ALPSでのオーバーフローの原因は人為的なミス。繰り返されるヒューマンエラーは、管理強化だけで防げるのだろうか?
4月19日(土曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
多核種除去設備(ALPS)B系統で発生した高性能容器(HIC)からのオーバーフロー(続報)
4月16日午後0時19分頃、多核種除去設備(ALPS)B系統の吸着塔3Bで、吸着剤を高性能容器(HIC)でオーバーフローが発生した件について、作業員への聞き取り調査の内容と原因の特定、今後の対応策について新規記載。
以下の引用にある「TBM-KY」とは、おもに建設現場で行われている作業員による危険予知活動、安全ミーティングのこと。TBMはツールボックスミーティングの略で、作業開始前に道具箱の近くに集まって行う現場ミーティング。KYは危険予知の略。
本件は当該作業に従事していた作業員への聞き取りにより、多核種除去設備(ALPS)(B)系の吸着塔3Bから吸着材(メディア)用のHICへ吸着材を排出する作業において、HICの水位監視を担当する作業員が配置されていない状況で移送を開始したことが原因であった。
【聞き取り内容】
吸着材を排出する作業員Aは、HICの水位監視およびHIC用脱水ポンプの操作を担当する作業員Bが配置されていると思い込み、HICの液位が上昇した際には作業員Bより連絡があると考えていた。また、作業員Bは、別の作業に従事しており、吸着塔3Bの排出作業前には作業員Aより連絡があるものと考えていた。
上記のことから本件の対策は以下のとおり。
・関係者全員による安全事前評価を実施。
・元請け工事担当者は、TBM-KYにおいて人員配置確認を記録用紙を用いて実施。
・当社工事管理員は、全員参加のTBM-KYや記録用紙を用いた人員配置確認が実施されていることを、TBM-KYへの参加やKYシートの受領等により継続的に確認。
・仮設ホースの接続先を、HICの液位高で作動する遮断弁の上流側へ配置。
・仮設ホースを通した堰の貫通スリーブについて、漏えい拡大防止の観点から止水処理を行う。
なお、当該作業については、以上の対策を実施したうえで4月19日より再開。
ALPSの建設時の仕様では、高濃度に汚染された吸着剤のHICへの排出は自動制御で行い、その後の運び出しの際に人手を介すはずだったが、排出作業も人手によって行われていることがわかります。
本来、使用済み吸着剤は脱水して容積を減らした上でHICに排出されるはずですが、その作業は、吸着塔内にろ過水を入れて水張りし撹拌した上で仮設ポンプでHICに移送。HICの内部から脱水を行うポンプで移送した吸着剤の混ざった水を抜き取るという工程で行われていたようです。
今回の漏洩は、吸着塔側の作業員Aが、HIC側に作業員Bがいるものと思い込んで、吸着塔側のポンプを動かしたが、作業員Bはおらず、脱水ポンプを稼働させることもHICの水位も確認することもなく、吸着剤入りの水があふれ出したという経緯だったということです。
また、「当社工事管理員は、全員参加のTBM-KYや記録用紙を用いた人員配置確認が実施されていることを、TBM-KYへの参加やKYシートの受領等により継続的に確認」という記載からは、東京電力社員による現場での確認作業が日常的には行われていなかったことも伺えます。
「日報」等よりも詳しい内容の資料が、特定原子力施設監視・評価検討会(第20回)資料として公開されています。
多核種除去設備(ALPS)A系統、白濁水発生の原因と処理再開に向けての処置
B系の出口水から処理しきれていない高濃度な汚染水が貯蔵タンクまで移送された問題で全系統がストップした後、ホット試験を再開(3月25日)したものの、その直後(3月27日)に処理中の水の白濁が発見され、再度ストップしていたA系について、原因と対策が報告されています。白濁水の影響が見られる吸着塔4A入口までの洗浄が完了次第、処理運転を開始する予定とのこと。
※多核種除去設備(ALPS)では、汚染水処理設備にて処理した廃液を用いた試験(ホット試験)を行っており、A系については3月25日午後4時3分に運転を再開し、C系については同日午後4時5分に運転を再開したが、本日(3月27日)午前10時28分、A系のブースターポンプ* 1の出口側で採取した水が白濁していることを確認。このため、A系について同日午前10時42分に処理運転から循環待機運転に切り替えを実施。
その後確認できた状況等はクロスフローフィルタ(CFF)7Aの分解調査を実施したところ、Vシール(テフロン製)に微小な傷を確認するとともに、脆化傾向があることを確認したことから、炭酸塩スラリーが下流側に流出したものと考える。
CFF-7A、8Aについては、新規品との交換を実施。
なお、スラリー流出による影響は、吸着塔4A入口まで確認されていることから、洗浄を実施。洗浄が完了次第、A系統の処理運転を開始する予定。
* ブースターポンプ:鉄共沈処理(有機物の除去、α核種の除去)や炭酸塩沈殿処理などをした水を吸着塔へ送るポンプ
地下水バイパスの試験揚水の水質について
※1~4号機原子炉建屋等への地下水流入抑制対策として、地下水バイパス設備の設置工事および地下水の水質確認を行ってきたが、現状における地下水の水質確認を行うため、4月9日午前10時29分から午前11時24分にかけて揚水ポンプを順次起動し、試験的に地下水バイパス揚水井から地下水の汲み上げを開始。
試験的に汲み上げた地下水は、一時貯留タンクに貯留した後、水質確認を行う。(ここまで既報)
4月15日に採取した地下水バイパス一時貯留タンク水のガンマ核種および全ベータの放射線濃度については、当社分析結果および第三者機関分析結果共に検出限界値未満。
また、トリチウムの分析結果については、当社分析結果では250 Bq/L、第三者機関分析結果では240 Bq/Lで同等の値であった。
今回の分析結果は、すべて運用目標値を満足していた。引き続き監視を継続。
なお、一時貯留タンクに貯留した地下水については、試験運転中における海への排水は実施しないこととしている。
1号機
新規事項なし
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
2号機
1号機と同じ4項目に加え、
タービン建屋からの高濃度滞留水の移送開始を記載
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年4月18日午後4時39分~)
3号機
1号機と同じ4項目に加え、
タービン建屋からの高濃度滞留水の移送開始を記載
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年4月18日午後4時6分~)
4号機~6号機
新規事項なし
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
焼却工作建屋の水位、焼却工作建屋西側サブドレン水の分析結果
各号機タービン建屋から移送された高濃度滞留水を、誤って焼却建屋に移送した件で続報。常設水位計による常時監視と焼却工作建屋西側のサブドレン水の分析を報告。
<最新の集中廃棄物処理施設各建屋水位>
各建屋内の滞留水の深さについては、常設水位計による監視において、プロセス主建屋への移送後の水位と比較し、焼却建屋では0.2㎝の上昇。工作建屋では水位に変化はなかった。引き続き監視を継続。
4月19日午後2時現在の各建屋深さ
・焼却建屋:深さ17.8cm(4月14日移送停止後と比較し、0.2cm増)
・工作建屋:深さ5.0cm(4月14日移送停止後と比較し、変化なし)
<最新のサブドレン水サンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
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