本日分の「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」の公開に先立って、報道関係各位一斉メールとして、6号機と4号機の使用済み燃料プールの冷却についての情報が上がっていますのでチェックします。
6号機使用済燃料プールの冷却停止
事のあらましは以下のようです。
・使用済み燃料プールの冷却を行ってきた補機冷却海水系が全台停止した。(2月21日付の報道配布資料「福島第一原子力発電所の状況」によると、「タービン補機冷却水系熱交換機(C)海水出入口弁他の点検を行うため」計画的に停止したと読めます)
・非常時に原子炉冷却に使う「残留熱除去系」で燃料プールの冷却を行っていた。
・AB二系統ある残留熱除去系のうち、運転していたA系の水の一部が格納容器下の圧力抑制室に流れ込んでいることを確認したので、B系統への切り替え準備を進めた。
・どこから漏れているのか調べてみたら、AB二系統が共用しているポンプ吸込ラインの安全弁から漏れている可能性が高いことがわかった。
・B系に切り替えることはせず、A系を再稼働した。25日の午前中に補機冷却海水系の復旧作業を始めて、午後5時までに補機冷却海水系によるプール冷却再開の予定。
以下、2月25日付の報道関係各位一斉メールを引用します。
昨日(2月24日)午前10時33分に、福島第一原子力発電所6号機補機冷却海水系を全台停止することに伴い、使用済燃料プール冷却系を停止し、昨日午後0時41分に残留熱除去系による非常時熱負荷運転(使用済燃料プール冷却)に切り替えております。(昨日、お知らせ済み)
その後、6号機残留熱除去系A系(非常時熱負荷運転中)の系統水の一部が圧力抑制室に流れていることを確認したことから、昨日午後7時8分に残留熱除去系A系を停止し、B系の起動準備を行いました。
残留熱除去系A系からB系への切り替えに伴い、漏えい箇所を調査したところ、残留熱除去系ポンプ吸込ライン(A系、B系共通ライン)にある安全弁から系統水の一部が圧力抑制室に流れている可能性が高いことから、B系の起動は行いませんでした。
安全弁から圧力抑制室への流入が圧力抑制室の容量に対して多くないことから、この後、残留熱除去系A系を再起動して、使用済燃料プールの冷却を再開する予定です。また、本日(2月25日)午前中、準備が整い次第、補機冷却海水系の復旧作業を開始し、午後5時頃までに補機冷却海水系による使用済燃料プールの冷却を再開する予定です。
冷却系停止時のプール水温度上昇率評価値は0.4℃/hで、本日午前0時時点の使用済燃料プールの水温は19.0℃であることから、残留熱除去系A系の再起動まで、運転上の制限値65℃に対して余裕があり、使用済燃料プール水温度の管理上問題ありません。
◆続報
A系の再稼働に成功し、非常時熱負荷運転(使用済燃料プール冷却)を再開したことが伝えられました。以下、リリースです。
2月25日にお知らせしております、6号機使用済燃料プールの冷却停止についての続報です。
本日(2月25日)午前1時28分に残留熱除去系A系による非常時熱負荷運転(使用済燃料プール冷却)を再開しました。
なお、残留熱除去系A系による非常時熱負荷運転再開時の使用済燃料プール水温度は19.5℃でした。
今後は、圧力抑制室水位の上昇状況、およびスキマサージタンク水位の低下状況を監視し、当該安全弁から圧力抑制室への流入量に変化が無いことを確認します。
★ 重大な事態に陥る可能性がどれくらいあったかは、公開された報道関係一斉メールの内容からは判断できません。しかし――、
・何らかの理由で、通常の冷却手段が失われて別の系統に切り替えたところ、
・二系列あるラインの共通部分に不具合があることが判明した。
辛うじて冷却を再開することはできましたが、多重化してフェイルセーフを図っていた全てが正常に働かなかったという、考えてみれば、相当に危険な状況だったことがわかります。
★ 不思議なのはA系、B系の共通ラインで水の漏えいがあったという理由で、起動準備中だったB系を止めて、A系を再起動したというくだり。漏えいの修理とともにB系の運転確認も行ってほしいものです。多重の安全が確保されている時に。
※ 5・6号機が被害を受けなかったわけではないことが、改めてよく分かりました。
4号機使用済燃料プールの冷却停止
◆事のあらまし
・2月25日午前9時40分頃、発電所内の所内共通電源設備、共用プールの電源設備、所内共通ディーゼル発電機の電源設備で、地絡(電気回路が地面に接続されること)警報が発生。
・9時45分頃、使用済み核燃料の取り出し作業を行っている4号機プール冷却系の空冷式熱交換器が停止。冷却機能が喪失した。
