東日本大震災・復興支援リポート「石巻・狐崎浜の海中観光資源調査」

iRyota25

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東日本大震災の後、宮城の海のダイビングが冬でも熱くもえているのをご存知ですか。三陸海岸は魚類はもちろんウミウシなどの底生生物の宝庫。幻の魚といわれるクチバシカジカの生息も、お隣の女川湾で確認済み。この日は宮城ダイビングサービス「ハイブリッジ」代表、高橋正祥さんの石巻市狐崎浜の海底観光資源調査に同行させてもらいました。(2012年11月30日)

海中調査終了後、高橋さんが海の中で撮影した写真を浜のおばちゃんたちに見せると、おおーっと驚きの声が!

この日お世話になった狐崎復興漁業部・管野清也さんの漁船です。この船でダイビングポイントまで案内してくれました。管野さんは狐崎浜で牡蠣養殖を手掛ける漁師さん。震災以前よりさらに元気な浜にするため、漁業だけではなく観光の可能性も考えているそうです。(左奥は高橋さんとバディーを組む笠井さんです)

乗船前にドライスーツを着込んで準備。防寒のためダウンジャケットの上にドライスーツを着ています。

ポイントへ向かう船上に期待の笑顔があふれます。高橋さんからは、クチバシカジカなどの希少種が生息する環境が管野さんに伝えられ、菅野さんはそれに応えて、「あの辺りの岩場がいいんじゃないかな。アマモ場ならあっちだな」など地元漁師ならではの土地勘で、ロケーションを提案。ダイバーと漁師さんのコラボレーションで海中の観光資源調査が始まります。

いよいよ海へダイブ。バディーを組む笠井克治さんと高橋さんが海に入った後は、写真家の平井慶祐さん、菅野さんとのおしゃべりタイム。あいにくの曇り空でしたが風もなく、牡蠣養殖のこと、アワビ漁のこと、子どもの頃の潜水の話、まるでプライベートビーチのような小さな浜辺のことなど、海の上は話題が尽きることがありませんでした。

こちらが話題にのぼったプライベートビーチのような浜辺。津波でがれきが流れついて荒れてしまいましたが、整備すれば人気スポットになること間違いなし!と船上で3人の意見が一致。「陸からも行けないことはない場所なんだけど、こうやって船で渡ると気分も格別だね」。「昔から浜のデートスポットだったんだよ」。「がれきはかなり少なくなったけど、もうちょっときれいにしたいね」。そんな話で盛り上がっていると、ボコボコっと水面にエアがあぶくを立てて2人のダイバーが帰還してきます。

船の上も楽しかったけれど、海中はもっとエキサイティングだったみたいです。2人の表情を見ればわかりますね。この日は残念ながらクチバシカジカに出会うことはありませんでしたが、珍しい魚や生物がたくさん見られたそうです。

「牡蠣の養殖棚のまわりも、けっこう魚がいるんだよ。潜ってみる?」。管野さんの誘いにダイバー2人はもちろん「お願いします」。養殖棚のまわりを潜れるチャンスなんて、そうはありません。

高橋さんのブログを見ていると、ほとんど毎日潜っているのでと思ってしまうほど。仕事を通して復興に力を注ぐ。理想的な仕事だと思います。

ダイバーの姿を見ると警戒する漁師さんが多い中(アワビやウニなどを密漁するのではないか、養殖施設に悪さをされるのではないなど疑われるおそれがあるのです)、高橋さんは漁業関係者と事前にしっかり話をして、了解ばかりか理解までしてもらった上で活動しているのです。

だからこその牡蠣棚ダイビング。

管野さんは「今度は定置網の中を潜ってみるかい?」

金華サバやハマチ、マダイなどなど、豊かな三陸の魚がいっぱいの定置網の中を泳ぐなんて、想像しただけでも「やりたいです!」と手を挙げたくなってしまいました。

 笠井克治さん この日のために神奈川県・三浦市から訪れた笠井さん。所属はビーチバム・ダイビング・サービス。

「ダイバーは横のつながりが密なんです。これからも協力していきたいですね」と語るナイスガイです。

何度も話題にのぼったクチバシカジカのような希少種は、ダイビングをやる人にとって憧れの魚。「集客力」の高い観光資源なのだそうです。

海の美しさや珍しい魚に会いに、三陸の海にダイビングに訪れる人が増えていけば、浜の活性化にもつながります。震災後、がれき撤去や遺体捜索などで東北の海に潜ってきた高橋さんが、故郷である宮城県にダイビングショップを開いたのは、まさにそのためです。

高橋さんというお名前だからお店の名前が「ハイブリッジ」なんだと早合点していましたが、実はそうではないのです。(高橋さん、ゴメンなさい)

ショップのホームページのトップには「宮城復興とダイビングの調和」と題して、こんな言葉が刻み込まれるように記されています。

幼い頃から育った宮城県の大好きな海を、多くの方々に訪れてもらい東北の海を元気にしたい! みなさまと東北の海を結ぶ架け橋になれるよう願いを込めて「High-Bridge」(ハイブリッジ)を命名しました。

津波で大きな被害を受けたエリアは、昔から海と深くかかわってきた地域です。だからこそ、海を元気に!

そこで、最初の写真に戻ります。潜水調査の後、浜のおばちゃんたちのおいしい手料理のお昼を頂きながら(最高の昼食でした!おばちゃんたちありがとう!)、高橋さんが撮れたてほやほやの海中写真を見せたところ、みんさんこの驚きよう。

「えっ、これがそこの海の中なの?!」「あらあ、若い頃は私たちも潜ってたのよ。でもこんな景色は知らなかった」

ダイビングを楽しみにやってくるお客さんたちだけでなく、漁師さんもおばちゃんたちも一緒になって、浜の観光を盛り上げていけそうな予感がしてきました。

管野さん、高橋さん、笠井さん、浜のみなさん、そして素敵な体験を紹介してくれたケースケさん、ありがとうございました!

ダイビングサービスHigh-Bridge

住所:石巻市渡波字栄田146-8電話:0225-98-5830

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high-bridge111.com  

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体験ダイビング、ライセンス講習、ファンダイビングなど、ぜんぶ豊かな三陸の海で楽しめます。ホームページやブログには、最新の海中情報も。ダイビングに興味のある方、魚が大好きな方、ぜひ東北の海でダイビングにチャレンジを!

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●TEXT+PHOTO:井上良太(株式会社ジェーピーツーワン)

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