写真を見終わると、震災とは関係のない趣味などの話で盛り上がりました。しばらく話をした後、私が日和山へ登ろうとすると、「私も一緒に行きます」と男性が言ってくれたので、二人で山の上へ向かいます。
日和山の山頂へ続く長い階段を上りながら、男性は「地震発生からしばらくの間はここに水を汲みに来たんですよ」などといった、震災当日やその後数日の話をしてくれました。
日和山の上に立つと旧北上川や石巻湾が見えます。その穏やかな海は写真で見せてもらった街を襲った同じ海とは思えませんでした。
山の上にある神社に参拝すると登ってきた階段を下ります。
そして停めてある車のところへ戻ると、男性が「もし良ければ蔵を見ますか」と言って、震災の津波にも耐えた立派な蔵の中を見せてくれました。蔵を見た後、男性に御礼を言って別れました。
当初、石巻の後は東松島市にある神社や宮戸島へ行く予定でした。しかし、寄ってから今日の宿泊地の山形蔵王へ向かうと到着が夜になってしまいます。普段ならば別に暗くなってもかまわないのですが、東北に来る前から心配だったのが慣れない雪道での車の運転。明るいうちにホテルに着きたいと思い、石巻から山形蔵王へ直接向かうことにしました。
高速道路に乗って山形蔵王ICへ。宮城県側は晴れていたのにトンネルを越えて山形に入ると雪がぱらついています。慣れない雪道の運転に緊張です。
ホテルに着いたときにはあたりは薄暗くなっていましたが、なんとか真っ暗になる寸前に無事到着することができました。
蔵王に来たのは、火山災害に対する備えについて知りたかったからです。
蔵王は昨年、火口周辺警報が出されて緊張が高まりました。また、噴火が想定されている火口近くのレストハウスに防災スピーカーなども設置されており、火山に対する防災対策が進んでいると思ったのです。きっと火山防災に役立つ実践的な取り組みや備えなどがあるに違いないと考えて訪れたのです。
しかし、チェックインを済ませた後、万が一噴火した場合の避難などについてホテルの方に聞いてみると、「噴火しても山形蔵王には影響がないので検討していない」。とのことでした。別の従業員の方にも聞いてみたのですが同じ答えです。予想をしていなかった回答にびっくりです。
食事を取るとホテルの部屋などから雪景色の写真を撮った後、翌日に備えて寝ました。
4日目
ツアー最終日です。午前中に噴火が想定されている火口付近や、できればその近くに設置されている防災スピーカーなどを見てみたいと考えていました。そしてお昼過ぎ、蔵王を出発して山形駅から三島に帰る予定でした。
しかし、朝起きて部屋の窓から外を見てみると天気がよくありません。
ホテル付近はまだそれほどではありませんでしたが、山の上の方は天候が悪そうです。行くのを止めようかとも思いましたが、前日、火山防災についての情報が得られなかったこともあり、とりあえずロープウェイで山の上まで行ってみることにします。
ホテルをチェックアウトして、蔵王ロープウェイの蔵王山麓駅へ。
ロープウェイに乗って地蔵山頂駅を目指すものの、標高が上がるにつれ天候が悪化していきます。
地蔵山頂駅に着くと、雪に加えて強風が吹いています。おまけに視界は最悪です。行くべきか迷ったものの、とりあえず歩いてみることにします。
視界は恐らく平均で15メートル位でしょうか。比較的良いときはこんな感じですが・・・
吹雪くと2、3メートル先も見えません。1歩先が平坦なのかそれとも傾斜なのかもわかりません。
地蔵山頂駅を出発してから20、30分ほど歩いた地点、恐らく地蔵山の頂上付近まで来て、これ以上行くと遭難する危険性があると判断して引き返すことにしました。
地蔵山頂駅に戻ってくると蔵王山麓駅との中間にある樹氷高原駅まで歩いて下ります。途中にはできかけのアイスモンスターがありました。
樹氷高原駅に到着するとロープウェイで蔵王山麓駅へ。車に戻って着替えを済ませた後、火山防災に何か役立つ情報はないかと思い、お土産を探しつつ火山災害への取り組みなどを尋ねます。しかしここでも、万が一噴火しても影響がないので対策は考えていないという返事でした。
お土産を買うと蔵王を後にして山形市内へ向かいました。
駅前でレンタカーを返却して山形駅へ行くと、東京行きの新幹線は1時間に1本。時間があるのでチケットを購入した後、駅の近くにある山形城跡に行ってみました。
ここが想像していたよりも素敵な場所でした。城跡にはお堀や石垣がしっかりと残っており、復元された門などもあります。当時の様子を頭の中で思い描きます。敷地内にあった山形市郷土資料館にも行ってみました。これも見ごたえがあり、嬉しい誤算です。近くにあるという文翔館にも行きたくなり、新幹線を1本遅らせることにしました。結局、2時間近く山形市内を見てから駅に戻ったのでした。
山形駅から東京行きの山形新幹線に乗り、無事三島に帰ってきました。
今回のツアーの反省点としては、2日目と3日目が慌しく、もっと余裕を持ってスケジュールを組むべきだったと思いました。そうすればもっといろんな話を聞いたり、人に出会えたかもしれません。今回の反省を次回に活かしたいと思います。
ツアーを終えて
今回、東北へ行って震災を体験された方々の話を聞いたり、震災遺構を見ることによりいろいろなことを考えました。
なかでも印象的だったことは、実際に津波を目の当たりにした方たちが
「まさかここまで津波が来るとは思わなかった」
とおっしゃっていたことです。自然の脅威は必ずしも人間が予測できるものではなく、絶対に大丈夫というものは存在しないということを改めて痛感しました。