[5号機]1系統の冷却システムで原子炉と使用済み燃料プールの冷却の交互運転を開始
7月9日(水曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
5号機原子炉冷却停止。燃料プール冷却に切り替え
その後、7月8日午後3時11分 に原子炉停止時冷却運転(炉心冷却)を停止後、午後3時40分に非常時熱負荷運転(使用済燃料プール冷却)を開始し、使用済燃料プール冷却を開始。
今後は、補機冷却海水系が復旧するまでの間、使用済燃料プール水温度ならびに原子炉水温度を見ながら、残留熱除去系による原子炉停止時冷却運転(炉心冷却)と非常時熱負荷運転(使用済燃料プール冷却)を交互に切り替えることで、使用済燃料プールの冷却を行う。
また、原子炉建屋地下階設備において、漏えいした海水が被水した設備への影響について調査をしており、今後、健全性を確認していく。
5号機使用済み燃料プール冷却を行ってきた補機冷却海水系の配管破損のため、7月6日からプール冷却が停止していた。冷却停止時の水温上昇は1時間あたり0.193℃で、運転制限の65℃に達するまで9日間の猶予があるとしていたが、原子炉冷却系でプールを冷やす運転を開始したことを発表。今後は1系統の冷却システムで、原子炉と燃料プールを交互に冷却する運転を行うという。
補機冷却海水系の配管破損については、下のコラムで詳解。
1号機~5号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機と同じ4項目
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年6月16日午後2時42分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動(4号機原子炉建屋および共用プール建屋の天井クレーンと燃料交換機の年次点検により、一時中断)
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系停止中
6号機 ~使用済み燃料プール冷却を再開~
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
※6号機については、燃料管理の一元化を図り6号機全体の安全性を高めることを目的として、原子炉内の燃料集合体を使用済燃料プールに移動を実施。
燃料プール冷却浄化系の冷却範囲を使用済燃料プールに限定するため、7月8日、原子炉と使用済燃料プールを隔てるゲート(プールゲート)を閉鎖*。
使用済燃料プールゲート閉鎖後の原子炉ウェル水抜き作業のため、同日午前10時58分に冷却を停止(停止予定時間:14時間)。なお、冷却停止時の使用済燃料プール水温度は25.0℃。冷却系停止時のプール水温度上昇率評価値は0.292℃/hで、停止中のプール水温上昇は約4.1℃と評価されることから、運転上の制限値65℃に対して余裕があり、使用済燃料プール水温度の管理上に問題ない。
(ここまで既報)
その後、作業が終了したことから、7月9日午前0時15分に使用済燃料プールの冷却を再開。運転状態に異常はなし。プール水温度は停止時の25.0℃から28.0℃まで上昇したが、運転上の制限値65℃に対して余裕があり、使用済燃料プール水温度の管理上に問題なかった。
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
地下水バイパス ~7月8日の海洋排出量は1,725m3~
※1~4号機原子炉建屋等への地下水流入抑制対策として設置した地下水バイパス設備について、地下水バイパス一時貯留タンクグループ2の当社および第三者機関による分析結果[採取日6月27日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認したことから、7月8日午前10時30分、海洋への排水を開始。(ここまで既報)
同日午後5時26分、排水を終了。排水終了後、漏えい等の異常がないことを確認。なお、排水量は1,725m3。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
平成26年7月8日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年7月9日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
◆鋳物と思われる弁に開いた直径3ミリの孔。内部は減肉している可能性
◆弁そのものの交換、そして原因究明、さらに他の原子力発電所の同様の弁の再検証が求められる
◆1カ所の損傷で全系統がストップ。フェイルセイフが機能しなかった設計に問題は?