夏祭りの翌朝、いわき市久之浜の町を歩いた。ずっと残っていた海辺の鉄筋コンクリート住宅もいまは姿を消し、町をかたちづくっていた建物の基礎コンクリートも見えなくなり、海に近い方からかさ上げの工事が進められている。
震災の後、ガレ花(ガレキに花を咲かせましょう!プロジェクトで、久之浜の町には撤去される住居や建物の外壁などに花が描かれた光景が見られた)がいっぱいだった久之浜しか知らない人が、いまの町の姿を見たらどう感じるのだろう。
はじめてこの町を訪れて、いきなり現在の姿を目にした旅人は何を思うだろう。
奇跡的に残った稲荷神社とほぼ同じ高さのかさ上げ
町が津波に襲われる中、奇跡的に流されなかった神社が、いまも町の中に立っている。流された後に復旧されたのだと思い違いをしている人もいるほどに、この神社がこの場所に立っていることは、久之浜を訪れる人たちに強烈な印象を与える。この神社に参拝するためにやってくる人もいるらしい。
それでも町の様相は変化し続ける。かさ上げ工事で積み上げられたコンクリートの砕石は、稲荷神社の敷地近くに迫っている。
この光景に、やはり同じことを思ってしまう。はじめてこの町を訪れて、いきなり現在の姿を目にした旅人は何を思うだろう。
工事に関する部分では、町の変化は著しい。だけど、姿が変化することで見えにくくなっているものが増えているのも確かだ。少し前までなら町の様相を目に焼き付けるだけでも、切実に感じられるものがあった。これからは、変化していく町の姿の中に、かつての町の記憶を探し出したり、ここに暮らしてきた人たちの心や気持ちの変化を取り入れていくことが、いままで以上に大切になっていくのだと思う。
写真と文●井上良太