大船渡から魂の熱唱!LAWBLOW「家に帰ろう」

その晩、僕は避難所にいました。津波で家に近づくことができなかったから。僕は避難所にいたけれど、でも結局その晩は眠ることはできませんでした。避難所は保育園で、そこには家族が迎えに来られなかったこども達もたくさんいました。眠ることができなかったその日の夜中、叫び声がするんです。

「家に帰りたいよぉ!」

いくつもいくつも重なるように聞こえてくる声。それは眠れないこども達の声でした。「家に帰りたいよぉ!」。でも、その時僕には何もしてあげることができなかったんです。

それから数カ月後、ようやく僕たちはひとつの歌を作ることができました。
お聞きください。ローブローで「家に帰ろう」。

家に帰ろう / LAWBLOW 【復興者】from 大船渡

映像は2011年7月、岩手県大船渡市で撮影されたものです。

「311Karats ☆緊急災害支援☆チーム新沼 」(略称『311Karats。』)の第2部のステージで彼らは歌った。声がひしゃげるまで、熱く、強く。

僕が生まれ育った町を飲み込んだヤツは、
奇しくも僕の大好きな大好きな海だった。
一体誰を憎めばいいの? 一体何を憎めばいいの?
ただただ自分の力の無さに瓦礫を前に立ち尽くした

引用元:家に帰ろう / LAWBLOW

ステージが揺れた。会場がふるえた。LAWBLOW の歌声にあわせて。

過去を奪われたとしても未来は自分で作れるはずさ
いつか家に帰ろう いつか家に帰ろう
いつか家に帰ろう いつか家に帰ろう
僕の心の中でいつも暖かい光を照らす場所へ

引用元:家に帰ろう / LAWBLOW

LAWBLOWの2人は、震災の前から歌をうたい続けてきた。社会との絆を深める活動も行ってきた。しかし、震災の直後には歌うことの無力も感じたという。歌うことをやめようかと悩んだ。それでも歌い続けることにした彼ら。それでも歌い続けてきた彼らの歌。聴いてほしい。

ステージは続く。つづく歌のひとつひとつが、会場を埋めた人たちの中に深くふかくしみていく。

いつもどおりに交わした言葉は「じゃあねまたね」笑顔で手を振る。それが最後と分かっていたなら、僕は何を話したろう。

引用元:じゃね。またね。 / LAWBLOW

見せたかった姿とか、聞いてほしかった歌とか、たくさんあったのに。
お金も車も家もいらないから、君を返して欲しい。

引用元:じゃね。またね。 / LAWBLOW

「じゃあね。またね。」のMCは、いつも自分のことを見つめ続けてくれた人への、答えることのできないメッセージ。前日に会っていたのに、その時、最後に何を話したのか思い出せない。ずっとずっと考えて、きっとこう話したはずと思いだせたのは、「じゃあね。またね。」だった。

彼らは被災地である大船渡の出身で、いまも大船渡を中心に活動を続けている。だけど彼らはいう。「俺たちは被災者じゃない。復興者なんだ!」と。

彼らは「復興者」だけど震災ソングの歌い手ではない。断じて、ない。歌う言葉が、震災を直接知らない僕たち、会場に集まった人たちのたくさんの人たちの頬を濡らした。その挙げ句に、彼らはいうんだ。「ぼくたちは、みなさんを悲しませようと歌っているんじゃないんだよ」って。最後の曲はみんなに手拍子だけではなく、パーに開いた手を揺らすことを求めた。会場の僕らはみんなそうした。そうしていると不思議、泣いてるのにみんな笑顔なんだ。

会場を濡らす涙と、希望の笑顔。ぼくたちはLAWBLOWに「ありがとう!」と言うしかなかった。すごくすごくいろんな意味で。

ありがとう! ずっと一緒だゼ!

●TEXT:井上良太