静岡県唯一の有人島・初島を散策中、お土産屋「やまさ」に立ち寄った。特別何が欲しいわけでもなかったが、お土産を色々と眺めるのが好きな筆者。商品を手にとっては裏面を見たり感触を確かめていた。
(初島港の風景。毎日7~12本の船が往来する。)
島のばーちゃんは何でも知っている
「それは岩のり、丼にのせてたべてごらん。この辺で採れたやつ。」 「それは金目鯛の練り物。ビールによく合う。試食できるよ。」
なんや・・・えらいグイグイくるなぁ。 セールストークの主は初島に生まれて82年という田中みえこさん。お店の脇のベンチで日向ぼっこをしていた。しかし、のんびりした過ごし方とは対照的に、口から出る言葉は若々しさで溢れていたのだ。
「リゾートアイランドになったけど、ずーっとのんびりした島なの。」
「ここは熱海から近いから便利。ここも一応熱海市だけど。あはは。」 「ここは昔からずっと41世帯しかないの。だからみんな顔見知り。悪いことはできない!
警察もいないーどうせ逃げられないもの。」 「必ず長男は跡を継がないといけないのよ、二男とか三男は好きにしていいの。
でも正月には帰ってきてね・・・。私はたまたま島の人と結婚したから・・・っはっはは!」 「昔は東京で働いていてね。ここの息子も明治大学に通ってるの。」
「この島も昔は電気が無かったのよ。水も熱海から買ってきてね。今は便利になったのよ。」
他愛のない話から思わずほぇーとなる話まで。島内にある観光客向けの資料よりよっぽど情報が生々しい。気が付けば筆者もベンチに腰かけて話を聞いていた。
20代?フレッシュ82歳
「この島はお客さんが良く来る方だけど、やっぱり兼業じゃないとやっていけないもの。」
「昔はここも民宿やっててね、夫婦と子供とで20人迎えたこともあったのよー」 「それで宿が落ち着いたら、すぐ畑に行ったの。時間の無駄になるから。
冬は男の人が船を出して私たちは岩ののりをべーってはがし取ってね。海をぐるっと回ってかき集めてね。 だから今度は2月ごろに来なさい。」
「この島のお店はみんな同じような見た目でしょ。屋号のない店も多いし、大変よぉー。」 「でも今はこうしてのんびりしてるだけでいいの。子供たちが働いているから。」
「この前はヨーロッパに行ってきたの。あとサイパン。」 「また、どこか行きたいねぇー」
筆者は20代だが、田中さんも元気さはさながら20代のようだ。筆者には旅行好きでよくしゃべる女友達がいるが、彼女とその姿がダブってしまうほど。そして思わず私もこう返した。
「いやー、贅沢ですねぇ。」
「当たり前よー!それだけ働いてきたんだもの!せっかく生きてるんだから贅沢しないと損!」
いやー、働いて楽しんで働いて楽しんで・・・勉強になります!
(初島お土産店「やまさ」と日向ぼっこする田中さん)