次なるテロへの備えか、ベルギーの原発から作業員が避難

iRyota25

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国の警戒レベルが最高の4に引き上げられる中で

Nuclear power plant of Tihange, Huy, Belgium
Nuclear power plant of Tihange, Huy, Belgium

commons.wikimedia.org

テロ攻撃を受けたベルギーの首都ブリュッセルから車で約1時間の場所にあるティアンジュ原発で、従業員が避難していると報道されている。地元メディアVTMによると、避難を行っている理由など詳細は不明とのこと。ロイター通信やイギリスのタブロイド紙ミラーなどが3月22日深夜(日本時間)伝えた。

多くの社員は避難したものの、サイトに残った一部の主要スタッフにより、原発は稼働しているという。

ブリュッセルでのテロに続いて判明した原発からの避難だったため、テロとの関連が取り沙汰されている。大規模な避難訓練ではないかという観測もある。

オランダのニュースエージェンシーBNOは、地元警察が「原発の全職員が避難の過程にある」と告げたことを伝えている。

デイリーエキスプレスのWEB版は、避難が行われているのはティアンジュ原発だけでなく、アントワープ近郊のドエル原発でも同じだと報じた。ティアンジュ原発には3機の原子炉が、ドエル原発には4機の原子炉が稼働しているという。避難はベルギー当局の要請によるもので、原子炉の警備には武装警察と軍が当たっている。その措置はすでに週末から始まっていたともいう。

ベルギー当局による「次なるテロへの措置」という発言も伝えている。

ドエル原発
ドエル原発

commons.wikimedia.org

原発の対テロ特別警戒は先週末から実施されていた?

原発がテロの標的として攻撃された場合、深刻なシビアアクシデントを招きかねない。福島第一原発の事故では、炉心を冷却する術が失われていく中、多くの作業員が次善の策を模索し、原子炉を冷却するために奔走したという。万が一、ベルギーの原発が大きな損害を被った場合、ダメージコントロールは円滑に行えるのだろうか。現場を熟知した作業員を帰宅させて大丈夫なのだろうか。あるいは原発で働く作業員の中にテロリストが紛れ込んでいる可能性が疑われているのか。さまざまな不安が頭をよぎる。

ティアンジュ原発とドエル原発を運営するエンジー社(フランスのエネルギー大手)の子会社エレクトラベル(ベルギー最大の電力事業者)が保有する原発は7機。

ワールド・ニュークリア・アソシエーションの資料によると、それぞれの原発の出力と発電開始年は以下のとおりだ(いずれも加圧水型原子炉:PWR)。

ティアンジュ1:96.2万kW(1975年)
ティアンジュ2:100.8万kW(1982年)
ティアンジュ3:105.4万kW(1985年)
ドエル1:43.3万kW(1974年)
ドエル2:43.3万kW(1975年)
ドエル3:100.6万kW(1982年)
ドエル4:104.7万kW(1985年)

 Nuclear Power in Belgium | Belgian Nuclear Energy - World Nuclear Association (Updated 8 December 2015)
www.world-nuclear.org  

日本の原発と同様に、古くて出力が大きい原発が多いのが気にかかる。

ティアンジュ原発とドエル原発を運営するエンジー・エレクトラベルのコミュニティページには、エレクトラベル社員のジェローム氏という人物の次のようなコメントがアップされていた。

核サイトで増加警戒レベル

今朝のブリュッセルの出来事を受けて、脅威分析を行う機関が全国の警戒レベルを最高の「4」に引き上げました。当社の核施設は当局の要請により警戒を強めています。通常行っている厳格なセキュリティ対策に加えて、原発施設周辺のゲートは閉鎖され、すべての車両のシステマチックなチェックが行われています。この週末以来、警察は軍とともに我々の2つの核施設に常駐しています。

警戒レベルを4に上げるのに関連して、ユニットの運転に必須の要員を除き、ドエル原発とティアンジュ原発のスタッフにはサイトを離れ帰宅するよう呼びかけられています。プラントの運転に必要な要員はサイトに残ります。

私たちは当局と直接接触しており、その指示に従います。

Phase de vigilance accrue sur les site nucléaires - Electrabel

エレクトラベル社のFacebookには、上記の記事のほか、「ティアンジュは避難していない。要員は残っている」といったコメントも寄せられている。

少しずつ情報が増えつつあるものの、同じニュースソースの使い回しが多く、いまだに詳細は不明のままだ。

しかし、避難報道が事実だとすると、ティアンジュ原発等に対するテロのリスクは具体的かつ切迫したものだったと考えざるをえないだろう。確実性の低い情報を頼りに大規模な避難行動が行われるなどありえないからだ。また、避難行動や武装警察や軍による警戒行動が先週末、つまりブリュッセルでのテロ以前から実施されていたという話も、テロのリスクの「確実性」を示すものだ。

ベルギーはフランス、ドイツ、オランダ、ルクセンブルク、そして海を隔ててイギリスと隣り合い、EU本部のほか欧州議会やNATO本部があるヨーロッパ政治の中心だ。核テロが引き起こされないことを祈るばかりだ。

原子力発電所がテロの標的になる――。ヨーロッパだけの「現実」でないのは言うまでもない。

《ベルギー・ブリュッセルの連続多発テロで斃れた方々に哀悼の意を表するとともに、悲しみがこれ以上拡大しないことを祈ります》

ティアージュ原発

ドエル原発

ドエル原発(Google Mapより)
ドエル原発(Google Mapより)
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