今日はクリスマスイブ。絵本をプレゼントしようかな、っていう人もたくさんいることでしょう。そんな人たちへ贈ります。こんな絵本のプレゼントはいかがですか。
朗読とピアノ『ヒマちゃんのきもち』
朗読とピアノ『ヒマちゃんのきもち』
文:新柵ひろ子/朗読:村田活彦/ピアノ:ゆみ 2013年11月25日 石巻・かめ七呉服店にて
『ヒマちゃんの気持ち』は被災した石巻で読みつがれ、語りつがれている絵本です。
たくさんの人たちからの要望を受けて、11月25日、ポエトリーディングの村田活彦さん、音手紙 ゆみさんのピアノによるコンサートで朗読されました。
物語の主人公は一粒のひまわりの種。夏にはりっぱな花を咲かせて、みんなに笑顔を届けようと思っていたのに、あの日、津波で流されてしまったひまわりの種。
「ぼくはここで咲くの?」
ってひとりぼっちで思った
引用元:『ヒマちゃんの気持ち』作:新柵ひろ子
流れついた場所には誰もいませんでした。水をくれる人もいません。余震は続き、大潮で塩水をなんども被ります。
ぼくはひとりぼっちで思った
「この夏、ぼくは花を咲かせられないかもしれない
みんなを笑顔にできないかもしれない
ぼくはじしんと『つなみ』っていうものにまけちゃうかもしれない」
引用元:『ヒマちゃんの気持ち』作:新柵ひろ子
それでもひまわりの種は、自衛隊の人たちやボランティアの人たちが町のために働いてくれるのを目にします。
「そうだ!このひとたちにぼくは花を咲かせたすがたを見せてお礼をしよう!」そうきめた
引用元:『ヒマちゃんの気持ち』作:新柵ひろ子
文字として引用したのは最初の数ページのごく一部です。物語はここからひまわりと人の出会い、人と人の関わり、語り合い助け合う言葉があふれるようにひろがっていくのです。
朗読を最後まで聞いた時、また絵本を読み終わった時、人はきっと「ぼくたちって…」と自問するようにつぶやくことになるでしょう。生きることの尊さがじわっとしみてくる名作です。
『ヒマちゃんの気持ち』は2011年の夏、作者の新柵ひろ子さんが実際に体験されたことをもとにつむぎだされた物語です。新柵さんの物語に共感したたくさんの人たちの協力があって絵本として完成しました。作画を担当したボランティアの美大生、絵本化を全面支援したリーガルコーポレーション、そして石巻の町の人々。たくさんのつながりで形になった絵本なので、現在のところ市販はされていません。一冊一冊、お世話になった人たちのもとに心をこめて届けられてきました。
市販はされていないけれど、石巻の町に行けばいつでも『ヒマちゃんの気持ち』に出会えます。たとえば「日和キッチン」、たとえば石巻2.0の「IRORI」、たとえば石巻市図書館…。
そしてもちろん、作者の新柵さんが店長をつとめる リーガルシューズ石巻店!
11月の朗読とピアノの動画がネットにアップされたのは、とても素敵なことなこと。なぜなら、今まで以上にたくさんの人たちが『ヒマちゃんの気持ち』に出会える機会が増えたのですから。
この時期に動画がアップされたのは、きっとヒマちゃんからのクリスマスプレゼントに違いありません。
文●井上良太
『ヒマちゃんの気持ち』のデジタル出版を行ったプロジェクトの紹介ページです。「ヒマちゃんの気持ち」- iPad&iPhone edition(無料アプリ)へのリンクも設定されています。