1kgあたり4~5Bq(ベクレル)まで計れる装置で検出できない、ほぼ安全なコメをつくれたからといって、「だから、これでいい」というわけではありません。来年も限りなく「ゼロ」に近づける努力を続けなければ。
生産者として、安全でおいしいコメをつくります。
白土武さん(福島県いわき市四倉)農業
「行政でも大学の先生でもいいから、こうやれば大丈夫という教科書のようなものをつくってくれたらなら、そのやり方に乗っかりたいくらいですよ。それで本当に収穫したコメの放射能が下がるのならね」
2012年の大晦日、白土さんは佐藤三栄さん宅の炬燵の中でミカンを食べながらそう話してくれた。昨年の連載記事では、放射能に負けないコメ作りは日本のモノづくり文化の源流につながっている、といったようなことを書いたが、実際はそんな浮ついたものではない。白土さんの言葉は「放射能に負けないコメ作り」の苦労を静かに強く物語るものだった。
田んぼの土壌、用水、生育途中の様々な段階のイネ、そして収穫した籾や玄米、精米後のお米など、何度も測定を繰り返すだけでも大変な労力だ。しかも、結果が出るまで安心できないという心労の深さは、容易に想像できるものではない。
だからこそ、お米を買ってくれたお客さんへの心配りにも並々ならぬものがある。自分たちが作るコメの安全性や活動について、もっと理解してもらうためにはどうしたらいいか。11月の会合はもちろん、大晦日の炬燵の中でも様々なアイデアが話題にのぼっていた。
2013年も、白土さんや佐藤さん、谷平さんたちの活動を見詰めさせていただきたいと心に期した大晦日だった。
●TEXT+PHOTO:井上良太