自閉っ子の噛みつき対策 ~洋服編~

前回の記事でご紹介したセミナーでも学んだように、自閉っ子のパニックをなくす方法は「パニックの原因を作らないこと」。わが家もそれを目指して試行錯誤しながら毎日を過ごしていますが、正直うまくいかないことも多く、どうしてもパニックは起こってしまいます。

ウチの娘がパニックになってしまった時に起こす行動のひとつが「噛みつく」ことです。小学校に上がる前までは肩や腕、胸や頭などにも全力で噛みついてきたので大変でした。

最近も寝ている状態で大きな音や夢などに驚くと、とっさに(近くにある)わたしの腕を噛んだりしますが、ふだんはほとんど「目の前にいる人の服の襟元」に噛みつくのが定番です。

何らかの不快感や苦痛を「噛む」という行為で紛らそうとしているので、一度噛みついたらなかなか離してくれません。無理やり引き離そうとするとさらに強いパニックを誘発してしまう恐れもあります。

この前歯が決め手(^^)

噛む対象をハンカチやタオルに置き換えてもらおうとしてもうまくいかない時の方が多いのが現状です。その結果、洋服の襟元はだらんだらんに伸び、穴がいくつもあき、「猛獣と闘ったのかな」みたいな状態になります(^_^;)

パニックよりだいぶ手前の「ちょっとした不機嫌」でもこの噛む行為をするのが悩みです。最近だと夕飯前の空腹時はいつも機嫌が悪く、いつも噛みついてきます。

でもその度に服を買い替えていたらお金が持ちません。じゃあどうすればいいのでしょう。

外用→部屋用→捨てる

答えは「穴があいても着る」です。穴があいたらその服は「部屋着に降格」します。そこからさらに何度も噛まれて、見た目が「さすがに悲しい状態」になったらようやく捨てます。

「襟があるシャツ」「襟元が狭いシャツ」「伸縮性のある生地」「ユニクロで安売りされてるもの」…どんなものがいいのか何年もいろいろと試しました。結局たどりついた答えは「とにかくすぐに買えて安いもの」でした。

わが家は買い物に出かけるのも簡単ではない家ですし、しょっちゅう噛んでくるので「無傷の服」も「部屋着」もある程度ストックがある状態でないと困ります。だからネットですぐに買えて、そこそこ生地が丈夫で、そしてなるべく安いものを探すのです。

その結果、半袖長袖ともに「米メーカーの無地Tシャツ」を愛用しています。実際の製造は中国などですが、とにかく「アメリカでどっさり積んで売ってそうな安いTシャツ」を着ています。

半袖は1着300~400円台。長袖が600~700円台。送料の節約も考えてまとめ買いしておきます。

今年に入ってからも必要に迫られてすでに10着購入しました。「あの人ってずっと同じの着てんな」と思わせておいて、実はなかなかの勢いで新品も着ているのです。ぜんぜん自慢になりませんが(^_^;)。

今は半袖も長袖もこのメーカーです

上着問題

外出先でのパニックで噛まれた場合に備えて、バッグの中や会社のロッカーには「替えのTシャツ」が入っています。一度バス待ちの最中にパニックになってしまった娘をスクールバスに押し込むとき、ボロボロに食いちぎられた経験からそうするようになりました。これで安心です。

ただ、半袖長袖Tシャツ1枚で過ごせる季節ならともかく、問題なのはTシャツの上に何か着なければならない季節。この上着に関しても「噛まれ対策」を考えないといけません。

例えば今のように寒さが厳しい季節だとダウンジャケットを着たくなります。でもあの軽量なナイロンは娘に簡単に食いちぎられます。

ナイロン地の服には接着力が非常に強い補修用のテープが売っているので、噛まれたら貼る、また噛まれたら貼るを繰り返し、累計20数か所近くツギハギして頑張ったダウンジャケットもありました。でも噛みつかれて簡単に破けてしまうのがなんとも悲しいので、ダウンジャケットは買わなくなりました。

噛まれては補修を繰り返し、ついに殉職したパタゴニア。長年ありがとう。

丈夫であったかいんだからぁ

それ以来、「噛まれても大丈夫な真冬の防寒着」を探し求めてきましたが、軽さが売りであるダウンジャケット系はどうしても生地が(娘の歯の威力の前では)弱い、米ミリタリー系ジャケットはナイロンはすごく強いけど、娘がしがみついてきた時に金属製のファスナーや引手金具で顔にケガをする可能性があるなど、どれも一長一短。どうやらナイロンから離れたほうが良さそうです。

ということでこの冬にたどり着いた生地があります。それは「毛織物生地」です。

昨年ダッフルコートを買った妻から「この生地は噛み心地が悪いみたいであんまり噛んでこないよ」という有力情報を入手したのです。

確かにあのような毛織物の生地(分厚い「メルトン生地」というヤツ)は噛みつきや引っ張りに強そうだし、ちょっと起毛しているため、チクチクして噛み心地がよくなさそう。それにちょっとぐらいの汚れならゴシゴシ拭いちゃって良さそうです!

ただしダッフルコートはあの独特のボタン(輪っかとフック)が娘の顔に当たりそう…ということで目をつけたのがピーコートです。生地は狙い通り。ボタンは軽いプラスチックで直径が大きい(つまりカーブが緩やか)。高級ブランドでなければ値段も知れています。

ヒートテック&まとめ買いの長袖Tシャツ、そしてピーコート。寒ければ中にインナーダウンジャケット。首元にはウールのマフラー。

こうしてついに「寒さと噛みつきに耐える冬のファッション in2018-2019」が完成しました。伊豆の冬ならこれでじゅうぶんです。

どうしても冬ソナ臭が漂う

意外な発見

この組み合わせにはもうひとつ発見がありました。それは「マフラーが意外な効力を発揮してくれること」です。

娘は機嫌が悪くなるとコートではなく、噛みやすいマフラーを噛んできます。ただしウールもちょっとチクチクしますし、ゆるく巻いたマフラーは娘が引っ張っても強く噛んでも手応え薄。どうやら娘にとって「噛んでも面白くない」のか、食いちぎろうとまではしません。

もともとクシュクシュにして使うものですから、仮に穴の一つや二つぐらいあいたってわかりゃしません。「噛みやすそうだからやめよう」と思って避けてきたマフラーが、実は使えるヤツだったと判明したのです。

目指すのはパニックゼロ

もちろん目指すのは噛みつかれないことであり、パニックの原因を作らないこと。これからもそれを目指してがんばっていきます。

でも、世の中にはこんな視点で洋服選びをしている人間もいるのだということ、わたしと妻はなぜ洋服売り場であんな怖い顔をして生地やファスナー、ボタンをさわりまくっているのか(笑)などもちょっと知っていただきたくて、今回はこんなことを書いてみました。

早く娘の噛みつきがなくなって自分の好きな服が着たいです(*^-^*)