安倍総理がドイツでのG7サミット終了後の記者会見でこんなことを言っています。
日本は東日本大震災と原発事故を乗り越え、温室効果ガスについて野心的な削減目標を掲げました。
引用元:安倍晋三内閣総理大臣 エルマウ(ドイツ)サミット終了後 記者会見 | 総裁記者会見 | 記者会見 | ニュース | 自由民主党
またしても「?????」です。発言は記者会見の冒頭。温暖化の影響で危機的な海面上昇に襲われているというツバルのソポアンガ首相の先月の発言を引用して、すべての国が参加する温暖化対策の新しい枠組みが必要。世界のリーダーたちと確固たるその方針を確認できたのが成果だ――という、かなり迂遠なストーリー。
言いたいのは、世界のリーダーたち(自分を含む)で話し合えたのが大成果だということ。その例として温暖化を引いたのはいいでしょう。しかし、ただ温室効果ガス削減に野心的に取り組んでいる(実際にはうまくいっていないが…)と言えばいいだけのところに、どういう意図があってか「日本は東日本大震災と原発事故を乗り越え」という文言を滑りこませた。
いや~な予感がします。しっかり否定しておく必要があります。
生活再建も住宅再建もまだなのに震災を乗り越えた?
東日本大震災で大きなダメージを受けた地域の多くで復興の度合いは、ようやくかさ上げ工事の先が見え始めてきたレベル。かさ上げって何かというと、道や建物を建設し、町をつくっていくためのベース。震災でマイナスになったものがプラスマイナスゼロまで復旧する見込みが立ってきたというだけのこと。
各自治体に数カ所程度、災害公営住宅を前倒しで建設したりもしているが、町全体の復旧よりもかなり前倒しで無理して突貫工事して建てたもの。メディアの報道だけ見ていれば、立派な建物ができてよかったねって感じる人もいるかもしれないが、カメラに映っているフレームの外側は、まだ整地の途中の赤土の山というところばかり。
かさ上げはあくまで外見上の復興の進み具合に過ぎないともいえますが、生活基盤の復旧、あるいは再構築についても、いっそう人口減少や高齢化が進む将来に向けての町づくりに関しても、具体的な前進はほとんど見えていません。ここに来て再開発計画が頓挫というニュースも聞かれます。
こんな状態での「乗り越えた」発言。中央政府の方針が「復興はもうこれで十分。あとは知らん」というものだとしたら……と恐ろしくなります。
IAEAから叱責されているのに原発を乗り越え?
「原発事故を乗り越え」との発言に至っては理解の限界をはるかに超越。トラブルで溢れた汚染水は港湾内に垂れ流し。港湾内にブロックしているはずの汚染物質が港湾外まで拡散しているのが現実だし、太平洋にダイレクトに流れ出ている排水口から高濃度汚染水が直接流出してしまうトラブルもしばしば。
原子炉の中にあったはずの核燃料がどこに存在しているのかすら分からず、探査ロボットは高線量のため回収できず現場に放置。5月にまとめられた国際原子力機関(IAEA)の最終報告書では「原発は安全との思い込みが事故の原因」と叱られているにもかかわらず、なぜ言えるのでしょう、「原発事故を乗り越え」などと。
発言はすべて、敢えてアベコベに喋っているとでも考えない限り理解不能。
まだまだある「???」な発言
自由、民主主義、基本的人権、そして法の支配。基本的な価値を共有していることが、私たちが結束する基礎となっています。
引用元:安倍晋三内閣総理大臣 エルマウ(ドイツ)サミット終了後 記者会見 | 総裁記者会見 | 記者会見 | ニュース | 自由民主党
G7結束の理由を強調した言葉です。安保法制をめぐるさまざまな、数々の問題が浮かび上がり、憲法擁護の義務違反まで指摘されているのに言ってくれます。これもアベコベ語というものなのでしょうか。質疑応答では、今回ロシアを外してG7だったのは、ウクライナ問題が自由、民主主義、基本的人権、そして法の支配の理念に反しているからだと示唆。来年は日本がサミットの議長国とのことですが、日本がスポイルされてG6になってしまうのではないとの懸念まで抱いてしまいます。
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そのほかにも、安倍総理はサミットの会議の席上で「原子力を活用する」と力説したとのことだが、首脳宣言にはチェルノブイリを念頭に置いた原子力の安全の話と核不拡散の話しか取り上げられなかったことなど、あまり報道されていないことも多々ありますが、それはまた次の機会に。