国道6号線で起きた事故

富岡町から帰還困難区域に向かう途中の道で、サイレンを鳴らして急行する消防車に出会った。写真には撮れなかったが警察のパトカーも同じ方向に走っていった。

そこから少し北上して帰還困難区域の入口近く、国道に設置された線量計には「1時間当たり2.505マイクロシーベルト」と示されていた。

さらに走って大熊町に入る。「ここは帰還困難区域」という看板があちこちに立てられている。道路沿いの民家にバリケードが設置されていたのは別の記事で紹介した通り。

さらに走って行くと、第一原発のほど近くの坂道で交通規制が行われていた。消防車が2台とパトカーに挟まれるようにして、上り車線に事故車両が停まっている。事故を起こしたトラックからは積み荷が散乱しているようだ。消防車が駆けつけたくらいだから車両火災だったと思われる。

警察官の指示に従ってゆっくり現場を通り過ぎながら、現場を横目で見てみたが何が起きたのかはよく分からなかった。緊急車両に挟まれて停まっていたのはトラック1台だけ。車両そのものに大きな損傷はないように見えた。荷台から散乱していたのは黄色っぽい粉のようなもの。木屑のようにも見えた。消防車が大量に散水したようには見えず、火災があったとしても消化剤で処理できる程度のものだったのかもしれない。

それでも現場は一般の立ち入りが禁止されている帰還困難区域。国道の通行は可能とはいえ、バイクや軽車両のように覆いのない自動車は走れない。つまり、生身の人間には危険を伴う高い線量の地域ということだ。

この車両火災(?)は大事には至らなかったようだが、車両が通行する以上、車両事故の可能性はある。さらに、国道以外の住宅地などで火災が発生する危険はある。

ちょうど1年ほど前、岩手県のある町で火の気がないのに出火し住宅が全焼する火事があった。消防の調べでは、建物の側に積まれていた何かが自然発火したのが原因だとされた。人がいなくても火災は発生する。もちろん落雷が原因の火事もある。

帰還困難区域で目撃した消防車の出動。それは、人が住まない場所でも火災が起きるという危険な現実を教えてくれるものだった。近くに人がいれば初期消火もできるだろう。しかし、消防の到着まで時間がかかる場所で起きた火災は、手が付けられないほど拡大してしまう恐れもある。もちろん、人がいない帰還困難区域で発生しうる危険は火災ばかりではない。

目撃した事故が大事に至らなくて良かったと思うとともに、帰還困難区域というものの難儀さをあらためて考えさせられる出来事だった。

※この事故は2017年3月19日夕方に目撃したもの。