U-20女子ワールドカップで銅メダルを獲得し、一躍全国区の人気となった『ヤングなでしこ』。2015年のワールドカップに向けて、この世代のプレーヤーが『なでしこジャパン』の新戦力になることが期待されています。3年後を見据えた上で、国際大会で活躍できるのは誰なのか?今回はサイドバック編として、注目の選手をピックアップしたいと思います!
右サイドバックの後継者を育てるのは日本の課題
なでしこジャパンにおいて、右サイドバックの選手層の薄さは課題の1つとされてきました。田中明日菜や有吉佐織など、実力派の若手が台頭してきたものの、レギュラーの近賀ゆかりを脅かす存在には至りません。アテネオリンピックで活躍した川上直子、ロンドンオリンピックで銀メダルを獲得した近賀ゆかり、強いなでしこジャパンの陰には常に優秀な右サイドバックの存在がありました。
近賀ゆかりも3年後のワールドカップでは31歳となり、4年後のオリンピックでは32歳です。年齢的には次回大会でも十分に戦えますが、早い段階で近賀の後継者となる逸材を発掘して育てる必要があります。筆者が個人的に推しているのは、U-20女子ワールドカップで活躍した高木ひかり選手です。
超攻撃的サイドバックの近賀からレギュラーを奪えるか?
元々フォワードでウイング的な仕事をしていた近賀ゆかり。優れたアジリティと精度の高いドリブルを得意とし、サイドバックに転向して一気に才能を開花させました。一方の高木ひかりは、U-20W杯ではセンターバックとサイドバックを兼任し、守備のスペシャリストとして全試合に出場しています。元々はフォワードの選手であり、攻撃センスも優れたプレーヤーです。高木ひかりが近賀ゆかりを脅かす存在になれるのでしょうか?
オフェンス面
・抜群のスピードと運動量で右サイドを制圧する近賀ゆかり。オーバーラップのタイミングに優れ、ディフェンスラインの裏を取るカウンター攻撃を得意とします。好機ではペナルティエリアまでドリブルで侵入してゴールを決める点取り屋です。DFの足が止まる試合終盤でも、積極的に前に飛び出してゴールを狙うプレーは相手チームの脅威です。
・ディフェンスでの貢献度が目立つ高木ひかりですが、高い攻撃力を持つことでも知られています。20~30mを一気に独走する高速ドリブルは破壊力があります。U-20W杯の韓国戦で見せたドリブル突破は秀逸で、中盤からペナルティエリア内までドリブルで持ち込むと、マイナスのグラウンダークロスをファーポストで待つ田中陽子にピンポイントで合わせる完璧なアシストを記録しています。
ディフェンス面・近賀ゆかりはスピードと運動量を生かした、1対1のマンマークに優れます。マッチアップで縦にドリブルを仕掛けられてもサイドラインで振り切られることはありません。絶妙のポジショニングで縦を切り、攻撃のスピードを遅らせると、相手を囲い込んでボールを奪います。右サイドのゾーンプレスの要となる存在です。
・本職はセンターバックという高木の言葉通り、フィジカルコンタクトの強さを生かしたマンマークは無類の強さを誇ります。欧州の選手と対等に競り合える空中戦の強さと、ファールを恐れないスライディングタックルを武器とするクラッシャーです。センターバック出身らしく読みの鋭さも秀逸で、サイドチェンジでディフェンスラインを揺さぶらても中央にポジションを修正してペナルティーエリアをカバー。マンマークとカバーリングに優れた守備力の高いサイドバックです。
総合評価
攻守のバランスを考えた場合、現時点での実力は近賀ゆかりが一歩リードしています。しかし、高木ひかりは抜群の身体能力と守備力兼ね備え、スピード溢れるドリブル突破と高いキック精度でアシストを量産できる選手です。ゴールハンターの近賀ゆかりとアシスターの高木ひかり。2人のタイプは異なりますが、高木をA代表に召集して右サイドバックの椅子を競わせることで選手層の幅を広げるべきだと思います。