「最も必要なものは水」
女性はきっぱりとそう言いました。今月上旬、宮城県石巻市を訪れた時のことです。先日ぽたるページでご紹介した、日和山のふもとで東日本大震災発生当時の状況について話をしてくださった女性に「震災時に一番必要なものは何だったか」を尋ねた時の答えです。
では、その水をどのように確保したのか。
聞いてみると、飲水は備蓄していた飲料水などを使用し、飲用するもの以外は湧き水を使ったといいます。
女性は地震発生以前から、日和山の中腹に水が湧いていることを知っており、近所の方と一緒に汲んで活用したそうです。
湧き水はそのまま使うのではなく、日本てぬぐいと備長炭を使ってろ過したとのこと。水を濾す際のポイントとして、普段使用している起毛のあるタオルではなく、日本てぬぐいを使った方がいいことを強調されていました。タオルよりも日本手ぬぐいのほうが生地の目が細かく、ろ過能力が高いそうです。
調べてみると、どうやらタオルの生地は吸水性などを高めるためにたて糸の一部を緩めて編んでいるそうです。そのため、見た目以上に生地の目が荒く、不純物などが通りやすいようです。
水は写真の場所で汲んでいたといいます。
女性と話をしていると、湧き水を共に汲んで使用していた近所の男性が現れました。私が日和山を登る際、その男性が一緒に来てくれて取水場所を教えてくれたのです。
実際に水が湧き出ている場所は、小さな砂防ダムのような形をした写真のコンクリートの上、数メートルのところにありました。その湧水地点から山の斜面を流れてきた水をこの場所で汲んでいたとのことでした。
ただ、見るからに取水に時間がかかりそうです。いったいどうやって汲んでいたのだろうと思っていると、それを感じ取ったのか、
「津波で流れてきたトタンを当てて水を集めました」と教えてくれました。これを聞いた時には思わず「なるほど!」と思いました。
しかしさらに、最初はトタンで集めた水を下まで運んでいたものの、そのうちホースで日和山の麓まで引っ張って使っていたという話を聞き、感心に驚きが加わりました。
男性たちは取水した水を日本てぬぐいと備長炭で濾し、さらに煮沸してから使ったそうです。
ちなみに日本てぬぐいがない場合はコーヒーフィルター、ストッキング、クッキングペーパー、ハンカチなどでも代用でき、それに綺麗な小石や炭などを一緒に使って濾すといいようです。また、ろ過をする際、ペットボトルを切って逆さまにし、漏斗のようにして使う方法も役に立ちそうです。
男性たちはこの湧き水の活用以外にも、近所の人と一緒にかまどを作り、津波で流されてきた住宅の木材などを燃やして暖を取るなど、まわりにあるものを活用したといいます。
災害に対して、事前にできることとして防災用品や食料の備蓄がありますが、いざ発生した後は近所の方などと協力して、その時その場にあるものを創意工夫により、最大限活用することの大切さを石巻で出会った二人の話が物語っているように思います。