2018年2月16日・17日、新しく完成した岩手県立高田病院の見学会が行われた。
旧・高田病院は津波が直撃を受けた。『津波てんでんこ』で知られる山下文男もここで罹災。全身ずぶ濡れになりながらも救出された。しかし、高田松原の近くに位置していた旧・病院は、またたく間に4階まで浸水して全壊。患者と職員の22名が亡くなった。
16日に落成式が行われた新しい病院は、標高約50メートル。高台5と呼ばれる造成地に建設された。
震災前には統合話もあった高田病院だが、仮設の施設で医療を続けてきた。地域の医療拠点としての期待が集まる。
「これまではご迷惑を掛けてきたから…」案内に立ったスタッフの説明する声が聞こえる。「きれいね」「広いわね」という住民の声に応えての会話だ。震災から7年という時間の長さ、そして「ようやく」という思いが伝わってきた。
小児科の診察室の壁には猫のレリーフ。待合室は緑の広場を思わせるデザイン。見学に来た小さな子どもが、早くもにこにこ笑顔を見せてくれる。これにはスタッフも親御さんも「最高の笑顔ね」とにっこり。
1階は主に診察室やレントゲン室など外来に対応するつくりになっている。廊下の手すりのある側にもソファが並べられていたが、これは見学会のための措置で、オープン時には片側だけになるだろうとのこと。
2階は手術室やリハビリテーション室、栄養管理科の部屋などの施設があるほか、18室60床の病棟となっている。
4人部屋の病室が開放されていたので中をのぞいて見ると…
「景色がいいわよね」と、見学にきていた女性が海を指差した。松原越しに海が間近に見えた津波前の病院とは違って、ここから海は遠い。
70床だった以前の病院に比べてベッド数は減ったが、施設は充実しているようだ。病室内にもトイレがあるし、入浴施設は寝たきりの人に対応する特殊なお風呂、しっかり取り付けられた手すりが頼もしい一般の浴室、車いすでも使いやすいシャンプー室と3種類が備えられている。
病床数が減ったことは述べた通りだが、診療科の数は8で以前と変わらない。とはいえ、常勤医師は7名。人口が2万人を割り込み、大船渡市や住田町を合わせた旧・気仙郡内でも人口減少が進む中では、大都市並みの体制は望むべくもないのかもしれない。月曜日から金曜日まで毎日受診できるのは内科、外科、小児科のみだ。
整形外科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、婦人科は外部医師の応援で週に1回~2回の診察となる。内科、外科、小児科でも、県内の病院や東北大や長崎大などから多くの応援医師が勤務することになる。
大船渡病院など地域の病院との役割分担という事情があるのは理解できるが、たとえば、産科がないことの不安を語る若い女性も少なくないことを書き添えておく。
岩手県立高田病院は3月1日、震災からおよそ7年の後に新たなスタートを切る。