拝啓、安倍総理大臣殿「よいプレゼントを」

東北のとある町で、ボランティアさんたちの手で運営されるクリスマスイベントの準備を進めている人たちのフェイスブックページに、こんな書き込みがありました。

「イベントに政治は関係ないように思われがちですが…」

そこに書かれていたのは、来月行われると予想される衆議院議員選挙が、市民イベントに及ぼす思わぬ影響の話でした。

「町のこども達に笑顔を!」との思いで市民ボランティアが集まって進められているそのイベントは、半年以上も前から綿密な準備を進めてきたものなんだそうです。東北に限らず全国的に合併で市域が広がったところは少なくありません。市役所があるような中心街だけでなく、昔ながらの地域にも住民が集まる場所が点在しています。そんな状況の中、市の中心部の1カ所でイベントを開催しても、参加できないこども達が出てしまいます。せっかく楽しいクリスマスイベントなのに、それでは残念です。だからスタッフの人達は一計を案じました。サンタクロースがそれぞれの地域を尋ねて回って子どもたちにプレゼントを手渡したらどうだろう。

実際その方向で準備が進められているそうです。サンタさんのボランティアも全国からの応募が続々集まっているそうです。いい話でしょ。

ところが、ふって湧いたかのような年末の総選挙。選挙の投票場所としては地域の公民館が使われます。半年以上前から計画して、子ども達との交流の場にしようと予定していた施設が、選挙によって使えなくなってしまうかもしれません。雪が降ったり寒波が来たりすると、外でプレゼントを配るのも大変です。参政権という国民の大切な権利であり義務でもある選挙に関することなので、あまり言いたくはありませんが、やはり師走の選挙は迷惑です。

どうしてもという事情があるのならまだしも、この時期に突然選挙をすることになった理由がよく分かりません。景気の問題や難しい政治課題があるから、選挙をやって大負けしないのは今だという判断だろうと解説する人がいます。投票率が下がれば組織票を持っている政党が強いからという説をぶつ人もあります。昨年の12月13日に公布された秘密保護法は1年以内に施行することになっているので、選挙期間にぶつけるつもりだろうという穿った見方をする人もいます。

たしかに「解散」の風評が立っただけで、それまであんなに厳しく政治と金の問題を追及していた声がすっかり鳴りをひそめてしまいましたもんね。バッジをつけている職業政治家の人たちにとっては、国会での論争よりも選挙の当落の方がはるかに優先度が高いということなのかもしれません。マスコミも選挙報道に追われて、何か重要なことをスルーしてしまうことがあるかもしれません。

12月です。日本中のいろいろな場所で、さまざまな楽しいイベントの計画がずっと前から建てられてきたはずです。投票日が14日でも21日でも、なかには中止に追い込まれてしまうところもあるでしょう。

12月です。師走です。ただでさえいろいろと忙しい季節です。イベント参加予定じゃない人たちも、いろいろな予定を繰り合わせなければならないことがあるはずです。

そして、そんな迷惑な選挙日程を判断するのは、2年前の衆院選の時に、

「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない」というポスターを主に農村部で掲げたり、

「脱原発!!」と大きなタイトルが付けられたビラを福島で配布した政党のトップなのです。

これらのウソについてちゃんと説明してもらった記憶はありません。言いっぱなし。事実と違っていても、状況が変化しても関係ないようです。オリンピック招致で「福島はアンダーコントロール」と世界に向かって語ったことも修正や撤回はされていません。第一原発の港の外側でベータ核種が海水から検出されているにも関わらずです。

ウソをつくことは良くないことです。ウソがまかり通る世の中になんかなってもらっては困ります。こども達への示しもつかないでしょう。政治家ということ以前の、もっと重要な問題だと思います。

それに、総選挙には何百億円ものの費用がかかるというではないですか。国民が投票しやすいことを第一に考えろとは言えませんが、少しは配慮してもよいのでは?

選挙については今晩の会見で明らかにされるのだとか。であればまだ間に合います。

拝啓、安倍総理大臣殿

国民に、こども達に「よいプレゼント」をお願いします!