・9時52分頃、敷地内の道路掘削工事で誤ってケーブルを傷つけたとの情報が入った。
・電源の供給は継続しており、1~3号機使用済燃料プール及び共用プールの冷却状態には異常ない。
――これが第一報でした。
※リリースを以下に引用します。
本日(2月25日)午前9時40分頃、所内の電源設備(所内共通メタクラ(M/C)1A、2A、3A、4A、共用プールM/C、所内共通ディーゼル発電機M/C(A))において、地絡警報が発生しました。
また、同日午前9時45分頃、4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系のエアフィンクーラ(B系)が停止し、当該プール冷却は停止しました。冷却停止時の当該プール水温度は13.0℃であり、冷却停止時の温度上昇率は0.290℃/hです。
関連情報として、午前9時52分頃に、焼却工作建屋とプロセス主建屋の間の道路掘削工事において、誤ってケーブルを傷つけたとの情報が入りました。
一方、当該電源設備の電圧値に異常はなく、電源の供給は継続しており、1~3号機使用済燃料プール及び共用プールの冷却状態には異常ありません。
また、現在、全ての主要設備状態を確認しております。
◆続報
・4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系以外は異常なし。
→4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系は異常ありということ。
・傷つけたケーブルに電源を供給している電源設備しゃ断器を開放し地絡警報はリセット。原因は道路工事ということか?
・ケーブル損傷箇所では、発火し煙が出ていたが消火。消防にも通報。
※以下にリリースを引用します。
本日(2月25日)確認された4号機使用済燃料プール冷却停止についての続報です。
主要設備については、4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系以外は異常はありませんでした。
4号機使用済燃料の取り出し作業については、燃料取り出し作業前であったことから、念のため同日午前10時19分に作業を中断しております。
なお、4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系の冷却再開までの時間は、約2時間と見込んでいることから、運転上の制限値65℃に対して余裕があると考えております。
また、所内の電源設備の地絡警報発生について、同日午前10時21分に誤ってケーブルを傷つけた箇所に電源を供給している電源設備(プロセス建屋常用メタクラ(M/C))のしゃ断器を開放し、地絡警報はリセットしました。
焼却工作建屋とプロセス主建屋間の掘削工事におけるケーブル損傷箇所では、発火し煙が出ておりましたが、電源設備(プロセス建屋常用メタクラ(M/C))のしゃ断器の開放および消火器による消火により収束しました。
今後、当該ケーブルの損傷箇所の同定作業を行います。消防署へは、同日午前10時30分に連絡しています。
◆続報2
・プールの冷却は停止したままだが、温度変化は小さいから十分余裕があると強調。
・ケーブルの損傷個所を特定できたので、そこを迂回して4号機使用済燃料プール代替冷却系(二次系)へ電源を供給「します」。
・ケーブル損傷箇所の発火等は、消防署から火災ではないと判断されました。
※以下にリリース本文を引用します。
本日(2月25日)確認された4号機使用済燃料プール冷却停止についての続報です。
同日午後1時00分時点において、当該プール水温度は13.1℃(冷却停止時とほぼ同じ)であり、運転上の制限値65℃に対して十分余裕があります。
所内電源設備の地絡警報の対応として、損傷したケーブルの損傷箇所の特定作業を実施し、特定しました。
そのため、損傷したケーブルを使用しないルートで4号機使用済燃料プール代替冷却系(二次系)へ電源を供給いたします。
4号機使用済燃料プール代替冷却系については、現在二次系が停止(一次系は運転中)していますが、電源が復旧次第、二次系を再起動します。
また、ケーブル損傷箇所からの発火等については、同日午前11時52分、消防署より火災ではないと判断されました。
地絡警報が発生した電源設備で「共用プールM/C」と既にお知らせしておりましたが、正しくは「共用プールM/C(A)」でしたので訂正いたします。
◆続報3
・午後1時54分から午後2時16分にかけて4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系を起動。
・プール水温は13.0℃から13.1℃に上昇したが、運転上の制限値65℃に対して十分余裕があった。
