あの日、双葉町であったこと「その瞬間」

福島第一原発で働き、原発の事務所で地震と津波を経験した佐藤大さんが、静岡県で行った講演の内容を書きおこす記事の第一回目。メディアが伝えない話ばかりです。

地震の衝撃で腕時計が壊れて止まる

3月11日、あの時私は会議で東京電力の事務所にいました。その時間はちょうど会議がひと段落したところで、あの私、たばこを喫うんで、東京電力の担当者と喫煙所に行ったんですね。ちょうどその時でした。

で、14時46分という時間についていろいろ言われていますが、私の時計がその時間で止まっていますんで、やっぱりその時間かなということです。でも、最初に体感できる地震、震度4くらいのは、その2~3分前くらいだったと思います。

喫煙所の中で、最初は携帯のアラームみたいなのが鳴りました。緊急地震速報ですね。

「なんだ、地震が来るね。震度3以上のが来るんだね」

そんな話をしていたんです。それで来たのが震度4くらい。ガタガタガタって。おお揺れるなあ、揺れるねえと普通にそんな話をしたんですね。それからだいたい、2分間くらい揺れ続けたんです。地震ってたいていは揺れても30秒くらいのものですよね。それがずいぶん長く続いた。

「おかしいよね」

ふつうの地震じゃないなと不思議がっていたら、その時なんです。

爆発音がしました。

爆発音です。いや、何かが爆発したという訳ではないんですよ。でも爆発音としか言いようのない音、ダイナマイトで発破掛けたような音がして、

その音が聞こえた直後、もう立ってられない。

震度6強っていうんですけど、そんなもんじゃない。人が立ってられないんですから。震度7とか、震度8とか言ってもいんじゃないか。そこまでは大袈裟なんで震度7とか7強とかって感じになっちゃうと思うんですけど。経験した人間の感覚としてはそんな感じ。

ほんと立ってられないんです。転がってしまうんです。喫煙所には煙を吸い込むでかい箱のような機械、あれって大体300キロくらいあるんですけど、あれが普通にビューン、ゴロゴロって床を舞っているんです。キャスター付いてないですよ。動かせるようにキャスターが付けられているわけじゃなくて、どべっと床に置かれていたものが滑るんです。壁の端から壁の端まで動くんです。どーんって。

挟まれたら大変です。挟まれないように何とかするしかないんですけど、もう俺ら自身が転がるし。必死です。

で、そん時の時間がだいたい14時46分。転がった時に私の時計が割れているんで。だからだいたいその時間なんだろうということなんです。デカい地震が起きたのは。

津波までの時間

このデカい揺れも長かった。最初の揺れから最後止まるまで、体感的には5分くらいです。揺れがおさまった喫煙所の中は、天井は落っこちる、壁はずたずた、ドアは歪んで開かない。そう、閉じ込められたんですけど、石膏ボードの壁を蹴破ったり、ドアも蹴っ飛ばして無理やり開けたりして脱出したんですね。

で、まずは何とかして外に出ました。見ると敷地内には倒壊している建物もある。地割れもしている。地震というと地割れのイメージありますが、もう当然といった感じで地割れしているんです。その地割れがすごい。波打って地面が割れてるところもある。ばかっと1メートルくらい開いているところもある。さまざまなんです。

これだけの地震だから津波来るんじゃねえかな。それは思いました。その頃自分は5号機を担当していて、現場にはまだ作業員が入っていました。安否確認しなければと行こうとしたら、第一発電所は事務所がある場所から坂を下って行ったところに現場があるんですが、うちの作業員たちがたまたま上がってきた。たまたまです。おかげで安否確認をとることができた。そうでなくて探しに行っていたら、という話です。

建物から脱出してから後は、時計が地震で壊れてしまったので細かい時間は分かりません。安否確認などできたんで、高台から海の方をぼうっと見ていたんですね。そしたら最初に来たのはだいたい5~6メートルくらいのです。確かに波は来るんですが、津波なのかふつうの波なのか、最初は分からないんです。でもそれが第一波だったんです。

なんで高さ5~6メートルって言えるかと言うと、海に行くとテトラポッドってありますよね。あれ東京電力の湾内にもあるんですよ。その波消しは5メートルから7メートルくらいの高さに積まれているところが多いそうなんで、その間をとって5~6メートルくらいというのが私の見解です。

その最初の津波が引いていく時です。水がどんどん引いて行って、とうとう海底まで見えたんですよ。普通、海底が見えることなんかないですよね。それが津波が引いていく時には見えた。

「あれ、おかしいな」

って、ぱっと水平線を見ると遠くの方に真っ黒い壁が見えました。

「おぉ、なんかあるなあ、何だろう」

自分でもよく分からないんです。黒い壁が水平線をどこを見てもある。だけどそれ、いつまで経ってもこっちに来ない。

あーれおかしいな。でもだんだん近づいてきているのは分かる。近づいてるのは分かるんだけど、なかなか来ない。で、近づくたんびにどんどんどんどん高くなっていく。

「なんだ、なんだ、なんだ」

って言ってたら、第二波の津波。15メートルとか18メートルとか言われるぐらいの津波です。

第一波からだいたい15分くらいだと思います。正確なことは言えないんですねどね。

みなさん、津波っていうと海でザバンザバンと来る波のイメージを持っているかもしれませんが違うんです。あれは波じゃないんです。あれは水の塊がそのまま押し寄せてくるって思った方がいいです。

