南海トラフ巨大地震が発生した場合、予想される最悪のケースで、32万3千人が犠牲になるという。その死因の内訳は、津波が約23万人でトップだが、次に多いのが建物倒壊。その数は、8万2千人。
建物の倒壊によって、多くの犠牲者がでることが予想されている。しかし、対策を行うことにより、その犠牲者を最大1万5千人に減らすことができると、南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループでは試算している。その対策とは、「建物の耐震化」と「家具等の転倒、落下防止」。今回、住宅の耐震化について、調べてみます。
耐震性能の判断と新耐震基準について
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、犠牲者の8割近くが圧死・窒息により亡くなっており、建物の耐震化が改めてクローズアップされた。
住宅の耐震性判断は、一般の人には難しく、専門家による診断が必要である。自治体のよっては、住宅の耐震診断支援を行っているので、公式WEBサイトなどで確認してみることをおすすめする。
ちなみに、わたしが住んでいる静岡県では、住宅の無料耐震診断を行っている(※対象住宅は、昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅です)。
耐震性について、今すぐチェックしてみたい方には、下記のような耐震診断チェックシートもある。ただし、簡易的なものであり、あくまでも参考程度に。
その他に、地震に対しての強さの目安になるものとして、新耐震基準に適合しているか否かがある(※)。
新耐震基準とは、1981年に改
正された建築基準法で定められている基準であり、「震度5強程度の地震ではほとんど損傷しない建物であること」、「震度6強から7に達する程度の地震で倒壊・崩壊しない建物であること」が求められている。建築基準法は1950年に制定され、その後、何度か改正されているが、1978年の宮城県沖地震を受けて、81年に大きく改正された。
国は建物の耐震化を目指しているが、ここでいう耐震化とは、新耐震基準を満たした建物のことを指している。
(※1981年6月1日以降に建築物の確認申請を提出した物件が、新耐震基準の建物となります)。
耐震補強とその費用
建物の倒壊により、多くの犠牲者がでた阪神・淡路大震災だが、倒壊した建物は、新耐震基準を満たさない、1981年以前に建てられたものが多かったという。仮に耐震補強がされていれば、多くの方が助かっていたとも言われている。
では、いったい耐震補強とは、どのような工事を行うのだろうか。工事方法は様々あるが、主に、
・基礎の補強
・柱の接合部の補強
・壁の補強、増設
を行うことにより、耐震化を図ることが多いという。
そして、気になる費用だが、これは住宅によって大きく異なるために、一概に言うことはできない。しかし、一般財団法人 日本防災建築協会の資料によると、改修費用は、次の要素によって、おおまかな目安がわかるという。
・目標とする耐震化レベル
・耐震改修前の耐震レベル
・延床面積
目安となる改修費用の計算方法については、下記の日本防災建築協会WEBサイトで確認できるが、耐震改修の費用は、概ね100~150万円で行われることが多く、半数以上が約187万以下だという(※)。
(※検討データは、地方公共団体が実施している木造住宅耐震化改修費用補助制度を2004年以降に利用した368の改修事例で、資料は2010年6月に発行されたものです。)
安くはないけれど
耐震化の改修にかかる費用は決して安い金額ではない。しかし、自治体によっては、補助金を出したり、税金の減免を行っている。例えば静岡県では、最大50万の補助金に加え、さらに、市町によっては独自の上乗せ補助金として、10~60万円を支援を行っている。
内閣府が公表している「南海トラフ巨大地震の被害想定 今後の対策の方向性(平成25年12月)」よると、現在、79%である建物の耐震化率を、95%まで引き上げることができれば、全壊の恐れがある建物を、62万7千棟から、6割減の24万棟まで減らすことができるという。
決して安いものではないが、仮に夫婦2人子供2人の家族の場合、4人の命が助かると考えれば、住宅の耐震化について検討する価値は十分にあるのではないだろうか。
参考WEBサイト
Text:sKenji