・4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系機器の電源の供給が1系統になったため、ディーゼル発電機を準備。
・中断していた使用済燃料の取り出し作業は午後2時36分に再開。
※リリースを下記に引用します。文章の構成や言葉の選び方から、文章を書いた人の緊迫感が分かります。水温の温度上昇は0.1℃だったとはいうものの、かなりのピンチだと考えていたのでしょう。とくに、この続報3に込められた「安堵感」は、読む人の心にも伝わってきます。
本日(2月25日)確認された4号機使用済燃料プール冷却停止についての続報です。
ケーブルの損傷により4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系は停止していましたが、電源の復旧が終了し、同日午後1時54分から午後2時16分にかけて4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系を起動しました。
運転状態に異常はありません。
4号機使用済燃料プール水温度は停止時の13.0℃から13.1℃に上昇しましたが、運転上の制限値65℃に対して十分余裕がありました。
なお、今回のケーブル損傷により、4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系機器の電源の供給が1系統となったことから、念のため4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系機器に電源供給できるよう、ディーゼル発電機を準備しました。
また、4号機使用済燃料の取り出し作業を中断しておりましたが、同日午後2時36分に再開しました。
★ 別の事象が近い時間に発生していた可能性はないのか? 気になります。
★ 道路などの掘削では、埋設物を傷つけないようにすることは必須です。とくに原発のような重要施設内で、そのような初歩的なインシデントが発生したことには驚きを禁じえません。
施設内の配線や配管は、どこに何がどれくらいの深さで通っているか、記録がしっかり残されているはずです。その確認抜きに工事を行うことは考えられません。
ガスや水道の管を地中に埋設する時には、記録を残すのみならず管から10センチほど上に管の存在を示すテープを別に埋めたりするほどです。
いずれにしろ、損傷させたことで発火するほど「太い」電線だったわけです。そんな重要なケーブルを壊してしまうとは。
線量が高くて掘削箇所の目視確認が頻繁に行えない環境だったとか、そもそも熟練工が現場からいなくなっているとか、リリースでは触れられていない「背景」があるのかもしれません。
★ もう一点気になるのは、続報3で「1系統になったからディーゼル発電機を準備」とのくだりです。
道路工事が原因で、4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系機器に電源供給するラインは「0」になりました。損傷個所を迂回して電源をつなぎ、プール代替冷却系二次系は再稼働しましたが、その時点で1系統。
では、建設機械が大切なケーブルに損傷を与える前には何系統の電顕供給ラインがあったのでしょう?
使用済燃料プールの冷却はきわめて重要な機能ですから、電源が多重化されていないとは考えられません。ということは、建設機械の工事ミスで、いっぺんに2系統以上の電源供給ラインが破壊されたということになります。
同じ場所に2本の線を並べて設置して、それを安全のための多重化と呼べるのか、大いに疑問です。
その後公開された報道配布資料で、より詳しい状況が見えてきました
※ 道路掘削工事で誤ってケーブルを傷つけたという記載から、重機による事故だと早合点していましたが、この報告によると「雑固体廃棄物減容処理建屋(高温焼却炉建屋:HTI)への地下水流入を防止するための、地盤改良に伴うボーリング掘削中に、地盤から約-1m地点のエフレックス管のケーブルが損傷した」ということだったようです。
※ 電源ルートの系統についても図解によって詳細が理解できました。
A系統は4号機へ、B系統は3号機へ配電されているほか、A系統とB系統をバイパスするルートを持っているため、片方の系統に不具合が生じた時に反対系統から電源を融通できるという配線になっているようです。もしもA系統とB系統の両方がダウンした場合には、2つの施設が同時にギブアップすることになるということです。
以上、平成26年2月25日分の報道関係各位一斉メール、報道配布資料からピックアップしました。
構成●井上良太
トラブル発生個所の写真などが掲載された報告です。(PDFファイル)