って来るのは嫌だったと思いますね。近所のお子さんが金沢大学附属小学校を受験するので一緒にしようと誘いを受けたのが受験のキッカケでした。テストと言ってもボールを使った遊びとかそんなので、最終的にくじ引きで当選。でも金沢大学附属小学校は実験校だったらしく、学力ではない何かをセレクトしていたようで変わった教育方針でした。その頃から僕のことも見抜かれていたのか(笑)は謎ですが、この学校のおかげで不思議な発想もできるようになったのかもしれませんね。

薄いオブラートで壁を作り、バレないようにする。

――高校生まで金沢で過ごされ淡い恋愛も経験…。大学生活で、女性ではなく男性しか愛せない自分に気づかれた?

大学生の頃を振り返ると皆楽しそうに思い出話をします。僕も楽しかったのですが、その頃はまだどこかで「男性を好きな自分」を認められなくて、バレないように過ごしていた。いってみれば薄いオブラートで壁を作っていたので、誰かとぶつかって熱い討論を交わしたこともなくて。自分のポジショニングもよく観察して見極めていましたがカミングアウトするなんて発想はなく、ゲイだとわからないよう、さらっとほどよい距離感で相手を遮断していました。

左は6歳上の兄、真ん中は2歳下の弟、右が6歳頃のゴンさん。チェックの服が大好きで初めて買ったレコードもチェッカーズ!

――なんでも要領よくこなせそうな印象のゴンさんですが、子ども時代の習い事は何かされていましたか?

そろばん塾はすぐ辞めました。続けていたのはバイオリンです。父が先生でもあって「自分のやりたいことをやりなさい」というのが基本ポリシー。両親から勉強しろとか宿題しなさいと言われたことがありませんでした。バイオリンは家の中にレッスン室があって他の生徒さんと同様にその部屋に入ると「先生と生徒」の関係でした。小学1年生から中学1年生まで続けていましたが、中学生になってから、楽器を演奏できる男子は女っぽいイメージがあって辞めました。つまり「こっち側にいるのは危ない」…というサインをキャッチして。辞める時も父からは特に何も言われず「それは生徒さんの選択だから」という感じでしたね。小学生時代に一番得意だったのはゴム飛びです(笑)。

バイオリン教室の発表会で。本番直前に練習を始めて帳尻を合わせるタイプだったとか。

――遊びも女子力発揮!でも、そういうご自身のことをカミングアウトするまでに時間が掛かったのですね?

兄が仕事の関係で精神的に参っていた時、僕は大学5年生となりこれからオーストラリアへ留学する頃でした。医者からは『家族が支えてあげてほしい。いろんな話をしてあげて』というアドバイスを受けたので、この機会に兄には話そうと決め、正直に伝えました。意外なほど冷静に受けとめて『体には気を付けるように』と。両親に言うのはまだ早いと判断して、ずっと黙っていた。その後、弟にも話す機会をもちましたが、弟も冷静に『言ってくれてありがとう』…と。両親へ話すことができたのはつい4年ほど前のことでした。

――カミングアウトへの道のりは著書を詳しくお読みになって頂くとして、ゴンさんの観察力は小さな頃から培われてきたのですね。

サバイブするためのスキルでした。僕の通っていた学校にも少なからずイジメがありましたが、いじめる側いじめられる側、先生、みんなと仲が良かった。それがゲイである自分を守る術でした。バランス感覚を考えていたわけではなく、自ずとそうなった。ゲイって学生時代に生徒会長をやってきた人が多い。僕もそうですし、周りに知る限り10人位います。男女ヒエラルキーの外にある存在だからです。リーダーシップをもって皆をまとめたいというより、皆と仲が良いのは自分を目立たない「無の存在」にするための手段。だから積極的に挙手をしてなるというよりも、そういう流れをなんとなく作っていた。生徒会長は誰にも触れられない、サンクチュアリのような存在でした。

いくつになっても親は子どもの幸せを願う。

――ゴンさんにとってお母様はどんな存在でしたか?

躾的なことは厳しかったと思いますが、○○しなさい…といわれたことはないです。母は僕が小さな頃は、保育専門学校の教師として働いていましたが、僕が小学3年生頃に何かあると吐いてしまう自家中毒症状になって、それをきっかけに母は仕事を辞めて家に居るようになった。帰宅するといつも居てくれる安心感はありました。まあ、だからといって密接な会話をしたこともありませんでしたけれど。

葉山で6年目となるカラフルカフェ。昨年からは海の家ともコラボをスタート。

――ご両親共よりよい理解者なのが素晴らしいと思います。ゲイであることをオープンにして何が変わりましたか?

何かが劇的に変わったというのは明確に言語化できませんが、明らかにカミングアウトしていなかった頃には戻りたいと思わない。35歳頃までずっとゲイでいることを伏せて生きてきたのが生活の一部で、ストレスも感じず、むしろ当たり前の作業。意識してカバーせねば…ではなく、反射神経のようにカバーしていた。でもオープンにしてからそれらを振り返るとかなりストレスフルだったなぁ…と思います。

――自分の子が同性を好きになる可能性だってあります。もし身近にカミングアウトできないままの人がいたら、どんな見守り方をするのが良いのでしょう?

いつだって親は子どもの幸せを願うものです。でも、自分の思い描く「幸せ像」を重ねないようにすること。アメリカではレズビアンやゲイカップルの間で育った子どもはコミュニケーション能力が高い…という調査結果もあります。皆が支え合っているのを傍で感じてきたからでしょう。「同性愛は幸せではない」という思いこみはやめて、セクシュアリティを取って幸せを考えてみてほしいです。

――真実を突く視点です。では最後に著書「まずは、ゲイの友だちをつくりなさい」を読んで一番伝えたいメッセージをお願いします。

幸せのカタチは自分が経験しないとわからないもの。体験からしか学ばないものですが、意識的にそうではない幸せのカタチも捉えていかないと、世の中は変わらないです。想像する力を人間は授かっているので、それを使ってイメージして当たり前だと思っていることをもう一度考えてみてほしい。「結婚しなければならない」「子どもをつくらなければならない」という親や社会からの期待に、LGBTは現状の日本では応えられない。縛られるところから抜け出して、ゼロだからこそ新しいカタチをつくっていけるのではないかと思います。

編集後記

――ありがとうございました!ゴンさんのコメントで一番心に残ったのは「自分の思い描く幸せ像を重ねようとしないで」という言葉。親子の場合はセクシュアリティに限らず、子どもに過度な期待をしていないと思っていても、身近にいると「もっと真面目に!」「もっとしっかり!」…と気づけば『もっともっと!』と追い立てていることが多い。その子が元気で幸せなら、それでいいんだ…と丸ごと認めることが理解への第一歩なのだ、と自戒の念を込めて感じました。ゴンさんの掲げるゲイ能力とは、いわばコミュニケーション能力。ちょっとずつこうした性的マイノリティの立場にある人から、「伝える」ことが自然になると、世の中がもっと良い空気に変っていく気がします。秋にはNHKでLGBTテーマの特集番組がオンエアされるそうです。これからますます注目されるLGBTの時代へ。ゴンさんの活動も応援しています!

取材・文/マザール あべみちこ

活動インフォメーション

活動情報
「オン・マイ・ウェイ!」NHK・Eテレ
2016年10月14日(金) 午前9:40~9:50放送
2016年10月21日(金) 午前9:40~9:50放送(再放送)
※HPでの動画配信もあります。