南海トラフ巨大地震が発生した場合、最悪のケースでは、約32万人以上の犠牲者が出ることが想定されています。しかし、最大限の防災対策を行った場合には、6万1千人に減らすことができるとも言われています。
防災・減災に最も大切なものは、「一人一人の災害への備え」。災害に対して、事前に情報を収集しておくことが必要かと思います。その中で最も有益な情報の一つがハザードマップ(防災マップ)です。「南海トラフ巨大地震への備え ~その3~」では、ハザードマップをご紹介します。
なぜ、ハザードマップが必要なのか
なぜ、ハザードマップを確認しておくことが必要なのか。災害発生時に適切な避難を行うには、災害の想定される影響、危険性、避難先などの情報を把握しておく必要があると思います。ハザードマップには、それら避難の際に必要だと考えられる有益な情報が、わかり易くまとめられています。
災害対策として、食料の備蓄や避難場所を確認している方は多いかもしれません。
しかし、仮に災害発生時の避難場所を決めていたとしても、考えているルートで避難ができるとは限りません。途中には、津波、がけ崩れ、液状化など通行を妨げる危険が潜んでいるかもしれませんし、災害発生時にいる場所や地震の規模によっては、必ずしも指定の避難所へ逃げればいいというわけではないかもしれません。
ハザードマップには、避難場所、ルートの検討のほか、災害発生時の想定外の出来事に対して、どのように行動すべきかを判断するのに、必要な情報が書かれています。
ハザードマップを実際に見てみよう!
ハザードマップは、地域ごとに想定される災害に対して作られています。そのため、居住している自治体が作成しているハザードマップを確認する必要があります。
ハザードマップとは、どのようなものなのか。静岡県沼津市の地震・津波ハザードマップを例として見てみます。
次の地図は、沼津市が公表している地震・津波ハザードマップの全市版の一部です(※見ずらい場合は、オリジナルのハザードマップが上記リンクにあります)。想定される震度や、津波の高さ、到達時間、浸水域、海抜、堤防の高さのほか、一部、海岸から避難場所までの距離も書かれています。
全市版よりも、避難する上でさらに実用的な情報が書かれたものが、次の詳細版になります。左の地図は、沼津市の静浦地区と呼ばれる地域のハザードマップです。想定される津波の高さや浸水域、避難場所の高台、建物の高さのほか、避難ルートまで詳細に書かれています。
右の地図は、ほぼ平坦な土地が広がる沼津市の第二・千本地区のものです。避難すべき高台はほとんどありませんが、代わりに避難に適している建物の位置などが書かれています。
ハザードマップに書かれた、避難先の場所や高さと、想定される津波の高さや到達時間などを元に、少なくとも自宅や職場、よく行く場所などにおいて、避難する場所をいくつかピックアップし、そこまでの避難ルートも複数検討しておいた方がいいかと思います。また、実際に避難場所まで歩いてみると、途中に起こりうるリスク(橋が通れない、崖崩れがあるなど)をイメージしやすいと思います。
実際に地震が発生したら、想定通りに行かないことも多いかもしれませんが、事前に様々なケースを検討しておくことで、避難行動を決める際の時間短縮につながる場合もあるはずです。
各自治体が公表しているハザードマップを見て避難計画を!
沼津市が公表している地震・津波ハザードマップの一部を例として見てみましたが、他の自治体でも同様に、予想される津波の高さや時間、避難場所についての情報が書かれているものを作成しています。
ご自分の居住地区や職場など、地域特性を考慮したハザードマップを元に、避難のシミュレーションをしておくことをおすすめします。
ハザードマップの各種予想数値は、必ずしも正しいと言えるものではなく、想定外が発生することも頭の片隅に置いておく必要はあります。しかし、東日本大震災を受けて見直されたハザードマップについては、以前のものより、想定外が起こる確率は少ないと言われていますので、自治体が、いつハザードマップを作ったかも意識して、確認しておくといいと思います。
ハザードマップで確認した結果、避難指定場所の高さや、避難する距離に不安を感じるようでしたら、事前に近所の高台を探しておいた方がいいかもしれません。
その際の避難候補地の高さは、下記WEBサイトで知ることができます。表示される地図上で右クリックすると、海面からの高さがわかります。自主的に選んだ避難場所については、特に実際の現地(避難ルート)状況を確認すべきかと思います。
全てのハザードマップの確認を!
今回、南海トラフ巨大地震への備えとして、地震・津波のハザードマップを取り上げましたが、地震ひとつとっても、津波のほかにも、崖崩れや、液状化などの恐れもあります。また、地震と連動して火山噴火の可能性も否定できませんし、台風による大雨の中で避難せざる得ないかもしれません。
各自治体では、地域で予想される災害についてのハザードマップを作成して、公表していますので、全てのハザードマップを確認して、どこにどのような危険が潜んでいるか把握しておく必要があります。
全ての災害に求められることですが、特に南海トラフ巨大地震など、大きな被害が想定される災害への備えは、食料の備蓄などのほかにも、ハザードマップの確認も重要になってくるのではないでしょうか。
参考WEBサイト
Text:sKenji