で、その当時なんですけど、だいたい10分から15分間隔で震度4の余震が来ていました。だから揺れた後10分くらいするとまた、山鳴りとか地鳴りとかがして地震が来るんです。こっちの方では何と言うんでしょうか、地震が来る前にゴゴゴっと山が鳴るのを、うちの方じゃ山鳴り・地鳴りと呼びます。で、来るなと思ったらもう次の瞬間にはゴトゴトゴト。で、震度4くらいで、もうすぐに、

「また来た!」

って物に掴まったりする。それはもう10秒とかくらいの短い揺れなんですが。だけどさっきのね、震度6強とか震度7とかのデカいのを受けているんで、

「もうヤバイ!」

って言ってみんな地面に座り込む。

もうほんと、恐怖心を植え付けられるってのはこういうことなんです。

自宅に帰るまで

第一原発から私の家まで車で帰るとだいたい10分から15分くらいなんです。でもその当時、家に帰るまでだいたい3時間くらいかかったんです。

なんでかっていうと、道路の地割れ、建物の倒壊。片側1車線で2車線の道が、片方つぶれると、1車線の車は待ってなきゃならない。そうやってあちこちでフン詰まってると、待ってる車がつながって、もうどっちの車線も動かなくなる。大渋滞です。こうなってなかなか家に帰れなくなるんです。

多くの人はメインの通りを走るわけですが、そこは地元の利って言うんですかね。裏道とか、走れるところをいろいろ通る。そうやって帰ったんですが、それでも3時間でした。

道に車を乗り捨てて歩いて帰る人がいます。これ正解です。本当は正解なんですが、乗り捨てていいんです。でも乗り捨て方ってのがあるんです。

乗り捨てる人はみんな車の鍵を持って帰る。ドアもしっかりロック。そうすると、道のど真ん中にポンとでっかい障害物が置かれることになる。鍵もない、ドアもロックされてるじゃ移動のしようがないんです。

それダメなんです。

緊急時には必ず、車の鍵をつけて行きましょう。車の免許取るときにも教わりましたよね。もしも何かあった時、救急車とか消防車とかが来た時に、すぐに移動できるようにってことでもあるんです。でも実際にはみんな大パニックだからそんなの分からないんです。もう、鍵を閉めて、盗まれないようにして。

大人7人くらいで普通車、1台歩道にどかしました。よーいしょと持ち上げて。

東海地震とか東南海地震とかいろいろありますが、もし車に乗っている時に地震に遭ったらどうするか。これを覚えておいてください。

もし、家から避難するのであれば、車は家に置きっぱなしにしてください。車に乗るより歩いたり自転車で行く方が早いです。間違いなく。避難所に行くのに、絶対に車に乗って行かないでください。あー寒いから乗って行こうとか思わないでください。車は逆に邪魔になります。

避難所っていうの、だいたい学校が多いと思うんです。学校の校庭にはテントとかヘリコプターが降りられる場所とかを確保します。それで校庭が車でいっぱいだったら、ヘリが降りられないんです。どういうことかというと、救援物資が届かないということです。そのうちトラックとかが来るだろうったって、車はさっき言ったようになかなか進みません。緊急時のヘリが飛べなくなるんです。

ですから、家にいて避難所に避難する時は車は家に置いていってください。いいんですよ、家に車を置いておくときにはドアをロックしても。家の駐車場の中に救急車が入ってくることはないでしょうからね。

でも車に乗っている時に、乗り捨てて歩いて避難するなら、ドアは開けて行ってください。鍵を付けて行ってください。

発信音は鳴るのに不通の携帯電話

家に帰るまでに見た光景は、もう見た目は戦場です。戦争を経験した人間ではないんですけども、道路に穴はあいているし、建物は倒壊しているし、線路は落ちるはで。もうこれは戦争でも起きたのかという感じです。

そして次の話題、覚えておいてほしいのが携帯電話。これが特殊なんです。こんなことが起こるのかということが起こります。

よく言われますよね。大きな災害の時には携帯電話は不通になりますって。その不通状態が特殊なんです。

電話がつながらない時には話し中の音になりますよね。プープープーって。それがこん時だけは違うんです。コールするんです。トゥルルルルって、普通に電話がつながっている音なんです。だけど相手には電話がつながっていないんです。だから、

よけい不安を煽るんですよね。

電話がつながってるのに何で出ないの? 何かあったんじゃないかって。

ところが相手の電話には着信は入ってない。そういう特殊な状態になったんです。

自分も地震の後、嫁に電話したんです。電話がかかってるはずなのに出ない。

「こりゃやばい、何かあったのか!」

だけど、何でもなかったんです。

これ、メールに関してもそうです。メールを送信しましたというのは出るんです。だけど相手にメール届いていないんです。そういうような特殊な状態になったんです。

不安なんです。一番最初に地震で恐怖心を植え付けられた上に、今度はダブルパンチで家族の安否が分からないっていう、

もの凄い不安が襲ってくるんです。

不安が不安を煽って、自分が自分じゃいられなくなる。危険です。そういうような状態が、今回の震災ではありました。今はどうだか分かりません。改善されたかもしれません。

もしも改善されていなくて同じ状態になったとしても、携帯電話で連絡がとれないことであまり不安に思いすぎないようにしてください。こういうことがあったということを知っておいていただければ、もしかしたら同じ状態なのかなと記憶に留めて頂ければ幸いかなと、私は思います。

(つづく)

書きおこしと編集●井上良太