東北、この一枚。(11) JR仙石線、復旧への足音

いまだに線路が砂に埋もれた仙石線の野蒜駅を過ぎてクルマを走らせていくと、鳴瀬川を上流側に左折した少し先で、タワーのようなものを何本も建てている工事現場が遠くに見えた。

なんの変哲もない写真だけれど、地元の人たちが待ちにまった線路の復旧工事の現場

写真では広がり感が伝わらないが、一級河川鳴瀬川の河口にほど近く。一面に農地が広がっているあたりだ。そんな農村地帯の山際に、何の建物をつくっているんだろう、なんてぼうっと考えていた。

緑色の養生フェンスに包まれて、上の方には鉄筋の束を飛び出させている打設途中のタワーの列。やがて川を渡る鉄道橋が見えてきたところで、ようやく理解した。

そのタワーの列は津波被害を受けた運河沿いから山側に移した場所に造られている仙石線の新線のものだった。

仙石線は仙台と石巻を結ぶ宮城の鉄道の動脈のひとつ。震災による津波被害で、仙台側は高城町駅まで、石巻側は陸前小野駅までの折り返し運転。運休中の区間は松島海岸駅から矢本駅までの代行バスが走っています。

震災から1年ほど経った頃、津波被害がひどかった野蒜駅周辺には、
「きっと帰るぞ!野蒜」
といった横断幕が張り出された被災した住宅が何棟も見られました。
代行バスのバス停となっている野蒜駅前には、仙石線の早期復活を願う手書きの幟が何本も立てられていました。

JR東日本によると、陸前大塚駅から鳴瀬川陸橋までの区間は、山側にルートを移した上、海抜22mの高さに線路を敷設する方針で工事を行っているとのこと。

再開予定は2015年中ですが、地元の足が一日も早く復旧することを祈っています。

東松島市野蒜地区

仙石線再開に向けての工事が進む現場

●TEXT+PHOTO:井上良太