放射能について ~前編・放射能の基礎知識~

東日本大震災以降、放射能についてのニュースを目にする機会が増えました。

テレビや新聞で、「空間線量が○○シーベルト・・・」「○○ベクレルの汚染水が海に流出・・・」等の話を聞きますが、「ベクレルとシーベルトの違いは何?」など、わからないことも多いので、放射能について調べてみました。

全2回のうち、前半では放射能の基礎知識に関して書きます。

放射線、放射性物質、放射能の違いについて

「放射線」、「放射性物質」、「放射能」という単語をよく耳にします。似たような意味の単語だと思っていたのですが、どうやら異なるようです。まず、Yahoo辞書で調べてみると、

放射線: 放射性物質から放出されるα(アルファ)線・β(ベータ)線・
    γ(ガンマ)線の総称。広くは、X線・中性子線・宇宙線なども含めて、
    すべての電磁波および粒子線をいう。輻射線。

放射性物質:放射線を出す物質。放射能をもつ原子(放射性核種)を含む
      物質を指す。

放射能:放射線を出す性質、または能力。放射能の強さはベクレルという
    単位で表される。
    ※一般的には、「放射能を浴びる」「放射能漏れ」のように、
     放射線や放射性物質の意味と混同して用いられることが多い。

(一部省略)

引用元:国語・類語・英和・和英・百科事典・用語集の無料検索サービス - Yahoo!辞書

と書いてあります。つまり、放射線は電磁波や粒子の自体のことで、放射性物質は放射線を出すもの、放射能は放射線の強さということです。

よく例えられるものに電球があります。光を出す電球本体が、放射性物質になります。そして、電球の光、これが放射線にあたります。電球の能力、つまり明るさが放射能です。

電球を買う時には、明るさが気になりますよね。その時、電球の明るさを表すものさしとして、よくルーメンという単位が使われます。ルーメンの数値が高ければより明るい電球になります。放射能では、ルーメンの代わりにベクレルでその強さを表します。この数値が高ければ高いほど、強い放射線を出していることになります。

最近、放射性物質に汚染された水の海洋流出が特に問題になっていますが、汚染水に当てはめるならば、放射性物質は、汚染水に交じっているセシウム、トリチウムなどのことであり、放射線はセシウム、トリチウムなどが出しているガンマ線やベータ線のことです。放射能はこのガンマ線やベータ線の強さのことで、ベクレルで表されます。

放射線について

辞書に書かれている通り、放射線には、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、X線、中性子線などの粒子や電磁波があります。

このうち、アルファ線、ベータ線、中性子線が粒子で、ガンマ線とX線は電磁波です。ここでいう粒子とは陽子、中性子、電子などの物質を構成している粒のことで、電磁波とは、電界と磁界が交互に発生しながら波のように伝わっていくものであり、いずれも原子核が崩壊するときに出ます。

放射線が持つ物を通り抜ける力については、放射線の種類によって異なります。電気事業連合会WEBサイトでは下記のように書いてあります。

・アルファ線
 放射線の中でも重い粒子で、空気中では数センチメートルしか
 飛ぶことができず、わずか紙1枚でさえぎることができます。

・ベータ線
 ベータ線も透過力は弱く、アルミ板などの薄金属板で止めることができます。

・ガンマ線やX線
 電磁波なので透過力は強いほうですが、鉛や厚い鉄板で止まります。

・中性子線
 中性子線は鉛や鉄も突き抜けてしまいますが、水やコンクリートで
 止まります。

引用元:放射線の種類と性質 - 放射能と放射線 | 電気事業連合会

放射性物質について

放射性物質は、プルトニウム239、セシウム137など数多くあります。

福島第一原発の事故で放出された放射性物質は、原子力安全・保安院が公表したデータによると、セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素131など31種類だそうです。大気中以外では、放射性物質に汚染された水の海洋流出で問題になっているトリチウムがあります。

トリチウムは、昔、蛍光塗料としても使われていた物質で、汚染水処理の“切り札”と期待されている多核種除去装置(ALPS)で唯一除去できない放射性物質です。

放射性物質や放射能の関連ニュースでは、半減期という言葉がよく出てきます。半減期とは、放射能の強さが半分になるのに必要な時間のことで、約56秒のラドン220もあれば、半減期が45億年のウラン238など放射性物質により異なります。

福島第一原発事故で放出された主な放射性物質の半減期は下記のとおりです。

■放射性物質の半減期
ヨウ素131:    約8日
セシウム134:   約2年
セシウム137:   約30年
ストロンチウム90: 約29年
トリチウム:    約12年

半減期ですが、あくまでも放射能が半減するまでの時間であって、無くなるわけではありません。例えば、セシウム137の放射能が半減するのは、約30年ですが、十分の一になるには、約100年かかります。

放射性物質と放射線の種類の関係についてですが、放射線物質によって、出される放射線の種類が異なります。下記に一部の放射性物質と出される放射線の種類を記載します。

■放射性物質と放出される放射線の種類
ヨウ素131:    ベータ線とガンマ線
セシウム134:   ベータ線とガンマ線
セシウム137:   ベータ線とガンマ線
ストロンチウム90: ベータ線
トリチウム: ベータ線
プルトニウム239: アルファ線

放射能及び関連する単位について

放射能の強さを表す単位として、ベクレル(Bq)が使用されます。ベクレルは、1秒間に崩壊する原子の個数を表す単位であり、1秒間に1個の原子核が崩壊すると1Bqとなります。

原子核が崩壊するときに放射線が出ます。そのため、ベクレルの値が大きいと放射能も強くなります。

ベクレルとともに、シーベルト(Sv)とグレイ(Gy)という単位も頻繁に目にすると思います。
ベクレルとの違いがよくわからなかったので、調べてみました。

○シーベルト(Sv)
人が放射線を受けたときの影響の程度を表す単位です。被曝量を表す際に使われています。シーベルトの算出は、放射能の強さ(ベクレル)に実効線量係数と呼ばれる値をかけて求めることができます。

実行線量係数とは、放射性物質の濃度や、放射性物質毎の係数の他、年齢、性別、経口摂取か吸入摂取など、人体に影響を与える 様々な要素を加味して算出する係数です。実行線量係数は、ICRP(国際放射線防護委員会)などの複数の機関が示しているのですが、これは絶対的な数値ではなく、機関ごとによって値も異なっています。

参考までに、ベクレルからシーベルトへの換算方法は下記に記載があります。

○グレイ(Gy)
放射線がものにあたると、ものにエネルギーを与えます。グレイとは、放射線のエネルギーが物質にどれだけ吸収されたかを表す吸収線量」の単位です。1Gyは、物体1kgあたり、1ジュールのエネルギー吸収があるときの線量です。

ジュールとはエネルギー、仕事量の単位で、0℃の1gの水を沸騰させるのに必要なエネルギーは4.2ジュールです。

シーベルトが、性別、年齢なども加味した人体への影響を大きさを示す単位に対して、グレイは人体への影響の大きさについて加味しない絶対的な被ばく量を表す単位です。

各単位の使われ方について整理すると、ベクレルは放射能の強さ、シーベルトは人体に対する影響の強さ、ベクレルは原子力発電所などで放射線量の強さを表す際に使われるそうです。

<放射能について ~後編~ に続く>

参照WEBサイト

Text :sKenji